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新規事業における「プロジェクトの死」を迎えないための○と△と□って何?【ササシマSWINGレポート/#3】

「あきらめたら そこで試合終了ですよ・・・?」という真理を安西先生に言わせた、井上雄彦先生は、やっぱり神だと思いました。

えー、今回のレポートは、そんな感じです。

「SWINGセミナー」に参加して、自分なりに得たことをレポートしていく「ササシマSWINGレポート」。
どうも、潜入レポーターの古代ひしおです。

「SWINGセミナー」とは?
「空振りバンザイ!でバットを振ろう」を合言葉に、新規事業開発に奮闘する中京テレビビジネス開発グループの取り組みの一つ。社外の面白そうな人を、ささしまライブの中京テレビ本社にお招きして、プロジェクトメンバーとディスカッションしたり、悩み交換したり、意気投合したりする場。
SWING PROJECT(中京テレビ ビジネス開発グループ)

今回のスピーカーは、ビジネス向け・コンシューマー向けのアプリ開発やプロダクト開発などを手掛けるDRAGON AGENCYの飯田真資さん

DRAGON AGENCY
https://www.dragonagency.co.jp/

DRAGON AGENCY 代表取締役 飯田真資さん

飯田さんは、1996年にITエンジニアとしてのキャリアをスタートさせ、2005年にソフトウェア開発の会社で起業された、技術者として新規事業への挑戦を続けている方。

2010年には、今、代表を務めているDRAGON AGENCYを立ち上げられ、現在13年目ということなのですが、この飯田さん、何度も絶望のどん底を味わいながらも、そこから何度も這い上がってきたという、不死鳥のような、凄まじいキャリアの持ち主です。

飯田さんの人生グラフ

人生グラフを拝見すると、成功と失敗の起伏の波が激しすぎる人生を送って来られたことがよく分かります。
平穏理想主義のわたくし古代ひしおからすると、飯田さんの人生は、もはやマンガみたい。

そんな酸いも甘いも嫌というほど味わった飯田さんだからこそ、語ることのできる、新規事業の成功と失敗の明暗を分ける秘訣を教えてもらいました

新規事業の○△□


飯田さんは、自社の開発以外にも、外部プロジェクトにも技術責任者として参画されていたりします。

「外部プロジェクトには、技術的に実現を目指す立場で関わっているので、そのプロジェクトを裏側から見ているんです。なので、そういうプロジェクトを見ていると、成功率が高くなるのは、○△□の条件が揃っていることが、すごく大事だと分かってきました」

○△□???
なんだそれは?

○=丸くしたい世界

「まず、○というのは、丸くしたい世界、つまり誰を幸せにしたいの?という『who』です。取り組んでいる新規事業が『誰を幸せにするか?』という解像度が高いと、成功確率は、ものすごく高くなります」(飯田)

飯田さんによれば、「誰を幸せにするか?」を突き詰めた時に、「自分が幸せになる」でもいいらしい。この事業で、自分がめっちゃ儲かる、とかでも全然OK!

△=どのフィールドに「参画」するか

「次に△なんですが、これはどのフィールドに『参画』するか?ということです。ITが関わるプロジェクトの場合、戦うフィールドは、『ビジネスモデル』『プラットフォーム』『コンテンツ』のどれかに、だいたい集約されます

例えば、YouTubeの場合は、みんながビデオを上げて、みんなが見ることができる、という仕組みを作ったと。
これは『プラットフォーム』。ここに、人が集まれば、胴締めとして運営することができるということ。

で、仮に、YouTubeと戦うとなった時に、何で戦うか?というのが、先ほどの「ビジネスモデル」「プラットフォーム」「コンテンツ」のどれか、だと飯田さんは言います。

YouTubeはプラットフォームですが、ビジネスモデルとしては広告収入です。また、コンテンツとしては、YouTubeのチャンネルの内容。その何と戦うのか?を明確にすることは、強いプロジェクトになると、飯田さんは経験値から実感しているそうです。

「実現の可能性を検証する、PoC(=Proof of Concept※)のプロセスにおいて、どこで戦っているのか、よく分からなくなってしまうというのは結構あります。誰と戦っているんだろう?どこで勝負しているんだろう?それがボヤケてしまうと、そのプロジェクトは沈没します
※試作開発の前段階における検証やデモンストレーション

この「△=参画」の解像度は、強ければ強いプロジェクトほどハッキリしているし、強くなればハッキリしてくるそうです。


□=「資格」を持っているか

「最後に□ですが、これは「資格」だと考えています。言い換えると、そのプロジェクトを最後までやり抜く「覚悟」と「計画」を持っているかということです

新規事業というのは、だいたい次のようなプロセスが一つの流れです。

①問題や課題がある
②解決策を考える
③解決策を製品に落とし込む
④市場にフィットする(PMF=プロダクトマーケットフィット)

「これって、言葉で言うのは簡単なんですが、すごく難しいんです。最初に何かイケてるアイデアで課題解決の方法を思いついて、『おっ!それいいんじゃん!』と盛り上がって、製品に落とし込んでみると、『あれ?なんか思ってたのと違う』とか『クレームがいっぱい来る』とか『全然うまく行かない』ということは、よくあります

うーん、めちゃくちゃありそう。

飯田さんによれば、そういう時に大事なことは、もう一度、課題に立ち返って、「やっぱこの方がいいかな?」とか「こういうことかもしれない」と、PDCAを回すことだそう。

それを何度も何度も回す覚悟が、あるか?ないか?
そこが成功の明暗を分ける、分かれ道ということです。

「僕が関わってきたプロジェクトにも、①課題と②解決が良いにもかかわらず、沈没してしまうものがあります。その一番の理由は、PDCAをグルグル回してマーケットフィットする覚悟がないままプロジェクトを立ち上げて、まわりから『お金がないからやめろ』『人がいないからやめろ』と言われて、モチベーションもなくなって、プロジェクトの検証を辞めてしまうこと。
それが、プロジェクトの死であり、新規事業の死となるわけです

多くの新規事業に関わる人が、このPDCAのサイクルを回し続ける覚悟を持たないまま、携わるので、プロジェクトを諦めるタイミングが、ものすごく早くなってしまうのは、よくあること。

プロジェクトリーダー「とにかくPDCAを回していくんです!」
上司「えー、だってお前、最初と言ってること違うじゃんー」

てな感じ。

飯田さんにすれば、もうちょっとPDCA回すことができたら、マーケットフィットできたのになあ、と残念に思うことが、結構あるそうです。

「なんでそんなことが言えるかというと、そのプロジェクトを買った会社が成功していったりするからです。『そのプロジェクト、そこで辞めちゃうなら、ウチが買うよ』『それまで検証したこと、ちょうだい』という賢い人がいて、売った側は絶望したりするわけです。その人たちは、特別な先を見越す能力があったのではなくて、買ってすぐ成長するわけではないので、マーケットフィットできる確信を持って、フィットするまでやった、というだけの話なんです

この○△□というのは、ほとんどのプロジェクトには揃っていないことの方が多いと飯田さんは言います。けど、揃えようとしている。または、揃えるまでやるぞ!というチームは、成功確率が高いそう。
新しいアイデアって、100個生まれて、1個成功するかどうか、というのは、よく言われることですが、その成功確率が上がるんだとか。


まとめ

今回、飯田さんの○△□の話を聞いて、ものすごく納得感があったんですが、プロジェクトにおいて、もう一つ大切なのは、この○△□の理解を、プロジェクトに関わる人全員が腹落ちして、同じ意識で前に進めることだよなーと思いました。

チームや組織の中には、ほとんど全員が同じ志・同じビジョンで仕事に取り組めるケースでも、一人の声の大きな人や、意思決定権力を持った人の反対で、泣く泣く違う方向に進まないといけない、というのもよくあること。

とても分かりやすい飯田さんの○△□。
ぜひ後ろ向きな上司や、最後までケツを拭いてくれない上司をお持ちのプロジェクトメンバーの皆さんは、飯田さんの○△□を出力して、上司のパソコンに、こっそり貼っておいてください。


この記事を書いた人
古代ひしお|SWING PROJECT 潜入レポーター

ペンネームの「古代ひしお」というのは、奈良県で古来より伝わる「醤(ひしお)」という穀類の発酵食品。 醤油というよりは、味噌で、これが何とも美味いんです。繊細で上品、フルーティでちょっと洋梨のような風味のする「古代ひしお」は、日本酒のあてとしては最高です。