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開発者体験ブランド力が高い企業に迫る! -サイボウズ「コネクト支援チーム」が考えるユーザー価値の最大化-

皆様こんにちは。日本CTO協会 コンテンツチームです。

開発者体験ブランド力が高い企業に迫る!」シリーズの2本目は「サイボウズ株式会社」のインタビュー記事です。

開発者体験ブランド力が高い企業に迫る!」シリーズとは:
日本CTO協会が2022年より実施・発表を行なっている「開発者体験ブランド力調査」のランキング入賞企業に日本CTO協会がインタビューを行い、記事化したものです。

2022年の結果はこちら
2023年の結果はこちら

本コンテンツでは各企業の
・技術広報チームの目的とそれに対してのKPIの考え方、読んだ方に向けてヒント
・開発者体験向上に向けた技術広報の取り組み
・開発者体験とは
について記載されています。


開発者体験ブランド力調査とは

【開発者体験ブランド力調査のコンセプト】

「開発者体験発信採用広報活動の指標・羅針盤をつくる。」

・認知度コンテストにならないこと
実際のソフトウェア開発者が所属するエンジニアの技術的な発信などを通じて、開発者体験がよいイメージをもったことを起点とする。

・日本CTO協会の会員企業への恣意的調査にならないこと
採用サービス複数社からメールマガジンなどで回答者を募り、当協会から直接関係者に回答を募らないこと。

・技術広報活動の指針となる詳細を持つこと
職種や年収層、チャネルの効果や具体的な印象などを調査に盛り込むことで、ランキングだけではわからない影響を知れるようにすること。

サイボウズ株式会社について

1997年に創業し、「チームワークあふれる社会を創る」という理念のもと「サイボウズ Office」「Garoon」「kintone」「メールワイズ」などのグループウェア事業を展開。2007年に上海、2009年にベトナムに拠点を、2014年からはアメリカにも進出。2016年にオーストラリアでの販売を開始し、2017年には台湾拠点も開設。現在7つの拠点で開発と販売を実施しています。また2017年よりメソッド事業「チームワーク総研」を開始し、サイボウズがこれまで取り組んできた制度・風土改革のノウハウを研修などを通じて企業・組織に提供しています。
https://cybozu.co.jp/

今回は組織支援部 People Experienceチームに所属する酒井康晴さんに、サイボウズの開発者体験や技術広報についてお伺いしました。

サイボウズ株式会社 開発本部 組織支援部 People Experienceチーム 副部長 酒井康晴氏

2010年4月に新卒でサイボウズに入社。WebアプリケーションエンジニアとしてGaroonやkintoneの開発に従事。サポート系の仕事に魅力を感じ、現在もGaroon開発チームのエスカレーションエンジニアを兼務している。2017年頃から組織を支援する仕事を始め、現在も技術広報やオンボーディングなどを担当している。

「コネクト支援というネーミングが好き」、社内エンジニアの後押しをするのが技術広報チーム

ー所属されているチームについて教えてください。

酒井氏:
部署としては、開発本部の中にある「組織支援部  People Experienceチーム」です。その中のサブチームに「コネクト支援チーム」というのがありまして、ここが技術広報を担っています。私も含めて4名です。
「将来一緒に働ける可能性のあるエンジニアたちと繋がっていきたい」という理想を掲げて動いています。

ーどういった背景でつくられたチームなのでしょうか?

酒井氏:
「コネクト支援」という名称ができたのは2016年で、そのときは「コネクト支援部」でした。「うちの会社にはスゴいエンジニアさんがいっぱいるのだから、もっと外に出ていけば、それだけで技術広報ができるのでは?」と考えたのが始まりです。
私たち技術広報が情報発信をするのではなく、サイボウズのエンジニアが社外のエンジニアと繋がったり情報発信するのを支援するんだ、という強い想いで「コネクト支援」という組織名になりました。
その後も組織名を変えるタイミングはあったのですが、「やっぱりこの名前が好きだな」となり、ずっと使っています。
部門設立当時は採用担当のメンバーもチームにいたのですが、現在は技術広報のためのメンバーのみが所属しています。

ーコネクト支援の名の通り、中にいるエンジニアさんたちが外と繋がるのをサポートしたり、後押ししているわけですね。4名の方たちの役割分担などもあるのでしょうか?

酒井氏:
イベント協賛などをするときに事務局的な動きをしてくれる方もいれば、編集者のスキルを持った方がいたり、エンジニア出身でコミュニティ活動経験が長い方など、いろいろなバックグラウンドの人が集まっているチームです。
私はGaroon開発チームと兼任しており、エンジニアとしての感覚を大事にしながら、チームを取りまとめています。

困っている人を助けるという文化を体現するかのように、支援・サポートをするチームが組織として組み込まれている

ー開発者体験について、御社内で大事にされていることや、理想の状態などはありますか?

酒井氏:
サイボウズには支援系のチームが多くあります。コネクト支援は、情報発信の支援をするチームですが、他にもCI/CDや開発基盤のサポートをしてくれる生産性向上チーム、フロントエンド開発の専門家が集まるフロントエンドエキスパート、アジャイルコーチチームとか。相談先があるというのは、開発者体験としてもいいですよね。
何か困った時に、本当に強い人たちが助けてくれる状態が、組織としてできているのは特徴だと思います。
会社として「公明正大」「質問責任/説明責任」は大事にしていることもあって、「XXに困っています」というのを出しやすい&見えやすいのかもしれません。困っている人を助けるというのが、文化として根付いていると感じています。

ーエンジニア組織のミッションを教えてください。

酒井氏:「製品が提供するユーザー価値を最大化することでチームワークあふれる社会を実現する」というのが、開発本部のミッションです。

参照:https://speakerdeck.com/cybozuinsideout/cybozu-engineer-recruit?slide=15

ーミッションを実現するために、コネクト支援チームとして行っている具体的なことはありますか?

酒井氏:
実は、コネクト支援チームという観点でいくと、ミッションもふわっとしていて、成果も見づらいので、改めてどうやっていくかを考えている最中です。
サイボウズでは2019年1月〜2022年4月まで開発部のマネージャーがいなかったという歴史があります。これ自体はチームの主体性があがったとか、ボトルネックがなくなったという良い側面もあったのですが、チームのミッションとか思想を噛み砕いてチームに伝えるという機能がなくなってしまったことで、ひとりひとりが自分で考えないといけなくなりました。
結果として、「ユーザー価値最大化って何をすればいいのだろうか?」「これで本当にあっているのだろうか?」とモヤモヤ悩むシーンも増えてしまったのです。
人材管理系のマネージャーが復活したのは上記の通り2022年5月です。

そして、2024年1月に再び組織変更があり、マネージャーが人材管理だけではなく、事業ラインも責任をもつようになりました。
上位のミッションからチームのミッションを考えて、チームに浸透させていくというところは、この組織変更で達成できると良いなと思っています。

ー組織がフラットになったがゆえに生まれた課題もあったのですね。

酒井氏:
もちろんフラットにしていい面もあったのですが、課題もでてきたので、それにあわせて組織を作り変えたのが今ですね。
私も新しくリーダーをやるようになったうちの一人なのですが、他チームのマネージャーやリーダーたちと情報交換しながら、チーム作りを進めています。こういうマネージャー同士のMTGがあると「チームをこうしたい」「技術広報はこうありたい」という言語化にもつながりますし、これを伝えていくことでチームとしても動けそうな手応えもあります。

体験の良さがエンゲージメント向上になり、情報発信へつながる、好循環のループをつくることを意識した技術広報

ーあらためて、技術広報としてのミッションや想いを教えてください。

酒井氏:
エンゲージメントを起点にした循環を起こして、組織力向上につなげていきたいと考えています。
技術広報で目指していた「なんとなくサイボウズを好きになってもらおう」というのが、ユーザー価値最大化につながっているのか?というのは、何年かモヤモヤしていたのですが...。

情報発信という手段によって組織力が向上できる
 ↓
組織力が向上するとプロダクトがより良くなって、ユーザー価値最大化につながる

というロジックがようやくできたので、やはりそこを意識しながら活動したいですね。キーワードとしては、エンゲージメントやアライメントになると考えています。
今年1年くらい活動してから目標を決めていきたいと思っていますが、今までやってこなかったエンゲージメントサーベイなども検討して、社内向けの活動もしっかりとみていきたいです。
外向けの発信については、今までと同様に、活動量をみていきます。ただ、これは目標数値ではなく、あくまでも振り返りをするときの材料として使うイメージです。
技術広報は、本当に現場の人の熱量次第なので、私たちが頑張ったから増えるわけではありません。それよりは「体験よく情報発信をしていく」ところを整えたいですね。イベントにしても、内容を考える以外の雑務が結構あるので、エンジニアさんには内容を考えることだけに集中してもらえるように、支援チームとして協力していきたいです。

参照:https://www.docswell.com/s/sakay_y/538VXP-phpcon-kansai-2024#p55

ーエンゲージメントや組織力向上の意味合いが強くなるのですね。そう考えるようになった「きっかけ」はあったのでしょうか?

酒井氏:
私はGaroon開発チームにも所属をしているのですが、少し前は、プロダクトの歴史が長いので技術負債があるとか、人がどんどん抜けてしまったりとか、課題が山積みな状態でした。そこで2019年に、ビジネス側のチームも巻き込んで「Garoonをどうしていきたいのか?そもそも続けていきたいのか?」といったことを腹を割って話しをしたのです。
結局、その会では「Garoonは続けないといけないけど、このままではダメだ」となったのですが、全員が共通認識をもって、「続ける」ことにアラインメントができたんですね。
そのおかげで改善が進み、改善が進むと自分たちのチームやプロダクトを好きになれて、情報発信にもつながり、その発信からフィードバックがもらえて、さらに好きになるという好循環が生まれました。
この一連の変化を、自分が所属するチームで体験できたのは大きいです。

ー自分たちの会社やプロダクトが好きという気持ちを大切にしているのが伝わってきます。

酒井氏:
People Experienceチームは、従業員ライフサイクル(認知から採用・入社・スキル開発・リワード・退社)の中で発生する体験をより良くする活動を行なっていますが、「体験の良さ」はエンゲージメントにつながると実感しています。
体験の良さから、エンゲージメントにつながって、そこから次の情報発信につなげるというループをつくっていきたいと考えています。

ー会社として技術広報を大事にしているのはなぜでしょう?

酒井氏:
最初に技術広報をやり始めたのは、採用のためでした。 コネクト支援チームができた2016年、実は中途採用がうまくいっていない状態でした。そこで、「何をすればいいのか?」となったときに、まずは技術スタックや文化、人を知ってもらおうという話になり、カンファレンス登壇やブログなどをやりはじめました。何もわからない会社に入りたいと思わないですから。 

技術広報と開発採用がチームとして分かれてからは、いつか一緒に働くかもしれない人たちに「サイボウズを好きになってもらう」ことを目指して動いています。チームに採用の役割がなくなったとしても、この活動は将来の採用活動に効いていると実感します。

また、エンジニア業界を盛り上げるためにコミュニティ活動をすることは、大変意義のあることだと考えています。こういった活動は社会的にも意味がありますし、エンジニア業界が成長すれば回り回って私たちに恩恵として返ってくると思います。

これらが会社として技術広報を大事にしている理由ですかね。

ー採用で技術広報が効いたと感じるエピソードはありましたか?

酒井氏:
ブログやイベントでの認知をきっかけに入社される方はいます。そういった話を聞くと嬉しいですね。
現場のエンジニアからカンファレンスの協賛や登壇などの支援を依頼されることからも、貢献できているのだろうと思っています。 

たとえば、私の所属しているGaroonチームとPHPコミュニティでの話です。以前はやはり情報発信が少なく、知名度は低かったです。PHP系のカンファレンスに協賛したての頃は「サイボウズさんってPHPを使ってたんですね」とかそういうことを言われました。 少しずつ認知してもらって、今では「イベントで登壇を見て」とか「ブログを読んで」というきっかけで応募してくださる方がいらっしゃるようになりました。このまま「PHPといえばサイボウズはすごい強いよね」というところまでいきたいですね。

カンファレンスでの協賛は認知という意味ではもちろん効果が大きいのですが、コミュニティへの還元としても有効だと思います。また、協賛だけではなく、プロポーザルを多く出して、コミュニティの一員として業界を盛り上げていけるとよいですね。

ー最後に、開発チームと兼務しながら技術広報をやっている立場として、こだわりなどはありますか?

酒井氏:
技術広報は現場の熱量次第という部分が大きいと思うのですが、私はGaroon開発チームの日々の様子もわかるし熱量をだしやすいんですよね。「カンファレンスあるから出ましょう」「そのネタ、もっと聞きたいからブログ書きましょう」とかも言えるので、兼務しているからこそのシナジーがありますよね。
私は、オンボーディングや開発研修の担当も担っているのですが、技術広報ベースで兼務によるシナジーをもっと出していきたいと常々考えています。
エンジニアとして感覚を無くしたくないという気持ちもあるので、これからも兼務しながら技術広報もするというスタンスを続けていきたいです。

ーーありがとうございました。