忌まわしき怪人

愛と人生を私と分かち合うと言ってくれ。私を導き、孤独から救ってほしい。 そして、君のそ…

忌まわしき怪人

愛と人生を私と分かち合うと言ってくれ。私を導き、孤独から救ってほしい。 そして、君のそばに私が必要だと言ってくれ。 君の行くところどこへでも、私を連れて行ってくれ。 それが私の望むものだ

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  • 【超短編小説】

    ここは天国ですか?①【完結】

  • 【短編小説】

    ぼくのうしろにはきみが立っている①〜⑤【完結】 ぼくのうしろにはきみが立っている【あとがき】

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    ミュージックの歌詞をもとに勝手に妄想するシリーズ

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【短編小説】ここは天国ですか?

「ここは… 天国ですか…? 地獄ですか…?」 死者は皆、ここに来るとそう口を開く。 わたしは死者が集まる、言うなれば、死の手続きを行う番人である。人間社会の様に名などない。毎日多くの死者が集まるこの世界には、わたしの様な門番が何人もいる。もちろん、わたし1人で対応できるものでもない。わたしは毎日訪れる死者を死へと導く者の1人なのである。 毎日毎日やってくる死者に説明する事は1つ。 「ここに来たという事は、人間界では命を落としたという事実。人間は生まれた瞬間から生きられ

    • 【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている(あとがき)

      この作品がわたしの処女作となったわけですが、かなり多くのみなさまに読んでいただいたんだなぁ…と、驚いております。 この作品は「始まり」と「終わり」だけは書く時点でできあがっていて、伝えたかった事は「後悔先に立たず」ということわざから「後悔は決して自分の前には立たず、うしろ(過去)に引きずられていく」というのがコンセプトでした。 この作品を書いている時は、新型コロナウイルスが猛威を奮っており、いつの間にか大切な人が亡くなっていく、いつの間にか平穏だった昨日が消えていく、いつ

      • 【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている⑤

        一緒にいたこの2日間の中で見た事がないほどの真剣さを見せるかな。それが何か、重い雰囲気を作っているというか、時間を長く感じさせる。ぼくは煙草を吸いながら平静を装う。 『あのねっ』 ついにかなが口を開く。 『絶対に驚かないで聞いてほしいの。絶対に』 少し意外な言葉だった。驚くも何も、幽霊としてここにかなが戻ってきた事自体がすでに摩訶不思議だったのだから、驚く事なんてそうそうないと思っていたからだ。コーヒーに手を伸ばしてから煙草を消す。ひと呼吸置いた。 「わかった。驚か

        • 【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている④

          「おはようございます」 ぼくは1週間休んでいた会社の事務所ドアを開けながら、少し控えめにあいさつをした。インフルエンザで休みを取っていた事になってはいるが、濃厚すぎる1週間のために嘘をついていたわけだから、多少の罪悪感があったからだ。正直、この会社に勤め始めてこんなに連休を取る事は、年末年始休みの時くらいなものだ。 「お、大丈夫か?」 昨日電話をくれた直属の上司が、少し離れた席から声をかけてくれる。ぼくは上司の元へ向かい、一礼をした後で迷惑をかけた事を詫びた。顔を上げた

        【短編小説】ここは天国ですか?

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        • 【超短編小説】
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        記事

          【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている③

          夕食を終えて、自室へ戻ってきた。新たな問題について話し合おうとする。 「明日から仕事なんだけど… ついてくるって事だよな…?」 すでにぼくは天を仰いでいた。人間はこんなにもたくさん上を向いているものだろうか。ため息をつく事もこんなに多いのはぼくだけじゃないだろうか。 『今日のお風呂の事を考えると、そうなりますね』 かなは腕を組み、顔を傾けて答える。腹の立つほどの清々しい笑顔だ。だけど、よく考えてみたら誰かに見られるわけじゃない。迷惑をかけるわけでもない。今のところ、何

          【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている③

          【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている②

          恐ろしいほど静かに自宅の玄関を開け、帰宅した。うしろを振り返って彼女に話しかける。 「まぁ… 入ってよ…」 なんて声をかけてみたものの彼女はもう玄関を超えて、ぼくの目の前の廊下に立っていた。 『おっじゃましまっーす』 なんて笑顔だ。ぼくは本当にインフルエンザになったのかと思ったくらい具合が悪かった。リビングへの扉を開けると、母親は帰ったぼくを心配そうに見つめていた。 「た、ただ、ただいま…」 上手くしゃべれない。ぼくの顔は何色なのだろう。どんな表情をしているのか

          【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている②

          【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている①

          長い冬が終わり、春の訪れを知らせるかのような暖かい朝日がまぶしく部屋を照らす。ぼくは1週間もの間、部屋はおろか布団にこもっている。仕事先には「インフルエンザによる自宅療養」ということになっている。それを証明しなくてもいい職場環境に感謝している。 「あんた、そろそろ、会社にもかなちゃんにも会いに行った方がいいんじゃないの?」 母親だ。ふぅ…っとため息をついて勢いよく布団をどける。 「…ドア開けるなら一声かけろよ…」 かけましたけど、みたいな顔で母親は1階のリビングに戻っ

          【短編小説】ぼくのうしろにはきみが立っている①

          【エンディングテーマ】/amazarashiを妄想してみた

          …あと、数時間… いや、あと数分かもしれない。 「自分の命の終わりくらい、自分でわかる」とは言うものの、本当にそう感じることがあるとは思いもしなかった。 もう手足はおろか、指も、首も動かない。目だけは辛うじて少し動くくらいか。わたしにつながれている機械たちの音も聞こえるか聞こえないかくらいだ。周りには数名の人間がいるようだが、誰かは判別できない。 だが、頭はスッキリしている。何と表現したら良いのだろう。 これは、わたしの人生。いわば、わたしが主演の物語。いよいよ最期

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          【別の人の彼女になったよ】/wacci を妄想してみた

          わたしの名前は夏美(なつみ)。 社会人になって6年目の27歳。仕事も順調で彼もいるし、周りから見れば何の不満もなさそうに見えるかもしれない。 でも、わたしは今、携帯を眺めながら泣いている。 − − − − − − − − − − − − − − − − − − − − −− − − − − − 去年の年明け、その当時付き合ってた彼氏と別れた。 わたしから別れを切り出したわけだけど、ケンカ別れでもなければキライになったわけでもない。 マンネリというか、毎日が何も変

          【別の人の彼女になったよ】/wacci を妄想してみた

          【note 始動】

          わたしは現代に疎い。 過去にブログを書いたこともSNSにて何かを発信したこともない。 「やったことはある」程度である。 いわば、現代のスピードに追いついていけていない、『過去の産物』なのである。 そして、それらを学ぼうと思ったこともない。 故に成長を止めた、『過去の残骸』なのである。 人は成長を止めたその時点で、商品価値が止まる。 すでに人生の半分近くを生きてきたが、「残りの人生、こうありたい」という思いと、「失いはしたが、一通りのできることはやった。もう何も望