マルタの政治システム

 マルタは共和制に1974年に移行しました。それまでは、エリザベス女王が元首でした。議院内閣制で、議会が内閣を任命します。大統領は議会による決議で選出され、5年任期です。通常は与党から人物が選出されますが、国民党(PN)のゴンズィ政権時代に、労働党(PL)のジョージ・アベーラを選出しています。ちなみに、現在の首相ロバート・アベーラの父が、このジョージ・アベーラです。

 二大政党制で、国民党(PN)と労働党(PL)が政党活動を行っています。PLが現在の与党で、文字通り、労働組合が支持母体となって成立した政党です。1920年に設立され、どちらかというと中道左派で社会民主主義が基本路線です。毎年5月1日には大規模集会を開いています。熱狂的な支持者が多いのが特徴で、スリー・シティーズやゼイトゥーンなどのマルタ南部では絶大な人気を誇ります。1949年から1984年にはドム・ミントフという強烈な政治家に率いられ、その際の遺産あるいは後遺症は現代にもくっきりと残っています。ドム・ミントフを熱狂的に支持する、あるいは神の次に信仰する人々もいます。一方、PNは現在の野党ですが、長い間、与党でした。昨日ちょうど新たな党首にベルナルド・グレックが選出されました。PLのドム・ミントフと長く張り合っていたのは、PNのジョージ・ボージ・オリヴィエです。彼はマルタ独立時に首相でした。スリーマ、サンジュリアン、マルタ中部(リヤ、バルツァーン、アタード)がおもな支持基盤のある地域です。PNはキリスト教保守で、教会との関係も密接です。

 現在の議会では、与党PLが36議席、野党PNが28議席、独立系が2議席です。前回の議会選挙では、スキャンダルがあったにもかかわらず、PLが勝利を果たしました。地方議会選挙では地滑り的にPLが勝利し、ヴァレッタが初めてPL優位、接戦地区のシッジーウィもPLが優位となりました。これは当時の首相ジョゼフ・ムスカットの人気ぶりと好調な経済、弱体化した野党PNが原因として挙げられるでしょう。欧州議会選挙でも、6議席中4議席をPLが奪取しました(それまでは両政党、3議席ずつ)。

 議会選挙では、単記移譲式投票と呼ばれる投票方法がとられます。その地区の候補者の中で順位をつける方法です。有権者の数に基づいて割り当て数が決まっていて、その最低得票数を超えると当選です。これを数ラウンド繰り返していきます。なお、5年任期です。マルタでは、13の選挙区に分けられます。ぞれぞれに割り当て議席数が決まっています。スリー・シティーズが含まれる第2区は、2017年の議会選挙ではPLが約70%の得票率でした。地方選挙では、ゼイトゥーンに至ってはPLが80%の得票率でした。いわゆる接戦地区をPLが手中にしました。次回の国会議員選挙は2022年ですが、それまでに情勢がどう転ぶかは不透明です。新たに党首を選出したPNが、どう支持を回復していくかが鍵です。PLは汚職でのダメージをどうするかが問題でしょう。なお、マルタの2017年の国会議員選挙投票率は92%で、前回よりもやや低くなりました。

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