3月15日 セッション始まる キーノート NASA IBM アイボ

8時からキーノートだ。Mike Pacielloの話が聞けないのは残念だが、Harry Murphyが38年前にCSUNを始めた時代の失敗談を繰り出して笑いをとっていた。AAC(Augmentative & Alternative Communication:補助代替コミュニケーション)という言葉すら知らなかったこと。AACのブースのそばに音楽のバンドを入れて怒られたこと。AACの出す音が声の代わりなのだものね。今だって、音声合成や音声認識の技術がたくさんあるのだから、そばのブースで音楽をかけたらやばいだろう。AT(支援技術)という概念自体が存在しなかったころからのCSUNなのだと実感する。

で、今回、悲しい発表もあった。17年もCSUNを引っ張ってきてくれたSandy Plotinが、大学内で昇進して障害者センターを離れるという。寂しい限りだ。でも、この世界も、代替わりというか、世代交代が起きても不思議ではないのだ。次の世代がATやUDのリーダーになるのだろう。

SandyがCODを離れるという
17年間、CSUNの顔だったSandy Plotinが昇進していなくなる。寂しい。

9時20分から聞きたいセッションが目白押しである。最初を少し聞いて、面白くなさそうと思ったらあっさり他の部屋へ移るというパターンはCSUNの定番だ。だがこの3年間で、私自身の老眼が進み、部屋の奥に座っていては、プロジェクターが全然見えない!やむなく、前の方の席に座り、パワポが見える位置を確保する。さすがにここでは途中退席はしにくいなあ。

まずNASAのセッションに行った。元気なお姉さんBetsy Sirkは、NASAのITマネジャーで、アクセシビリティの専門家だ。連邦政府のCIOカウンシルには、アクセシビリティのチームがあり、彼女はそのリーダーを長く務めているそうだ。公的機関は、アクセシブルなICT機器やソフト、アプリ以外は、購入してはならない。これは最初86年に制定され、何度も改正されてきた米国リハビリテーション法508条の基本原則である。これを守れないIT企業は、入札にすら参加できない。そのために、省庁側がIT企業を教育するのである!入札してくる企業に対し、リハ法508条の内容を伝え、UD調達を円滑に進める役割である。かつてはDOD(防衛省)やDOJ(法務省)が、このようなセッションを定期的に開催しており、その報告をCSUNで聞くことが多かったのだが、NASAの彼女たちも息の長い活動をしているのだ。

彼女の話の最初に、ガートナーグループの予測として、AIや技術の進展により、雇用される障害者の数は2023年には3倍になるということが語られていた。パワポの一部を貼り付ける。(支援技術が、AIによって強化されるとしたら、とても素晴らしいことである。日本の支援技術業界にこの意識はあるのだろうか?)

なぜ508条やアクセシビリティが政府や企業にとって重要か

大統領令も何度か出され、政府の公共調達をUDのみにするという方針は、欧米では当たり前、前提となっている。EUには508条と同様のEAA(European Accessibility Act)があり、各国はそれに合わせて国内法の制定が求められる。今回のNASAの発表でも、この連邦政府のチームは、何がUDかを企業に指導し、調達基準書の書き方まで教えてくれていた。企業は当然ながら買ってもらえるよう、全ての製品をUDでしか作らなくなり、それは高齢社会のITインフラ自体をUDにすることに大きく貢献するのである。実に賢い方法だと思うのだが、日本にはこの法律は影も形もない。霞が関には障害者がいないから508条は要らないと言い放った某省庁の高官を思い出す。いつか自分が困るのにね。

ランチは予約しておいたサンドイッチを部屋に持って帰って珈琲を淹れて食べる。今日はローストビーフサンド。パスタサラダ、りんご、ポテトチップがつく。あ、サンドイッチの下にチョコチップクッキーが入っていた。なんだか糖質・脂質が多く、カロリーの高いランチだなあ。でも、このあたりのランチ処はみんな混んでいるし、特に初日はどこも激混みなので、価格もカロリーも高くても、ランチ予約は安全なのだ。カンファレンスホテルに宿を取るのは、こういう時に楽である。

初日に予約しておいたサンドイッチ
ローストビーフサンド パスタサラダ、りんご、ポテトチップ

サンドイッチの下にチョコチップクッキーが隠れていた!甘い!

甘い、甘すぎる。。。。で、カロリー高っ!

午後参加したのは、IBMやPEATのグループが研究している「公平なAI」だ。英語を聞きなれていないうえ、AIに詳しくない私には少し難しいセッションだった。例えば採用においてスクリーニングを行う際に躁鬱症の傾向のある学生を排除したり、空港内のカメラが障害のある人の動きを不審者として検知することが、AIによって行われるとしたら、それは公平なAIではないのだ。これから開発されていくであろう多くのAIが、きちんと多様な人々のニーズや状態を深層学習したうえで運用されるべきという話であった。オーストラリアでは、障害のある人の採用を支援するAIアバターが開発され運用開始しているという。これまでは一般のシステムやWebアプリをUDにすることが求められていたが、今後は進展が進むAIも、UDであることが前提になるのだ。日本では全くまだ考慮すらされていない分野である。勉強しなくては。

午後に、デモ会場がオープンしたので早速行ってみる。お、ソニーが大きなブースを出しているぞ。テレビもネックスピーカーもバージョンアップしている。最新のアイボが可愛い!ここで朝のセッションのBetsyに会う。彼女もアイボにめろめろだ。今朝のセッションに出ていたよ、と声をかけたら覚えていてくれた。アイボと一緒に写真を撮ってもらう。このNASA特製?の宇宙柄のマスクがいいなあ。次のセッションにも参加すると約束した。

Betsyと一緒にアイボの前で
SONYのアイボは大人気。NASAのBetsyと

テレビのUDも進化している。画面の色反転、拡大縮小、音声読上げも。ほとんどWeb画面と一緒である。

アクセシブルなTV画面
テレビ画面のUD スクリーンリーダーも


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