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2_4本当は怖い逆ハラスメント(リバースハラスメント)

 近年、職場における逆ハラスメント(リバースハラスメント)という問題が注目されています。この現象は、従来の権力関係に基づくハラスメント(上司から部下へのハラスメント)とは異なり、部下や同僚から上司、または伝統的に権力のない立場の者から権力を持つ者へのハラスメントを指します。この記事では、逆ハラスメントの定義、事例、および企業が取りうる対策について解説します。


1.逆ハラスメントとは

逆ハラスメントは、権力のダイナミクスが逆転した職場内のハラスメント行為を指します。これには、意図的な無視、不当な批判、職務上の妨害、人格の攻撃、嘘や誤情報の流布などが含まれます。逆ハラスメントは、職場の雰囲気を害し、チームワークを損ない、全体の生産性を低下させる可能性があります。


2.逆ハラスメントの事例

①能力を疑う嫌がらせ

部下が上司に対して、上司の業務能力や判断力を疑う発言を行うことです。

例えば、部下が上司の指示を「こんなことでいいのか?」と疑問視するような態度を示すことで、上司の信頼を損ねようとする行為があります。

②上司のプライベートな情報の拡散

部下が上司のプライベートな情報(家族や趣味など)を知っている際に、それを他の同僚に対して拡散する行為です。例えば、上司の家庭状況や健康状態を不適切な形で共有することで、上司を不快にさせる、信頼を落とさせる行為などが該当します。

③無視と軽視

部下が上司の指示や意見を無視したり、軽視したりする態度をとる行為です。例えば、上司が会議で話す際に部下が無視し、他の話題に切り替えることで、上司の権威を傷つけようとすることや、上司の指示に従わず部下が勝手に判断を下してしまうことなどがあります。

④上司への陰湿な中傷

部下が上司に対して陰湿な中傷を行う行為です。例えば、上司の業務や性格に対して悪口を広め、他の同僚の前で上司を非難することで、上司の評判を落とそうとするなどが該当します。

⑤上司の業績や評価を攻撃

部下が上司の業績や評価を攻撃する発言や行動を行う行為です。例えば、上司がプロジェクトで成功した場合にはその成功を部下が適切に評価せず、逆に失敗した部分を強調することで、上司の評価を下げようとすることなどが該当します。


3.逆ハラスメントはなぜ起きてしまうのか

 逆ハラスメントが起きてしまう理由は、組織文化や個人の性格、職場環境など多岐にわたります。以下に逆ハラスメントが発生しやすくなる主な理由をいくつか述べます。

➀権威への反発

一部の従業員は、権威や上位の立場の人物への自然な反発感を持っていることがあります。このような反発感は、上司の指示や決定に対して否定的な態度や行動を取る原因となり、結果として逆ハラスメントにつながる場合があります。

一方で反発感は、野心や成果への意欲の現れ等、一概に悪い状態とは言えません。ただ無意識で組織への反発が組み込まれている可能性がある場合は、一度その従業員に対してヒアリングを行うことが大切です。

➁コミュニケーションの不足

上司と部下の間で十分なコミュニケーションが取れていない場合、誤解や不信感が生じやすくなります。特に、上司の意図や決定の背景が十分に説明されない場合、不満やフラストレーションが蓄積し、逆ハラスメントの形で表れることがあります。

③職場の不公平感

従業員が職場での扱いに不公平感を感じる場合、その不満が逆ハラスメントの原因となることがあります。特に、昇進や評価の過程で透明性が欠けると感じた場合、上司への不満がハラスメント行為につながる可能性があります。

④組織文化の問題

開かれたコミュニケーションや多様性を重視しない組織文化では、逆ハラスメントが発生しやすくなります。上下関係が厳格で、意見を言いにくい環境では、従業員がフラストレーションを感じ、それが不適切な行動につながることがあります。

⑤ ストレスや個人的な問題

従業員が職場外でのストレスや個人的な問題を抱えている場合、その感情が職場での行動に影響を及ぼすことがあります。特に、対人関係のストレスが高い場合、それが逆ハラスメントの形で表れることがあります。


4.逆ハラスメントへの対策

➀教育と研修

従業員と管理職に対するハラスメントに関する教育を定期的に実施しましょう。また定期的な会議や社内掲示板などで、常に注意を促すことでハラスメントに対する意識を高めていくことが大切です。

➁明確なポリシーの策定

逆ハラスメントだけでなくハラスメントを禁止する明確な社内規定を策定し、違反した場合の処罰を定めましょう。この規定は、新入社員にも徹底して周知する必要があります。また社会情勢に応じてハラスメントに該当する行為も変化する為、定期的な見直しを行いましょう。

③相談窓口の設置

社内に信頼できる相談窓口を設け、被害者が安心して相談できる体制を整えます。この際、秘密保持と迅速な対応を最優先事項とします。逆ハラスメントの場合、上司は立場上相談がしにくい可能性があります。彼らが相談しやすいように社内の関係者とは独立した外部の相談窓口を設置することが有効な対策の一つです。

④中立的な審査

職場の環境を定期的にモニタリングし、ハラスメントが発生していないか確認しましょう。特に逆ハラスメントの場合、事実関係を把握することが難しく、場合によっては上司によるパワーハラスメントが発端となっていると間違った判断を下してしまう場合があります。中立的な立場から事実関係を調査する必要があるため、時に外部研修を通して事実関係を確認することも有効です。


結論

逆ハラスメントは、職場の健全な環境を脅かし、組織の信頼関係を損なう可能性があります。企業は、逆ハラスメントを含むあらゆる形態のハラスメントに対して徹底した防止の姿勢を示し、明確なポリシーと教育プログラムを通じて予防と対処の取り組みを強化する必要があります。また、従業員一人ひとりが互いに尊重し合う職場文化の醸成に努めることが、健全で生産的な職場環境を守る鍵となります。

そのため、社内教育・体制構築に加え、知識のアップデートのため定期的な外部研修、外部相談窓口等を取り入れながら、社員の意識向上に取組むことが大切ですね。

文責:善福大(ぜんぷく・ひろし) 中小企業診断士、奈良コンサルティング代表


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