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2_1パワーハラスメント(パワハラ)って何が該当するのか?

 職場でのパワーハラスメント(パワハラ)は、従業員の心理的、物理的な健康を害し、組織全体の生産性とモラルを低下させる深刻な問題です。

「威圧的な態度」「声を荒げる」「物をたたく、投げつける」「にらむ」「大声でみんなに聞こえるように」「立たせる」「密室」「職場外の場所」など付随するパワハラにあたる行為(シチュエーション)もパワハラに該当します。またパワハラにあたる言葉は侮辱する言葉、人格否定する言葉が大半で「侮辱罪」「名誉毀損罪」になる可能性があり「刑事告訴」の対象にもなります。

 パワハラは、企業としてだけでなく、一個人としても気をつけなければなりません。

そこで今回は、パワハラの定義、事例、そして効果的な対策について解説します。


1.パワーハラスメント(パワハラ)とは

職場のパワーハラスメントとは、職場で行われる下記の3つの要件を全て満たすものをいいます。


①優越的な関係を背景とした言動

②業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの

③労働者の就業環境が害されるもの


簡単に言えば、職場での権力関係を背景にした嫌がらせや過度な圧力を指します。これには、精神的な圧迫、過度な要求、人格の否定、社会的な孤立、私的な侵害などが含まれます。パワハラは、被害者が職場で安全かつ尊重される権利を侵害する行為であり、労働環境の質を著しく低下させます。


2.パワーハラスメント(パワハラ)の事例

➀身体的な攻撃(暴行・傷害)

殴る、蹴る等の暴行、ものを投げつけるなど、相手に身体的な攻撃を加えるものがパワハラに該当します。刑事罰に問われることが多い行為の代表格です。


事例

「指導を受けた際、黙っていると「文句があるのか」と胸ぐらをつかまれた。」

「会議中、成果を上げていないことを理由に足蹴りをされた。」

「ミスをした際、「何年、仕事をしているんだ」と頭を叩かれた。」など


ハラスメントの意識が高くなっている昨今でも、身体的な攻撃を行ってしまっている方もいます。たとえ指導であったとしても身体的な攻撃は許されません。少しでも該当する行為を見かけた場合は、厳しく指導する必要があります。改善が見られない場合は、警察に相談することも必要になります。

※誤ってぶつかってしまった。手が当たってしまった。ものを落とした弾みに相手にぶつかってしまった、等故意に行っていないものはパワハラに該当しません。ただし、別の相手にけがをさせてしまった場合など、別の問題が発生することもあり得ますので、注意は必要です。


➁精神的な攻撃

 パワハラは、身体的な攻撃だけでなく精神的な攻撃も含まれます。脅迫や名誉棄損、侮辱、暴言などが該当します。業務上、必要な指導において強い言葉を発することも必要ですが、一定限度を超えた暴言や業務上に関係のない事柄での否定は、パワハラに該当します。


事例

「他の社員がいる前で、「ダメ人間」「お前なんかやめてしまえ」と何度も大声で叱責された。」
「「馬鹿」「給料泥棒」など人格を否定するような言葉で執拗に叱責された。」
「他の社員の前で、「こんな成績で良く会社に来られるな」などと怒鳴られた。」など


 精神的な攻撃を行う人にヒアリングを行うと、「感情が高ぶり我慢ができず、暴言を吐いてしまった」といった感情のコントロールがうまくできず行ってしまうことが多い印象です。また、「これぐらいは言われても当然だろう」といった認識の甘さが、パワハラにつながっているように思います。

何気ない発言が相手を傷つけ、精神的に追い込むことは十分に考えられます。育ってきた環境や価値観など、人によって言葉の捉え方は異なる為、注意が必要です。

※遅刻など社会的ルールを欠いた言動が見られ、再三注意してもそれが改善されない従業員に対して一定程度強く注意をするなど、業務上必要な言動はパワハラに該当しません。ただし、業務上必要な事柄だからと言ってすべてが許されるわけではありませんので、注意が必要です。


③人間関係からの切り離し

 いわゆる「仲間外れ」もパワハラに含まれます。自身が苦手とする相手を隔離する、無視をする、など人間関係を過度に切り離す行為が該当します。「ちょっとした嫌がらせ」や「少し懲らしめてやりたかった」など、悪意を持って行われることが多いです。


事例

「毎回、自分だけ懇親会に呼ばれず仲間はずれにされた。」

「挨拶をしても、複数の社員からずっと無視をされる。」

「取引先の情報を自分だけ知らされないことがある。」


また、これらの行為は、知らないうちに加担していることもあります。特に挨拶を無視する行為は、「無視しているつもりではなく、仕事に集中していて気が付かなかった」など悪気が無く行ってしまっている場合もあります。


④過大な要求

能力や状況を考慮せずに、達成不可能な業務目標を設定することなど過大な要求もパワハラに含まれます。人の成長には、少し難易度の高い課題や問題に取り組むことが大切ですが、明らかに達成不可能な内容はパワハラに該当します。また、業務に関係のない雑用を強要することも過大な要求に含まれます。


事例

「業務とは関係のない私的な雑用を強制的に行わされた。」
「一人では無理だとわかっている仕事を強要された。」
「就業間際に過大な仕事を押し付けられた。」


 過大な要求は、悪意をもって行われる場合が多いですが、時に本当にできると判断し結果的に過大な要求となってしまう場合もあります。それは、上司としてマネジメント能力が不足している故に起こっている可能性があります。ハラスメント防止だけでなくマネジメント研修など、上席者としての能力アップも求められます。


⑤過小な要求

 過大な要求だけでなく、過小な要求もパワハラに含まれます。業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じる、仕事を与えないなどが該当します。


事例

「担当業務で些細なミスの後何の指導もなく「しなくてよい」と業務から外された。」

「退職させるため、誰でも遂行可能な業務をさせられた。」

「毎日のように草むしりや倉庫整理、コピーなど単純作業しか与えられない。


 過小な要求は、従業員のやる気を著しく低下させ、組織全体のモチベーション低下にもつながります。しかし、「上司として一度ミスをしてしまった部下に対して仕事を任せることが怖い」など、悪意ではなく、単純な責任に対する恐れから発生することもあります。

 過大な要求と同様に、管理者としてのマネジメント能力向上も有効な手段となり得ます。


⑥個の侵害

 職場内で起こるのがパワハラと考えられがちですが、プライベートに過度に干渉することもパワハラに含まれます。コミュニケーションの一環としてプライベートに触れることは、時に必要な場面もありますが、根掘り葉掘り聞くことはパワハラに該当します。


事例

「仕事とは関係ない私生活について「誰かとつきあっているのか」などしつこく聞かれた。」「時間外や休日に何をしているのか頻繁にきいてくる。」
「有給を取得する際、理由をしつこく聞かれた。」


「興味があった」「共通の話題を見つけたかった」「相手に好かれたかった」など、悪意が無い場合も多いですが、プライベートについては、人によっては隠したい内容、聞かれたく内容もあります。企業と言う半パブリックな環境では、相手に配慮し、なるべく聞かない様にすることが望ましいと思われます。


3.パワーハラスメント(パワハラ)の対策

 パワハラの対策は、それぞれの従業員が、被害に合う可能性、パワハラを行ってしまう可能性など、当事者意識を持つことが大切です。また、社会情勢によって、ハラスメントに該当する行為も変化していきますので定期的な知識のアップデートも求められます。

 以下にパワハラの対策についてのポイントを記載します。

➀ハラスメント防止に関する規定の策定

 パワハラだけでなくハラスメントを禁じる明確な社内規定を策定し、違反した場合の処罰を定めます。規定は、従業員に周知・徹底させるため、会議やメール、掲示板など、定期的に従業員が目に触れるようにする事が大切です。


➁パワハラに対する定期的な研修:

従業員と管理職に対するパワハラの定義と事例に関する教育を実施しましょう。社内での啓発活動に加え、パワハラ防止のため外部研修を定期的に実施し、職場の健全なコミュニケーションを促進することが大切です。また実際の事例を基にしたケーススタディを通じて、パワハラの認識と対処方法を学ぶことも有効です。

パワハラに対しる認識を高めることが、予防の第一であり、一番の対策となり得ます。

③相談窓口の設置

ハラスメントが発生してしまった場合、疑わしい事態が起きた場合に、安心して相談できる窓口を設ける必要があります。相談窓口を設置することで、企業としてハラスメントに対して真摯に取り組んでいる姿を示すことができます。従業員が安心して働く事ができる環境を作りハラスメントへの対応に加え、防止にもつながります。

④マネジメント能力の向上

 パワハラの原因として、上司のマネジメント能力不足が考えられます。部下の扱いや仕事の割り振り、チームビルディングなどマネジメントがうまく機能せず、パワハラにつながってしまう場合も多いです。パワハラ防止の観点からもマネジメント研修の実施を行う事も有効な施策と言えます。


結論

パワーハラスメントは、職場の健康と幸福にとって重大な脅威です。この問題に効果的に対処するためには、教育と意識向上が不可欠です。組織は、従業員と管理職の両方に対する定期的な研修プログラムを導入し、パワハラの予防と対処方法を学ぶことが重要です。これにより、全員が尊重され、安全な職場環境の実現に貢献できます。パワハラ防止のための研修を検討している人事担当者は、専門的なプログラムを提供する外部機関に相談することをお勧めします。

文責:善福大(ぜんぷく・ひろし) 中小企業診断士、奈良コンサルティング代表

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