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どこよりも遅い!ルヴァン浦和第2戦マッチレビュー

 こんにちは、セレサポ神戸の亮太です。今回は、3週間遅れでルヴァンカップ準決勝第2戦、浦和レッズとの試合のレビューを書きたいと思います。現地観戦した後、スカパーでも見直したので、内容のあるレビューだと思います。今回は特に、セレッソのボール保持時、ビルドアップを中心に見ていきます。

両チームのスタメン

両チームのスタメン

 両チームとも第1戦と同じフォーメーションでした。セレッソにとって大きかったのは、ジンヒョンの復帰です。これによってGKからのビルドアップが可能になりました。

整理されたセレッソのポジショニング

 この試合のセレッソは、ビルドアップ時の立ち位置が直前の試合に比べて整理されており、選手各々の役割がはっきりしていました。

ビルドアップ時のセレッソのポジショニング

 具体的には、相手の2トップのプレスに対しては、ジンヒョンと両CB、鈴木の4枚で数的優位を確保しボールを動かす。SBは高い位置をとり、SHと近い位置でペアを形成しサイドの起点を作る。奥埜と上門はハーフスペースに位置を取り、相手ボランチとSHを牽制する。加藤はビルドアップには関わらず、相手CBと駆け引きしラインを押し下げる。

ビルドアップにおける4つのユニット

 色分けするとこんな感じです。この4つのユニットに分かれてビルドアップを行なっていました。5月6月の、清武絶好調期に戻ったような配置ですね(清武の代わりは上門)。

 まずはこの静的な配置でボールを動かして相手を揺さぶり、後方ユニットからサイドのユニットにボールを渡します。ここから、セレッソの崩しが始まります。

オートマティックなサイド攻撃

 今季のセレッソの強みはサイド攻撃です。毎熊、為田の運動量と気の効くポジショニングを起点にして、松田、山中のオーバーラップやアーリークロスでサイドを攻略する攻撃はシーズンが進むにつれて成熟してきました。

 そしてこの試合、自慢のサイド攻撃で浦和を攻略するために用意された策は、とてもシンプルなものでした。サイドにボールが回った時、同サイドのSHは裏へのランニングや幅を取る動きで相手SBを引き出し、スペースを生み出して利用する、逆サイドのSHは中へ絞ってゴール前の厚みを作るというものです。

SBの裏のスペースを狙うパターン
相手SBの引き出し、そのスペースを上門が使うパターン

 具体的にはこの2パターンです。1つ目は、SHがまずSBの裏のスペースを狙うパターン。2つ目は、SHがサイドに開き、間にできるスペースを中央ユニットで狙うパターンです。いずれも狙いは相手のサイドのスペースであることがわかります。基本的な崩しですが、SHの適切な状況判断と動き出しが必要になります(だから、爆発的なスピードやドリブル突破を持っていなくても、毎熊為田はセレッソに必要なんです、パトリッキはこの辺があやしい)。

 このパターンは試合を通して何度も行われていました。

前半4分のシーン
山中が高い位置をとって浦和の右SBをつり出し、為田がその裏を狙っている。
ここでは奥埜が前線に位置し中の厚みを確保。
しかし、山中のパスはミスになる。
前半17分のシーン
山中がボールを持つと為田がライン側へ開き、
浦和右SBをつり出してできたスペースを上門が狙う。
2点目のシーン
戻りが遅れた浦和右SBの裏を為田がシンプルに使う。
このシーンでは奥埜も中央へ走り込み、中は3対2の数的有利

 どのシーンも、相手のサイドのスペースを狙い、為田がサイドのスペースに動いたところから、連携が始まっています。

 また、為田がサイドに流れると、左SBの山中は

  • サイドに流れた為田

  • 間のスペースに位置する上門

  • 横にいるボランチの鈴木

  • 後ろに下げてやり直す

という4つの選択肢の中から最善策を選ぶことができるため、浦和に的を絞らせないと行く効果もありました。

(浦和の右SBが、本来攻撃の選手である関根であったことも、セレッソの左サイドからの攻撃がうまくいった要因であると考えられます。)

狙いのスペースを上手く突いた先制点

 先制点の場面では、毎熊がSBを引き出し、中盤にボールを預けて自らそのスペースを狙うという素晴らしい動きをしていました。

マイクマにボールが渡った場面

 サイドで高い位置をとる毎熊にボールが入ると、浦和左SBの明本が毎熊につり出されました。それによってできたスペースに奥埜が動きます。ここまでの流れは、先程まで見てきた左サイドと同じで狙い通りです。

 ここで毎熊は、奥埜にパスを出しました(ワンツー狙い?)。しかし、浦和の岩尾が素早く背後から寄せてきたため、奥埜は前を向くことができませんでした。

鈴木から毎熊へパスが通るシーン

 奥埜は一旦ボールをキープし、鈴木へ横パスを出しました。ここで毎熊は、明本よりも一歩早く動き出し、狙っていたサイドのスペースへと走り込みました。

 このプレーの毎熊の凄さは、まず自分がサイドに開きSBを引きつける→間へボールを預け作ったスペースにスペースへランニング、というように自分でスペースを作り、自分でスペースを使ったことにあります。先程まで見ていた左サイドでは、山中がSBを引き出し、為田が裏を狙っていましたが、その2つを一人でやってしまったわけです。

 また、毎熊の初めの狙いは奥埜とのワンツーだったかもしれませんが、それを防がれてもサイドのスペースに迷いなくボールが届くことを見ると、チームとしてまずはサイドのスペースを狙うという意思統一ができていたことがわかりますね。

ビルドアップ時のリスク管理

 ここまでは、セレッソのサイド攻撃を見ていきました。とても効果的にサイドを攻略していましたが、中央からのビルドアップはというと、ほとんど見られませんでした。

 特に、紫の後方ユニットから、緑の中盤ユニットへの縦パスは全くと言っていいほどありませんでした。その理由は、中央でボールを奪われた時のリスクを排除したいからです。浦和のコンパクトなディフェンス陣の隙間を狙って縦パスを出すと、試合を通して数回ボールを奪われる場面が来ます。

縦パスをカットされた時のリスク

 この配置の時、後方ユニット→中盤ユニットのパスを奪われてしまうと、サイドユニットと中盤ユニットがすぐに守備に戻ることは難しいです。そのため、赤で示した危険なゾーンを後方ユニットの3人のみで、数的同数、あるいは数的不利で守ることになります。このリスクを徹底的に排除するため、後方ユニット→中盤ユニットという縦パスはなかったわけです。

 このように、攻撃は必ずサイドから始まるため両SBには司令塔としての役割が課せられます。本来SBは相手DFにとってプレッシャーをかけやすいため、捕まってしまいやすいポジションです。しかしセレッソは、右SBにボランチもできそうなくらい展開力と技術のある松田、左SBにキックの精度が高い山中がいることで、SBからスムーズに攻撃を展開できていました。(進藤や船木が出てくると途端にビルドアップが怪しくなります。)

まとめ

 ここまで、浦和戦のボール保持時の動き、ビルドアップを見ていきました。この動きで狙い通りサイドのスペースをついたことで、前半に2得点を挙げ、そのまま勝ち切ることができたゲームでした。

 触れていなかった守備についても、上門、加藤はいつも以上に前からプレッシャーをかけていましたし、奥埜、鈴木の運動量、最終ラインの安定感も見事でした。

 今シーズンのセレッソは、時間はかかりましたが、このサイドからの攻撃を上手く使うことによって4バック相手には点を取れる、負けないチームになったと思います(横浜、川崎、浦和などなど)。さらにこの攻撃の精度を上げて、残りの試合全勝し、ACL圏内を目指してほしいです。ルヴァン決勝の相手の広島は3バックですが笑

 ここまで読んでいただき、ありがとうございました🌸
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