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2019年9月の記事一覧

陽炎と共に

季節外れの紙吹雪が
街に舞ったなら
それで最後なのさ
忘れてしまう前に
本当の言葉を言おうと
必死で探したけれど
如何しても見つからず
貴方は離れてしまう
アスファルトに揺れる
しばれた陽炎と共に

無限回帰

永遠に飽きた人為らざる者
人を止めたきっかけすら
もう思い出せやせず
燦々と生き続けてしまった
戻る事は叶わず今日も
無造作に命を掻き乱し笑う
何が楽しいのかすら分からずに

バンテージ

ロカビリーな夜には
パインバーガーを
買いに行こうか
素敵な気持ちを隠さない
バンテージを巻いて
貴方と歩く街は
今日も灰色に見えたけど
大丈夫さきっと
何もかも色付いて
鮮やかに咲き誇る日が
来る筈だから
俺は気にしない
誰かが高台の上で
笑って居たとしても

僕は貴方の涙が嫌いだ

何故人は泣くのかが
僕には分からない
感傷を見せ付けるのは
止めにしてくれないか
その醜い命の血潮が
躯から透けて見えるから
貴方の涙が嫌いで
そしてとても綺麗なのは
如何してだろうね
何時か教えてくれないか
僕だけにそっと囁いて

零災

斜めに傾いたビルから
覗く異国の月灯りが
僕を歪ませてしまうよ
山の様に並ぶ不幸を
飲み込んで吐き出す日々に
慣らされた人達はもう
楽しい事を探せない
だから夢の国で幻想に
抱かれて唯眠るのさ
如何にも幸せな振りを
演じ続け生きて逝く
皆何かに頼らなければ
眩い朝日に耐え切れないんだ

ハイヒール

適当な言葉を並べて
日々をやり過ごすニート
回帰するその命が
また人に為ると言うなら
彼女は赦されるだろう
高級なハイヒールを履いて
街に飾られる位の地位を
手に入れて歓喜すればいい
信じる者は何時だって
偶像に救われる筈だから

シネマスター

ギャング達が憧れた
シネマスターは銀幕の中で
永遠を手に入れてしまった
僕は彼らの上澄みを掠め
息を殺して生きて来た
歯牙にも掛かられず
誰にも気付かれない様に
夜を纏って歩み続ける
永訣の朝が砕け散るまでは

ジュークボックス

ボーリングシューズを履いた
如何わしいストロードッグ
俺の為だけにバタフライナイフで
林檎を剥いてくれるあの娘
銀色に染められた無数の手が持つ煙草
アンプを繰り抜いて嵌めたモニターから
写し出される世界の終わりを
笑いながら楽しそうに見て居る悪人
ジュークボックスは延々と止まらず
アシッドジャズを流し続ける
錆びれたミルクホールの片隅で

マジック9

何処か寂しげな誰かの背中
夜を背負う川崎のマシン
魔法の様な速さは時に
人の感覚を凌駕してしまう
無敵だった頃には戻れず
過去を懐かしむ位なら
今直ぐに消えてくれないか
魔法が解けた日々にしがみ付く
お前を見続けたくは無いから

戸惑い

貴方は遮光された部屋で
無い筈の窓を眺め
本物の涙を零した
毎日僕には見えない
何かに語り掛けようと
手を伸ばすけれど
思い通りには動かせず
酷く驚き戸惑うだけ
外の世界は今日も卑しく
僕達をすり抜けて唯
さんざめいて居るのさ

マイネーム

ダミーカートを装填した
拳銃で俺と遊ぼう
何なら実弾でも構わない
お前を現に戻す為に
あの日の続きをしようか
ミッキーマウスマーチを歌って
ケーキを切り終えたなら
終わらない戦場が待って居る
お前なら分かるだろう
共に地獄を歩んだのだから
俺達はニ度と人には戻れない
そしてお互い渇望して居る
あの国を赤く燃やした続きを

絶対零度

エヴァの肋骨を盗んで
売り飛ばすザアカイ
全ては神の名の元に
平等なのだとしたら
その権利は俺にもある
だから徴税するのさ
何もおかしくは無いだろ
当然の事なのだから
長い独白を終えた彼は
絶対零度の街へと消えた

人を歩む者と
人を止めた者
理からは抜けられず
共に朽ち果てて逝く
幼き頃の憧景すら
遠過ぎて掴めず
跡形も無く消えた
晩秋に見た蛍の様に

シルエット70

五月雨の中を佇んで
貴方は秋を待たずに消える
ベルトサンダーで削った
僕の歪んだ恋心さえ
受け入れ微笑んでくれたね
その面影を取り戻そうと
何度も振り返るけど
後ろ姿すら思い出せず
僕は悲しみの欠片を探した