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2019年6月の記事一覧

オルゴール

掟に従い言われるが儘
ベルトに差した花火を撃つ
何にも為れないと思ったが
最後は人を殺めて終わった
幸せの小さな箱から
懐かしい曲が零れ落ちたら
静かな幼き頃へと帰ろう
父と母に包まれて眠った
何もかもが眩しいあの頃へ

マタドール

暴れ牛が街を埋め尽くし
逃げ場所が無くなっても
大丈夫さ俺が傍に居る
シトロエンC3に乗って
遠い異国の海を渡ろう
悲しみはそっと捨て去って
新しい名前を手に入れたなら
今度は上手くやれるから

メルヘン

蛇に唆され林檎を齧るイヴ
其処は楽園の筈だった
地上に追放されてもなお
同じ日々が続くと信じて
有りもしない事ばかりを話す
何度も何度も楽しそうに
瞳を逸らしアダムは答える
もう直ぐ楽園に帰れると
希望の無い慟哭が街外れの
基督が立つ礼拝堂に響いて割れたよ

クラッチワイヤー

ミルクホールへと
単車で向かうパンクス
伸びたクラッチワイヤーが
ありふれた夜へと誘う
爆音と喧騒の中で
確かに命の音がした
その事を忘れてまで
生きて行こうとは思わない
皆は違うのだろうか
そんな事を抱きながら
単車のアクセルを全開にした
孤独な朝に囚われない様に

サイケデリック・ラヴァーソング

安いステレオから
聞き逃しそうな
流行りの歌が
流れ始めても
皆直ぐに飛び付いて
忘れてく
秋風が少しずつ
冷たくなって
闇市で純粋な
阿片が出回るだろう
高過ぎて買えない
ジャンキーは
混ぜ物だらけの
ドラッグをやり続け
あずましくない
社会から消えてしまう
サイケデリックな
ラヴァーソングを口ずさみ

虚ろな象

黒いコートを纏い
少年は突き進む
明日無き兵士の真似をして
学校で銃を撃ち捲る
大きく虚ろな象に
望みを踏み潰される日々
圧倒的な力の前で
彼は余りにも無力だった
今は自分が象に為り
抗えない力を行使する
音楽室から漏れ出した
ピアノの曲に撃ち砕かれ
彼はニ度と戻れないと知り
絹の涙を地面に零す
その命が鳴り止むまで

フェイク・ポルノスター

適当に画像を細工したなら
沢山騙して稼ぎましょう
どうせ本当の私は何処にも
存在を許されないのだから
卑しい欲望は隠さない
其れだけが私を走らせる
だから山の様な中傷にも
耐え切って見せるの
飽きられる前に消えてしまえば
皆直ぐに代わりを探すわ
だってこんなにも嘘吐きが
巷に溢れ返って居るのだもの

すれ違い

言葉が心が躯が
すれ違いながら
何かに変わる
許容出来ない事を
積み重ねた街を
横目で眺めて
あの娘は居なくなった
窮屈な夜を越える為

クリア・アイスティー

しばれる夜には
クリアなアイスティーを
何もかもを美しく
洗い流してくれるから
悲し過ぎる事さえ
分からなくなっても
独りで歩けると信じて
虚しい朝にも
クリアなアイスティーを

曼珠沙華

曼珠沙華が燃えている
あの日の様によ
俺達は過去に帰れない
だから美しいと思えるのさ
生きて死ぬその事を
さあ楽しく踊ろうぜ
あの頃の様によ

長いお別れ

ジャスミンの花が咲く前に
貴方と長いお別れを
私を憎んでくれたなら
蝶にだって為れたけど
余りにも眩しくて
離れられるのが怖かった
ジャスミンの花が散る後に
貴方と永久のさよならを

神殺しの口笛を

罪の十字架に磔られた
彼は喚き嘆く事も無く
口笛を吹きながら
うつろわざるものに為る
神を殺す事が叶わない
罰にまみえた者達は
地面にひれ伏し手を合わせ
嘆き喚きながら震えた
うつろうものとして

マヌカン・ガーリー

素敵な衣装を着せられて
皆の視線を浴び続けたなら
人形から人に為れると
あの娘は信じて疑わない
純粋過ぎる心は時に残酷な
現実に耐え切れず壊れる
僕は人は素晴らしいよと
今日も彼女に嘘を付く
本当は誰もが老いを知らない
君に憧れているとは言えずに

バード

唄えないと嘆くカナリア
それでも良いと囁くカラス
二人は決して離れない
本当の恋をしてるから
偽物の箱庭に囚われた
貴方には見えるだろうか
純粋な命の鼓動が