死神
鏡を見ると、奴がいる。じっとこちらを見据えては、まだかまだかと訴える。
私達は何故死を恐れるのか。痛みや苦しみを伴うからだろうか。ならば、その痛みや苦しみが無ければ私達は死を恐れずに、自ら川を渡ることができるのだろうか。
私達の根本的な恐れは、おそらく飢餓からきている。動物が死を免れるためには、まず食べることを続けなければならない。これが絶たれた時、私達は飢えを感じ死を直感する。この時、飢えに苦しみが伴われなければ、私達は何の嘆きも無く、眠るように死ぬことが出来るだろう。同じように、何らかの暴力的な外力によって生命が絶たれる時、痛みを伴わなければ、これから少し用事が有ったんだが困ったな、というぐらいで、他には何も考えること無く長い眠りにつけるだろう。
詰まるところ、私達の抱く死への恐怖は、私達の身体に備わった本能的な応対、感覚がそうさせているに過ぎない。つまり自分で自分の首を締め続けているのである。
鏡を見ると、奴がいる。じっとこちらを見据えては、まだかまだかと訴える。
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