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#私の好きな原田マハ 「まぐだら屋のマリア」

小学生の頃から読書感想文は苦手なのですが、今回は大好きな、原田マハさんの作品のために、書きたいと思います。

私が初めて原田マハさんの作品に出会ったのは数年前のこと。「まぐだら屋のマリア」という作品を書店で見付け、まずそのタイトルの奇抜さに心を惹かれ、まぐだら屋って何?、マリアって何者?と考えながらレジに並んだことを覚えています。


「まぐだら屋のマリア」について

物語は及川紫紋という、東京の老舗料亭「吟遊」で板前修業をしていた青年を主人公に進みます。彼はある事件がきっかけで、料理人になる夢を諦めざるを得なくなります。やぶれかぶれなまま乗り込んだバスが行き着いたのは、「尽果(つきはて)」というバス停。その先には崖があり、その崖っぷちには小屋が。

事件に関して、「紫紋は犯罪者ではなかった。けれど取り返しのつかないことをしてしまった」と、自分のことを「つみびとだ」と感じています。そんな絶望を抱え「死」を望む紫紋に目的地はなく、とぼとぼと崖っぷちの小屋へ向かいます。すると彼を迎えたのは「まぐだら屋」の看板と追いがつおの香り、そして地元の常連客から「マリア」と呼ばれる美しい女性でした。

彼は縁あってまぐだら屋で料理人として働くことになります。尽果には、寂しく、悲しい過去を背負った人達が引き寄せられるように辿り着きます。それは紫紋も例外ではありませんでした。そんな傷ついた人達が立ち直る過程で必要なものが、料理なのかもしれない、そう思わせてくれるのが、この「まぐだら屋のマリア」なのです。

尽果に辿り着き、マリアの料理を食べた紫紋は「生まれて初めて、ほんとうの満腹感、というものを味わった気がした。そして、食べるという行為がやむにやまれぬ衝動である、ということを知った」と独りごちます。

誰かのために料理を作る、作ってもらった料理を心の底から味わう、そうやって日常を噛みしめながら生きる。生きている以上、食べることから逃れることはできない。だからこそ、そこには幸福があるべきで、それは誰にとっても必要な日常なのだと、考えさせられました。

本書には四季折々の様々な料理が登場します。それは本当に美味しそうで、人の温かみを感じさせてくれるものばかり。寂しい時、行き詰まった時には、是非とも本書を読んでいただきたいと思うのです。


余談

原田マハさんの作品で、個人的に好きなのは、起承転結の「結」の部分。どんな作品でも読者に希望をそっと抱かせてくれるような、優しく美しい言葉を、すっと腑に落としてくれる感覚。これが大好きなのです。時には優しく包み込み、時には思いっきり背中を押してくれる、そんな温かさや力強さも魅力のひとつです。

また、原田マハさんの作品は、旅にまつわる作品や美術に精通する作品が多く、それは原田さんご自身が旅好きで、美術館のキュレーターをされていたことに由来しているようです。旅や美術作品が好きな人も、そうでない人も、一度読めば新たな発見や感動に出会えること間違いなしです。

以上、少し長くなりましたが、#私の好きな原田マハ として応募させていただきます。よろしくお願いします。

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