見出し画像

ペテロ第一の手紙 3章6節          夫に従うこととは (サラの事例から)

【新改訳改訂第3版】
Ⅰペテ3:6 たとえばサラも、アブラハムを主と呼んで彼に従いました。あなたがたも、どんなことをも恐れないで善を行えば、サラの子となるのです。

ὡς Σάρρα ὑπήκουσεν τῷ Ἀβραάμ, κύριον αὐτὸν καλοῦσα: ἧς ἐγενήθητε τέκνα ἀγαθοποιοῦσαι καὶ μὴ φοβούμεναι μηδεμίαν πτόησιν.

https://youtu.be/Xdu9NIaiPM8

はじめに

Ⅰペテロ3章を読み続けていますが、1節から6節にかけて女性に対するペテロの勧めになります。ペテロは、2章から異邦人の中にあって、クリスチャンとしてりっぱにふるまいなさいと勧めましたが、りっぱとは何かといいますと、「立派」ではないのです。それは、聖霊によって満たされた歩みということです。聖霊とは目に見えない霊的な存在ですが、信仰者の行いによってその霊的な存在が明らかにされます。その具体的な例が、人の立てたすべての制度に、主のゆえに従いなさい、ということです。それが主権者である王であっても、また、王から遣わされた総督、当時の奴隷制度における主人との関係においても、クリスチャンらしい仕え方ということが示されました。「しもべたちよ。尊敬の心を込めて主人に服従しなさい。」ということです。また、それは結婚関係においても同じであることが示されております。夫婦関係においても仕え合うことをペテロは教えます。

アブラハムの旅に同行するサラ

6節を見ますと。妻のあるべき姿の具体例として、アブラハムの妻であったサラについて取り上げています。

Ⅰペテ3:6 たとえばサラも、アブラハムを主と呼んで彼に従いました。あなたがたも、どんなことをも恐れないで善を行えば、サラの子となるのです。

ここでなぜペテロはここでサラを取り上げたのかという疑問が生じますが、ペテロは、仕える女性の代表例としてサラを取り上げたのには、彼女の忍耐を知っていたからと思われます。アブラハムが、神から「あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家を出て、わたしが示す地に行きなさい。」と召しを受けたとき、彼女は、夫に従ってカルデヤのウルからカナンの地まで旅をしました。距離にしますと1,000キロの旅です。現在であれば、ジェット機で1時間程度の距離でしかありませんが、この当時は、ラクダに揺れて、砂漠を旅する旅です。しかも、道も道路なんてものはありません。石ころが転がる道、砂漠の砂の上、灼熱の太陽が照る続けるような不毛の地を進むこともありました。しかも、家族だけでなく、高齢の父親テラ、甥のロト、使用人、家畜を引き連れてのキャラバン隊を構成しての大規模な旅でした。決して楽とは言い難い旅を行う理由。それは、金を手に入れるでもない、自分の欲求を満たすためでもない、それは、主なる神がアブラハムを呼ばれたことに、事に発しているのです。この時アブラハムは75歳、サラは65歳でした。当時、カルデヤ人のウルと言えばジグラットと呼ばれる巨大な神殿をもったイラクの大都会でした。アブラハムの家族は、長距離の旅を組織できるだけの財力を持っていたと想像できますから、ウルに住んで老年を安泰に暮らすことができたわけです。ところが、夫が「神に呼ばれた。」と妻に打ち明けたとして、普通は受け入れられるはずがありません。しかも、ウルでは、月神シンを神としていた国です。ジグラットもシンを祀る場所でした。おそらく、アブラハムもその家族もシン神を崇拝していた事と思われますが、ある日、創造主なる神がアブラハムに語りかけたのです。その夫の言葉にサラは素直に頷けたでしょうか?当然、夫に対して不信感も抱いたでしょうが、老年まで生きてきたあり方を捨てることが要求される旅に対して否定する気持ちすら抱いたのではないかと思うのです。しかし、こうした旅に対して、サラは異を唱えたような記述は創世記には見当たりません。テラも、甥のロトもアブラハムについて行ったという記事のみ記されているだけです。行く宛もわからず、行くように勧めた創造主なる神の姿すらわからず、彼らは旅をしていった。その旅には誰も異を唱えなかったというのが聖書の伝えるアブラハムのカナンを目指す旅でした。

エジプト寄留でのサラ

ようやく、約束の地カナン(現在のイスラエル)についたアブラハム一行ですが、到着後、カナンの地に大飢饉が襲ったため、彼らはエジプトへの避難を余儀なくされました。ところが、アブラハムは妻サラの美貌ゆえに、妻を取られ、自分は殺害されてしまうのではないかと案じたので、エジプト人の前では自分の妹(実際、異母妹でした)であると偽るよう彼女に懇願しました。そうしたアブラハムの心配は現実のものとなり、サラの美しさを聞きつけたエジプトの王は彼女をめとり、その褒美としてアブラハムには莫大な富を与えました。ところが、度重なる災いが王とエジプト王家に降りかかり、王はサラがアブラハムの妻であることを知った。激怒した王はサラをアブラハムに返すと、二人をエジプトから追放しました。このときの顛末を見ても、夫アブラハムの優柔不断で保身の態度の中であっても夫の言うことを聞き入れ、王の妃になるということを選択しました。

イシュマエル誕生のいきさつ

そして、約束されている子どもがなかなか与えられなかった時、彼女は自分の子を諦め、自分の女奴隷ハガルをアブラハムに与え、彼女との間に子どもをもうけました。当時のこの地方には、不妊の妻が女奴隷を夫に与え、その側女との間に生まれた子供を自分の子供にできる風習があり、サライもまた、ハガルを通じて息子を得ようとしたのです。そうして与えられたのが、イシュマエルです。しかしハガルは妊娠したとすぐに、女主人であるサラを見下すようになります。この屈辱に耐えかねたサラがアブラハムに不平を漏らしたところ、アブラハムはこの件に関しては関わらないとサラに言うわけです。するとサラはハガルをいじめたので、ついにハガルは逃亡してしまいます。ある意味、アブラハムの優柔不断さが招いた結末では会ったかと思いますが、それはサラにとっては、苦しく、屈辱を覚えたことから発したことであったのでしょう。しかも生まれたイシュマエルが後に生まれた自分の息子イサクをいじめるのを見ていると、悔しくもあり、苦しくてたまらなかったでしょう。夫アブラハムの家系が続くことを願い、ハガルに子供を産ませようと配慮したのにも関わらず、ハガルに裏切られ、夫アブラハムは、この件には干渉せず、イシュマエルが実子イサクをもいじめるのを見ると、サラの気持ちもわかるというものです。それでも、彼女は夫に不平をぶつけるのでもなく、夫には忍耐しつづけました。なぜ、そうしてきたのかといえば、それは、女としてのたしなみとか、ならわしであるとか、離縁すると経済的に身を滅ぼすからといった理由ではないとペテロは言います。

アビメレクの妻となるサラ

この後、神がソドムの町を滅ぼした後、アブラハム一行は再び南へ向かって歩みだし、ゲラルの地に着きました。アブラハムは、エジプトの例に懲りず、ここでもまたサラを自分の妹であると偽ったので、サラはゲラルの王アビメレクの王家に娶られます。ここで面白いのですが、神は事の発端であったアブラハムを罰すれば良いものを、アビメレクとその王家を罰したのです。アビメレクはサラはアブラハムの妻であることを夢で事実を知り、姦淫の罪を犯さずに済んだので、最終的にはアブラハム達を優遇しました。現在でも、キリスト教のみならず、ユダヤ教、イスラム教においても、信仰の父と呼ばれている偉人アブラハムですが、実際は不甲斐ない醜態をさらしているといえましょう。現代ならば、こんな男を捨てて、離縁して王の妃に収まるということもあったでしょうが、彼女はそうしたことは考えもしなかったようです。いずれの場合においても、アブラハムの言うとおりに従っているのです。

こうしたサラの生涯を見ていきますと、主人アブラハムに対して、人としての信頼を基礎としているわけではないことがわかるのではないでしょうか。アブラハムを見ると、優柔不断で、いざとなると保身に走り、夢ばかり追うような人物に見えてしまいます。サラは、アブラハムをκύριον(キュリオン) 原型はキュリオスです。主イエスの主を意味する、権威と名誉の称号を意味する言葉ですが、サラは、アブラハムを権威ある人として尊敬を込めて呼んでいたのです。普通ならば、こんな男には懲り懲りということになるのでしょうが、サラはアブラハムをそうは見ていたのではなかったのです。サラはダメ男としてアブラハムを見ていたのではなく、ダメ男であっても愛すべき男として愛していたわけでもありません。彼を神からの権威ある者としてアブラハムに仕えていたということです。つまり、サラは夫を神が与えた人物としてとらえていたということです。

自分の伴侶を見たときに

自分の夫を見るときに、恋して結ばれて、恋している間は、相手のすべてが素敵に見えるものですが、いざ結婚してみて気がつくことは、夫のダメさ加減だと思います。夫の素晴らしさを日々見つけることではなく、夫の頼りなさ、いい加減さ、適当さや、アブラハムにも見られた優柔不断な姿勢、保身の姿諸々・・・。ダメンズという言葉が巷にありますが、すべての夫がそうではないとは思いますが、少なくとも、女性が心から尊敬できる夫というのはそうはいないのではないかと思います。

女性も男性も気が付かなければならないことは、自分の結婚相手は、誰が与えたのかということです。相手にいかなる不満があろうとも、自分に与えられた伴侶は神が与えたものとして信じることです。愛情、経済的、世間体・・・といったものが二人を結びつけたのではないということです。二人の婚姻に対して神の介在があるということ、そのことを忘れてしまいますと、一気に破局するのです。『子はかすがい』ということわざがありますが、二人を結びつけているのは、子供でもありません。二人を結びつけているのは神であり、キリストであることを覚えていくことで、私たちの結婚生活はより豊かなものに変えられることを覚えていきましょう。

Translation 聖書対訳

【NASB】1Pe3:6
just as Sarah obeyed Abraham, calling him lord, and you have become her children if you do what is right without being frightened by any fear. サラがアブラハムに従い、彼を主人と呼んだように、恐れることなく正しいことをすれば、あなたは彼女の子供になります。

【KJV】 1Pe3:6
Even as Sara obeyed Abraham, calling him lord: whose daughters ye are, as long as ye do well, and are not afraid with any amazement. サラがアブラハムに従うと同時に、彼を主人と呼ぶ:あなたがたが必要な限り十分に行い、驚きを恐れないなら、あなた方は彼女の娘です。

【Today's English Version】1Pe3:6
Sarah was like that; she obeyed Abraham and called him her master. You are now her daughters if you do good and are not afraid of anything.サラはそのようでした。 彼女はアブラハムに従い、彼を主人と呼びました。 あなたが善を行い、何も恐れていなければ、あなたは今や彼女の娘です。

Lexicon レキシコン

ὡς,c \{hoce}
1) as, like, even as, etc.

 Σάρρα  Case N Number S Gender F

ὑπήκουσεν  Person 3  Tense A  Voice A  Mood I Number S
ὑπακούω,v \{hoop-ak-oo'-o}
1)耳を傾ける、耳を傾ける1a)ドアをノックした人が誰であるかを耳を傾けるようになる(ポーターの義務)2)命令を耳にする2a)従う、従う、服従する

τῷ   Case D  Number S  Gender M
ὁ,ra \{ho}
1) the 2) this, that, these, etc.

Ἀβραάμ,n \{}   Case D  Number S  Gender M
1) the son of Terah and the founder of the Jewish nation

κύριον  Case A  Number S  Gender M
κύριος,n \{koo'-ree-os}
1)人または物が属する者であり、それについて決定する力を有する者。 マスター、ロード1a)物の所有者および処分者1a1)所有者; 人の支配権を持っている人、州の主人1a2):主権者、王子、首長、ローマ皇帝1b)は、尊敬と敬意を表す名誉の称号であり、使用人は主人に挨拶します1c)この称号は 与えられたもの:神、同義語の救世主

αὐτὸν  Case A  Number S  Gender M
αὐτός,rp \{ow-tos'}
1) himself, herself, themselves, itself 2) he, she, it 3) the same

καλοῦσα Tense P Voice A Mood P Case N Number S Gender F
καλέω,v \{kal-eh'-o}
1)呼びかける1a)声を出して呼ぶ、大声で発声する1b)招待する2)呼びかける、つまり名前を付ける2a)名前を付ける2a1)名前を受け取る、名前として受け取る2a2) ある人に名前を付けるには、彼の名前を2b)と呼びます。つまり、名前または肩書きを付ける(男性の間で)2c)名前で敬礼する

 ἧς Case G Number S Gender F
ὅς,rr \{hos}
1) who, which, what, that

ἐγενήθητε Person 2 Tense A Voice P Mood I Number P
γίνομαι,v \{ghin'-om-ahee}
1)なる、すなわち存在する、始まる、受け取る2)なる、すなわち通過する、起こる2a)イベントの3)発生する、歴史に現れる、ステージに来る3a)男性の 公に登場する4)作られる、完成する4a)奇跡の、実行される、鍛えられる5)なる、作られる

 τέκνα Case N Number P Gender N
τέκνον,n \{tek'-non}
1)子孫、子供1a)子供1a)男性の子供、息子1b)比喩的。 1b1)親と子の間と同じように、愛、友情、信頼の絆によって男性の間で形成された親密で相互の関係に移された名前1b2)常連客、ヘルパー、教師などの愛情のこもった演説で:私の子供1b3)NTでは、生徒または弟子は教師の子供と呼ばれます。後者は、教師の指示によって生徒の心に栄養を与え、キャラクターを形成するためです。1b4)神の子供:特に「イスラエルの人々」のOTでは親愛なる神、NT、パウロの書物では、神の霊によって導かれ、したがって神と密接に関係しているすべての人1b5)悪魔の子供たち:思考と行動において悪魔によって促され、彼を反映する人々文字1c)比喩的  1c1)それに依存し、それに対する欲求または愛情に取りつかれ、それに中毒しているもの1c2)運命に責任がある人1c2a)したがって都市の子供たち:それは市民と住民1c3)知恵の投票者、いわば、知恵によって育てられ、形作られた魂1c4)呪われた子供たち、呪いにさらされ、神の怒りや罰に運命づけられた

 ἀγαθοποιοῦσαι
Tense P Voice A Mood P Case N Number P Gender F
ἀγαθοποιέω,v \{ag-ath-op-oy-eh'-o}
1)善を行う、他の人に利益をもたらす何かをする1a)誰かの良い助けになる1b)誰かに恩恵を与える1c)利益を得る2)うまくやる、正しくする

 φοβούμενα  Tense P Voice M Mood P Case N Number P Gender F
φοβέωv \{phobéō}
1)(叙事詩)飛行させる 2)恐ろしい、警報する 3)脅迫する
4)(受動的)おびえる 4a)畏敬の念を抱き、恐れること

μηδεμίαν  Case A  Number S  Gender F
μηδείς,a \{may-dice'}
1) nobody, no one, nothing

πτόησιν Case A Number S Gender F
πτόησις,n \{pto'-ay-sis}
1)恐怖を伴いつつ、恐れること