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社会的インパクト投資レポートvol.7:「ペルー金融事業者支援ファンド」シリーズ

2018年6月18日、当社は「社会的インパクト投資宣言(※1)」を発表しました。社会的インパクト投資とは、貧困層支援や教育問題など社会的課題の解決に取り組む企業や領域に投資し、経済的なリターンと社会的なリターンの両立を実現する投資手法を指します。この社会的インパクト投資レポートでは当社の各ファンドシリーズが具体的にどのような社会的リターンを実現するかについて定量的かつ定性的にお伝えしてまいります。
※1 当社の社会的インパクト投資に対する考え方についてはこちら(https://crowdcredit.jp/about/social-investment)もあわせてご参照ください。

今回、社会的インパクト投資レポート本編の第7弾としてお伝えするのは、当社が社会的インパクト投資を重視する皮切りとなったファンドシリーズの一つであり、マイクロファイナンス(※2)機関への融資を対象とした「ペルー金融事業者支援ファンド」シリーズです。
※2 マイクロファイナンスとは、主に発展途上国の貧困者向けに小口の融資や保険などを提供することで、彼らの経済的自立を支援するサービスのことです。以下もあわせてご参照ください。

1. 「ペルー金融事業者支援ファンド」シリーズの経済的リターンと社会的リターン

① 本ファンドシリーズの経済的リターンの概要

「ペルー金融事業者支援ファンド」シリーズは2020年1月現在、1号~8号の8本のファンドがございますが、8本すべてが当初予定されていた運用期間を待たずに2019年4月5日付で期限前償還いたしました。

上記早期償還となった1号~8号の運用パフォーマンス、つまり本ファンドシリーズの経済的リターンは以下の通りになります。

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本ファンドシリーズが期限前償還となったのは、実質的な貸付先(海外資金需要者)であるCooperativa de Ahorro y Crédito FONDESURCO(以下「FONDESURCO社」といいます)側の以下2点の理由に拠ります。

(1) FONDESURCO社が、当初想定していたよりも早いペースで預金獲得による資金調達が完了し、手元の資金量が過剰になったこと。
(2) FONDESURCO社にとって、当社エストニア法人からの借入れは国外ローンに当たるため、借入れに税金が課せられることから、当該ローンを優先的に返済したかったこと。

なお、各ファンドの運用パフォーマンス、経済的リターンにつきまして詳細は満期時運用レポート(https://crowdcredit.jp/operation/index/33)をご参照ください。

② 本ファンドシリーズの社会的リターンの概要

直近の社会的リターンに関する世界的な動向として、2015年に国連サミットで採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」があり、これに基づいて持続可能な世界を実現するための17の分野に関する貢献が求められています。

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出所:外務省ホームページ

本ファンドシリーズは、マイクロファイナンス機関であるFONDESURCO社が実質的な貸付先(海外資金需要者)となり、この17の分野のうち「1. 貧困をなくそう」に貢献することを目指しています。

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以下では本ファンドシリーズがどのように貧困の削減に貢献することを目指しているのかについて説明していきます。

2. 本ファンドシリーズの定量的なレビュー

ここでは本ファンドシリーズの貸付先(海外資金需要者)であるFONDESURCO社が、どのような地域の、どのような人に、どのような貸付を行っているのかをデータで見ていきます。

FONDESURCO社の活動地域は、ペルー南部に位置する同国第3の都市・アレキパ近郊です。

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FONDESURCO社は、1994年に農村部でマイクロファイナンスを行うNGO(非政府組織)として設立された後、金融サービスの更なる充実を図るため、2015年2月に信用協同組合へと組織形態を変更しました。

営業収益の約99%が貸付事業、残りの約1%が保険事業。大半を占める貸付事業のうち約99%が個人向け貸付、残りの約1%が企業向け貸付です。このように個人向け貸付に特化した事業構成の現状となっています。

FONDESURUCO社は信用協同組合であるため、貸付先はすべて組合員。約26,000人の組合員のうち約12,000人(約46%)へ貸付を行っており、この約12,000人のうちの5%にあたる約600人が銀行等の金融サービスにアクセスする機会のない僻地に住む貧困層です。しかしながら、借入人の返済率は約90%と高く保たれています。

個人向け貸付について借入人の資金使途の内訳としては以下の3つに大別できます。

ⅰ. 農業・畜産業を営む個人事業主の短期運転資金 約50%
ⅱ. 学費、旅行費、コンピューター購入費など各種費用 約25%
ⅲ. 夏やクリスマスのセール、イベントなどに合わせた事業用の短期運転資金 約25%

なお、上記で約半数を占める「ⅰ. 農業・畜産業を営む個人事業主の短期運転資金」について、貸付金額は平均約5,000ペルーソル(約162,500円、1ペルーソル=32.5円換算)、貸付期間は平均約3ヵ月です。また、借入人の具体的な使途としては、米、じゃがいもの苗や種などの購入、牛や搾乳機などの購入に充てられています。

3. 本ファンドシリーズの定性的なレビュー

それでは、本ファンドシリーズによって届いた資金が実際にどのような人々(最終資金需要者)のために使われ、どのように生活改善に役立ったのか、いくつかのケースを見ていきましょう。

① Nila Picha Supoさん

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シバヨ村在住のNila Picha Supoさんは、学校を卒業後、チバイ地区の村の駄菓子屋で働いていましたが、家はとても貧しい状態でした。

ある日、ボランティアグループからの電話で、シバヨ村に初めての民宿を建てないかとの誘いがあり、FONDESURCO社からの借入を開始。3度の借り入れを行った後、チバイ地区伝統の刺繍織物で飾った壁、ペルー伝統のパッチワーク織物が華やかに置かれたテーブルが自慢のシバヨ村初めての民宿を、旦那さんと一緒に自分自身の手で完成させ、自宅も改装しました。

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その後民宿をもう1件建築し、現在は村で初めてのエコミュージアム・民芸品販売店をオープン予定です。

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② Ricardinaさん

Ricardinaさんは親子3代にわたり、山岳地帯に2頭の牛を放牧して暮らしていました。

FONDESURUCO社からの借入れは25年前、500ペルーソル(約16,250円、1ペルーソル=32.5円)から開始。農業に力を入れ、そら豆、トウモロコシ、麦などを栽培し始めました。

その後も借入れにより、質の良い種や苗を購入、トラクターをレンタルし、冬の繁忙期には5人の助っ人を雇用することが可能になりました。

現在では、毎日20リットルの牛乳をGLORIA社(ペルーの乳製品メーカー)に販売しています。また、事業の拡大により、短期運転資金の借入金額も3,000ソル(約97,500円)に増えています。

③ Elizabethさん

Elizabethさんの両親はアレキパに保有していた土地で農業を営み、彼女も幼少時から両親を手伝っていました。

FONDESURUCO社からの最初の借入れで自分自身の土地を買い、トウモロコシとじゃがいもの生産を開始。7頭の牛を購入し、その後、畜産業も開始して事業を拡大してきました。

1年前には以前からの夢であった小さな食堂を開くため、新たな借入れを行いました。現在は食堂をオープン。繁盛しており、FONDESURCO社の近くにあるため、FONDESURCO社メンバーがランチに頻繁に通っています。

④ Marisolさん

Marisolさんはバジェデコルカというペルーで有名な渓谷の出身で、両親とともの民芸品、ペルーの織物をつくりながら暮らしていました。

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しかし、1991年にあった大地震で、彼女の一家が住むマカ地区は大部分の家や建物が大きな被害に遭いました。そのため、Marisolさん一家もアレキパの町に引っ越してきました。

FONDESURCO社からの最初の借入れにより、大きな業務用冷蔵庫、棚などを買い、以前からの夢であった小さな商店をアレキパの町中に開業。その後、自宅も改装しました。

現在、商店は毎日朝の5時から夜の7時まで開店しており、パンやフルーツ、洗剤などを求め、たくさんのお客さんが立ち寄ります。

幼少の頃からペルーの伝統民謡を歌うのが好きだった彼女は、現在では月に3度ほどレストランや結婚式などに呼ばれ歌っています。

◇ファンドの手数料およびリスクについて
ご出資いただく際の販売手数料はいただいておりません。
なお、出資に対して、年率換算で最大4.0%の運用手数料を運用開始時に(または運用開始時および2年度目以降毎年度に)いただきます。
また為替手数料その他の費用をご負担いただく場合があります。
為替相場の変動、国の政治的・経済的なカントリーリスクや債務者の債務不履行等により、元本に欠損が生じるおそれがあります。
ファンドごとに、手数料等およびリスク内容や性質が異なります。
詳しくは、匿名組合契約書や契約締結前交付書面等をよくお読みください。クラウドクレジット株式会社
第二種金融商品取引業:関東財務局長(金商)第2809号
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