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【運用部コメント】今般のコロナショックにつきまして

今年に入ってから、中国・武漢発の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な感染拡大により、コロナショックとも呼ばれる急激な市場変動が起こっています(※)。今回はこのコロナショックの現状と今後の展望につきまして考察してまいります。

※ 急激な市場変動による当社ファンドへの影響につきましては以下をご参照ください。

コロナショックが過去の国際金融危機と異なる点

2020年3月10日にWHOがパンデミックを宣言した時点で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の累積患者数は11万8,600人でしたが、その後感染者数は爆発的に増大し、2020年4月7日現在、累積患者数は134万8,628人、累積死者数は7万4,834人となっています(Johns Hopkins University発表) 。また同時に現在の世界の経済状況は、経験的に約10年周期で訪れるといわれる国際金融危機の入り口にいる可能性があります。

過去30余年間の国際金融危機とは、具体的には1987年10月のブラックマンデー、1997年から1998年にかけてのアジア通貨危機、2000年3月のドットコム・バブル崩壊、そして2008年9月のリーマン・ショックと、ほぼ10年周期で起こっています。そして、それらに共通する基本的な構造は、中央銀行の金融緩和で膨張し過ぎた過剰流動性が、何らかのトリガーより一転逆流し始め、一気に世界的な信用縮小が起き、その結果実体経済に甚大な影響を及ぼすというものでした。

これに対して、今般のコロナショックは、リーマンショック以降、金融システムを保護する目的で各国中央銀行が量的金融緩和を実施した結果、世界の金融市場において過剰流動性が膨張している点で、それまでの金融危機直前の状況と同じでしたが、そのトリガーそのものは感染症のパンデミックなので、過去30年間のなかでは初めて経験する実体経済内での出来事を震源としていることになります。

今回はグローバルな「カネの動き」ではなくグローバルな「ヒトの動き」および「モノの動き」の収縮によりもたらされていると考える必要があるため、金融政策のみで抑え込むのはほぼ不可能ではないでしょうか。今般のコロナショックは実体経済を震源とし金融市場に波及したという点で特徴的であり、その伝播の速度は過去に見たことがない凄まじいものです。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が与える実体経済への影響

新型コロナウイルスの実体経済に対する影響が経済指標に表れるのは2月分からと考えられるので、これまで発表された主な経済指標を見てみます。

中国の国家統計局がまとめるPMI(購買担当者景況感指数)は、1月は製造業で50.0と、拡大・縮小のちょうど分岐点水準で、1月分についてはあまり大きな影響は見られませんでした。しかしながら2月のPMIは、製造業で35.7と、リーマン危機後の最低水準38.8を下回り、過去最低となったほか、同非製造業指数はさらに落ち込んで29.6となりました。2月の中国経済は事実上停止状態にあったことを示唆しています。

米国においても2月のサービス業PMI(速報値)が49.4に急落し、分岐点の50を割り込みました。3月は更に悪化し39.8と2009年10月以来最低となっています。また3月の失業率は4.4%と2月の3.5%から急伸しました。また新規失業保険申請件数は3月21日までの1週間で328万件、そして3月28日までの1週間で665万件と、統計開始来最高値となっております(グラフ1)。

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日本においては2月の新車販売台数が前年同月比10.3%減となる一方、百貨店売上げもJ.フロントが前年同月比21.4%減、三越伊勢丹が同13.6%減、高島屋が同11.7%減となりました。1-3月期のGDP成長率(前四半期比、年率換算)の市場予想値は3.8%減となっており、2四半期連続でのマイナス成長となれば名実ともに景気後退期入りとなります。

さてここから、主なエコノミストが発表した今年上半期の米国経済指標の予想値を見てみましょう。

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単純平均を見てみると、GDP成長率は1-3月期:1.8%減、4-6月期:15.9%減となっています。なお、ゴールドマン・サックス・グループは3月31日に従前の予想値(1-3月期:6.0%減、4-6月期:24.0%減、2020年3月20日発表)から予想値を大幅に引下げました。2四半期連続のマイナス成長になるのはほぼ確実で、米国はリセッション入りする公算が大きいでしょう。

過去を遡ってみても、本年4-6月期の成長率の下落率は第二次世界大戦以降最低となりそうです。それまでの戦後最低の成長率は1958年1-3月期の10.0%減でした。ちなみにリーマンショックの際は2008年10-12月期の8.4%減でした(グラフ2)。

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一方、失業率はこれまでの戦後最高値は1982年12月の10.8%でした。リーマンショクの後の最高値は2009年10月の10.0%でした。今回のリセッション時の予想最高値は12.8%と戦後最高値を更新する可能性があります(グラフ3)。

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コロナショックによる株式市場の底打ちには相当の時間がかかる可能性

さて、最後に過去2回の金融危機の際、株式市場が底を打つまで要した時間と底値の水準を確認しておきましょう。

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表2の通り、高値から底値をつけるまでに要した日数は、ドットコム・バブル崩壊の際には3指数平均で約2年半、リーマンショックの際には同約1年4カ月でした。底値の水準はドットコム・バブル崩壊の際には3指数平均で高値から約54%下、リーマンショックの際には同約55%下となっています。経験的にひとたび弱気相場に入ると株式市場はそう簡単に底を打たないといえます。

4月5日にニューヨーク州で1日あたりの新たな感染者数と死者数が初めて減少したと保険当局が明らかにしました。それを受け株価は急伸、4月6日ダウ工業株指数は前日比1,627.46ドル(同+7.73%)上昇しました。市場は早期の感染拡大の終息そして本年7-9月期以降の景気のV字回復を織込みに行こうとしているようです。しかしながらハイイールド債券(投資不適格債券)利回りが急上昇していることから(グラフ4)、財務基盤が脆弱な企業の破綻が本格化する可能性があり、決して油断できる状況ではないと考える必要があるでしょう。

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