見出し画像

カブフェス2022 観劇記録

「推しは推せる時に推せ」に色んな意味で背中を押されてる青木です。
今年は日程が空けられたので、4年(5年?)ぶりにカブフェスに行ってきました。

カブフェスって何?


四国に拠点をもつ株式劇団マエカブさんが主宰となり開催している演劇祭。
2022年で10回目となりました。

6つの部屋で様々な劇団がタイムテーブルにそって公演があり、入場料(+おひねり制度)で一日いくつもの劇団の公演が見放題。芝居好きにはたまらないお祭りです。

一本(一団体)20分ほどなので「長時間座っているのが苦手」「演劇見てみたいけどがっつりはちょっと…」という方にもおすすめです。

コメディもあればシリアスもあり、シュールもある。その年によって参加団体が異なるため、ふらっと気になったところへ見に行ってもよし、前日からタイムテーブルを印刷してあらすじとにらめっこしながら「あれもいいな。ここもいいな」とうなりながら観る劇団さんを決めてもよし、様々な楽しみ方が出来ます。

観劇リスト(+感想のような覚書)


①雲の劇団雨蛙

上演作品 『ゆでがえる』について
偏屈な僕のサロンを3年ぶりに四国の地で開催。岡田和歌冶の偏見を語るレクチャーパフォーマンス形式の作品です。知らず知らずに『茹であげてしまう』演劇のシステム。知って損はありませんが決して得もありません。

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

前回気になっていたものの観劇を逃した劇団さん。「レクチャーパフォーマンス形式の作品」という一言に魅かれて観劇しました。

※レクチャーパフォーマンス…下記のような手法のことらしいです。(NPO法人芸術公社のHPより)


今回のテーマは「衣装と演劇」、モデルさん二人をもちいて教育番組仕立てで語られ進んでいき、「へぇ、そうなんだ」とみているうちに、2人のモデルさんの違いを通して「おぉ…!」と発見が見つかる話でした。

色彩、些細な着方から衣装の歴史をたどると舞台の衣装の可能性ってすごく広がるなと発見が。いつか創作にも生かしてみたいなと思いました。

②MTCproject(旧:モンゴルシアターカンパニー)

上演作品『Choose My Story!~出張バージョン~』
お客様の多数決によって登場人物の運命が変わる観客選択型演劇。2019年より大阪で行われているシリーズをカブフェスバージョンにアレンジ。果たして登場人物たちの運命はいかに?

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

最近書いた「告解室」が分岐形式だったので「生で体験型演劇が観れる!」とあらすじをみて楽しみにしていた上演作品でした。

物語の初めは「カフェで男女が出会う」というありきたりな設定が、様々なルートを挟んでいき、そのたびに司会者から観客へ選択が託され、最後はまさかの展開に…。ギャップがとても楽しかったです。

そして、選択方法は拍手。
「その手があったか!」と心の中ではしゃいでおりました。

司会者の方の話し方やアドリブにとても心を掴まれ、劇団のHPを調べて見に行ったのですが様々なジャンルと演劇の架け橋をしている団体で、他にも気になる演目も多数ありました。また、別の公演も見てみたいです。

③studio salt

上演作品  ゆたちゃんと僕と僕の恋人
兄のことは好きだ。だけどずっと兄を避けて生きてきた。12年ぶりに、いや、正確に言えば親父の葬式ぶりに兄に会うのは、僕の大切な人を紹介するためだ。兄は僕の唯一の家族だから。僕は兄のことを「ゆたちゃん」と呼んでいる─

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用


不思議なあらすじが気になり、観劇しました。

登場人物の距離感、表情、台詞の節々から浮き出てくる、登場人物たちの感情変化が「ああ…いいなあ…」と思った作品。個人的にすごいすきです。

「辛い」とか「やめて」とか、セリフとして直接言葉に出てこないんですが、相手に向けた何気ない会話やその会話を受け取った表情から読み取れるように出来ていて、こう、絶妙な感情の描き方が、脚本を勉強しつつ書いている身からでも「すごいなぁ」「その技術ほしいなぁ」と不覚にも思ってしまうほどでした。まっすぐで悪気がないからくる質問とか、言葉が、あんなにこう、胸を苦しめてくるとは…。横浜ですが、気になる公演があれば横浜まで行ってまた観たい、そんな劇団さんでした。

④株式劇団マエカブ

上演作品 ラクカラーチャ
ある冬の寒い日、くたびれた男は新たな住処にたどり着いた。そこで待ち 受けていたのは、お互いの事をダーリン、ハニーと呼ぶ奇妙なカップルだった。童話アリとキリギリスを題材にしたシュールでコミカルな物語。

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

タイトルでもある「ラクカラーチャ」。言葉の響きから勝手に「ハクナマタタ」的な、なんかそんな意味かなと思ったら、まさかのど直球タイトルでした。…まさか、お昼時に…。

しかし、最初は「くたびれた男」に感情移入するようか、「奇妙なカップル」のぶっとびぶりに笑わせられるのですが、次第に「くたびれた男」の方へスポットがあたり、ただのコメディでおわらないとこがまたおもしろいなあと思いました。

過去にポー原作の「大鴉」の公演を観て惚れた劇団でもあり、マエカブさんはカメレオンのように色んな作品を行う劇団さんだなと思いました。

物販で販売していた「マエカブック2」では「ラクカラーチャ」は過去に再演もされているみたいなので、もし公演に出会う機会があればラクカラーチャの正体はぜひ貴方の目で…。

⑤いるかHotel

上演作品 「かぷせるかいじゅう」より『 絵 』
いるかHotelのオムニバス作品「かぷせるかいじゅう」の中の人気エピソード(関西弁&サスペンスミステリー&コメディ?)の『 絵 』をセレクト上演。関西弁でミステリー?

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

三段階で楽しめる、なんとも未知なジャンルでした。

切り詰めた糸が、なんというか、急に真後ろから手が伸びてきて糸が切られ、ほっとしていた矢先にいつのまにかその糸が首にまかれてるような、なんとも世にも奇妙な物語的な話。「やられた!!」ってなります。

なんかこう「ここが!ここがいい!」って言いたいけど、言ってしまうより「ぜひ実際に観てほしい!」と思えるそんな作品でした。

⑥KOD

上演作品 月下美人
世界観 「あの世」が存在することが、科学的に明らかになり始めた世界。死後に生物のエネルギーの一部が異次元に移動することが発見され、「あの世」が存在する可能性が高まった。人類はその研究に没頭し、その一環としてある植物に注目が集まった。 月下美人は、夜に大輪の花を咲かせ、次の日の朝には花が散ってしまうことで有名である。この植物が、死に際して普通より長く次元の境界に留まることが明らかとなり、人類は研究のため言語を発することのできる月下美人を作成開発した。やがてその植物は商品化され、死に際に発せられる「断末魔」を鑑賞するための植物として流通するようになった。   舞台は停電で空調が止まってしまった部屋。死を迎えつつある月下美人(峰山博志)と、まだ逝かせたくない京子(仁科恭子)の最後の20分間のお話。

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

※あらすじは原文ママです。
ひときわ長文のあらすじと脚本が「春の遺伝子」の作者・河合穂高さんというところが気になり、観に行きました。短編より長編で観たい作品で、

○SFやファンタジー色のつよいものが好きな人
○しっとりとしたお芝居がすきな人
○死生観にこだわりがない人      は面白く見れるかと思いました。

⑦シャカ力

上演作品 あいあい
ねえさん3人と見習い2人のお話。

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

※こちらもあらすじは原文ママです。

チャイナドレス、ねぇさん、ルドルフ、すっぽん…etc パワーワードと情報量が多過ぎて…面白かったんですが…その面白さのどこを切り取って説明したらいいのやら…。

高知県の劇団さんのため、遠方でなかなか公演に巡り合えないのですが、過去に観劇した「槍隊FORDIE」と「アンパンマン」も好きです。カブフェス等の演劇祭で何を観るか迷っている方にぜひオススメしたい劇団さんの一つです。「癖になる」「つい見てしまう」「語るより観てほしい」そんな劇団さんです。

⑧Unit out

上演作品 朗読・太宰治『燈籠』
~言えば言うほど、人は私を信じて呉れません。~
太宰治の短編小説『燈籠』を朗読作品として上演します。今の時代にも通じる、胸がぎゅううっと痛くなる感じをお楽しみください。

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

一言一句小説を忠実に読む朗読劇でした。交番に連れて行かれたさき子が、逮捕されたくない一心で自分が24年間親孝行をしてきたことや、貧乏な家柄で恵まれない境遇であることを等を警官に語る場面は役者さんの朗読と演技の両方も相まってとても印象的に見えした。

また、最後の親子の食卓の場面はありふれた家族の食卓の一場面だったのですが、「つつましい電燈をともした私たちの一家が、ずいぶん綺麗きれいな走馬燈のような気がして来て、ああ、覗のぞくなら覗け、私たち親子は、美しいのだ」(太宰治『燈籠』より)という一文を最後の場面にセリフ無しで体現しているところがすごいなぁと思いました。綺麗で儚いがとても似合う、そんな朗読劇でした。

⑨壱劇屋

上演作品 一人たち芝居
関西演劇界が誇るエンターテイナー、RYUTARO OKUMAによる、スーパーミラクルユニバースおしゃれ感覚アルティメットエンターテイメントSHOWをお届けします。

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

一人芝居であり、タイトルどおり「一人たち芝居」でした。

前半はコメディ仕立てで進んでいき、最後は技術満載の身体表現(パントマイム)で殴り掛かってくるそんなお芝居スーパーミラクルユニバースおしゃれ感覚アルティメットエンターテイメントSHOWでした。人間の身体ってあんなに動くんだという衝撃が。

個人的にはヘンゼルとグレーテルの下りからの魔王の部分が思い出しても何度も「ふふふ( ´艸`)」と笑えてきて、「もう一度別の回を観とけばよかったなぁ」とじわじわ思わせてくる劇団さんでした。

⑩ZOI***

上演作品 人でなしの恋
門野のもとに嫁いだ京子。 幸せな生活を送るも違和感を覚えはじめる。 もしや他所に女でも……? 意を決し、夫の後を追う京子 「どうかそこに私を安心させてくれるものがありますように」 そう願いながら目にしたものとは──

【公式】カブフェスHP 出演団体・個人 より引用

近代文学好きがゆえこれは観るしかないと思って観劇しました

披露閣は全フロアが畳の和室のような作りをしている空間なんですが、その空間も相まって世界が構築されていて、まるでセットかのようになじんでいました。過去に別の劇団さんの、朗読劇に近い形での公演で「人でなしの恋」は観劇したのですが、江戸川乱歩の作中の世界観を残しつつ演劇に落とし込んだ表現は個人的に一番好きかもしれません。

人形役と京子役、どちらも狂気的な女性なんですが狂気の種類というか個性というかそれぞれ「狂気の個性」があってラストの場面は「うわあああ…よきぃいい…」と言葉が溶けました。もう一度、大きい劇場でも見てみたいと思いました。


それではまた…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?