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「今ここスイッチ」を押してみる

2021年を振り返ると、改めて楽しかったなあと思う。

海外で働いている友人を交え、オンラインで数年振りに会話ができたこと。実家に顔を出して、家族と食卓を囲んだこと。おばあちゃんの家に行けたこと。イベント仲間や、大学の友人と対面で会えたことなど。

自分の大切な人たちと同じ時間を過ごせたことで、だいぶリラックスができた。でも不思議なことに、彼らと同じ時間を過ごしている最中は、どこかソワソワして、その瞬間を楽しめてなかったことに気づく。

例えば、「明日はこの予定があるのか」、とか。「来週から仕事がまた再開するのか」とか。なぜか余計なことばかり考えてしまい、その場では楽しい!と心から思えなかったのだ。

今だってそうだ。まだ休日なのに、明日の仕事の予定ばかり考えている。まるで日曜がすでに終わっているように、もう明日の世界に身を置いている。どこかもう、自分が今日この瞬間に存在しないような感覚がしている。

先のことを不安に思い、色々考えてしまい、「今、その場にいる」瞬間に集中できない現象。

常に先のことを考えて、目の前のことを100%楽しめない状況を、これ以上続けたくない。なので、意識して何も考えず、今この瞬間に集中する時間を作ってみることにした。

私は心の中でこの動作のことを「今ここスイッチ」と呼んでいる。

*****

平日の昼休み、コンビニに買い出しに行くことにした。午後から重めの打ち合わせがあり、どうやって乗り切ろうかと考えながら歩いていたら、いつの間にかコンビニについていた。

そして何も考えず、いつもと同じカップスープを買って帰る。帰り道、ふと気づく。「あれ、全然休めてなくね?」

いつの間にコンビニに着いたのだろう。どうやって今日食べる昼食を選んだんだろう。気づけば家までの帰路にいる。

そこで、「今ここスイッチ」を押してみた。その時、偶然にも私は帰路の途中にある分かれ道にいた。左を行けば、道路沿いに歩き家に着く最短ルート。右に行けば、公園がある遠回りルート。ここで、あえて遠回りをしてみた。

イヤホンのスイッチを切り、携帯を見ずに、今、この瞬間に起きていることに対して意識をむけてみる。

公園には、たくさんの子連れの母親たちが、ベンチに腰をかけ、自分の子供が遊んでいる様子を見守りながら昼食を食べている。

空を見れば、雲ひとつない快晴だ。正午の日差しが木々の隙間から差し込んでくる。これがいわゆる木漏れ日と言うのだろう。

あえて、日のあたる道を選び、顔面から日を浴びると、暖かい。仮に衣類を脱いで裸で歩いても、寒くないくらい、肌と同じくらいの心地よい気温だ(もちろん、脱いでいない)。

木々の動きを見ると、枝に着いている葉っぱが風で揺れている。じっと観察すると、風によって揺れる葉は、一つとして同じ動きをしていない。かつ、日のあたる角度によって一つとして同じ色をしていないことに気づく。

風に揺れて擦れてなる木々の音は、こんなにうるさかったのかと改めて気づく。一方で、噴水のある池の水の滴る音が、一定の感覚で聞こえてくる。お互いの音同士が邪魔をすることなく調和している。

そんなことを考えていると、公園の出口まで着いた。遠回りだと思っていたこの道も、よくよく時計を見たら普段の道より1、2分だけ遅いだけで、そんなに遠い道ではなかった。なんと言うか、焦る必要もなかったのだ。

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数学者の岡清は、 人間が人間である中心にあるものは、科学性でもなければ論理性でもなく理性でもない、情緒である。という言葉を残している。

川の水が流れる音を聞いて、落ち着く。木々の葉っぱが揺れる風景を見て、綺麗だと思う。木漏れ日を浴びて、暖かいと感じる。この情緒を感じることこそが、動物と人間を分ける、人間性なのではないか。

と、以前岡清の本を読んで感動した覚えがある。

「今ここスイッチ」を押すようになって分かったことは、身の回りには情緒を感じるものが多いと言うか、案外面白い情報が多いことだ。

周りの出来事に意識を向けてみると、思いもよらない感動に巡り合う。

なんて事のない帰り道にもたくさんの発見がある。

歩いてみると、全ての道が地続きにつながっていることを身をもって体感できる。こことここがつながっているのか、とか。意外と近いな、とか。

それだけではなく、歩けば歩くほど、その土地にいる人の雰囲気が変わることにも気づく。

一見どうでもいいことに対して観察し、考えを巡らせ、何かを感じる。

正直、将来だったり、明日の仕事を考えるといろんなことが不安に思える。そう思うと、今のこの瞬間にも集中することは難しい。

けど、あえて今に集中する。不安と向き合うことも大切だけど、今、ここを楽しむ。そうすることで、心の余裕が生まれてくる。

どうしようもなく不安に思った時は、時間をとってあえて「今ここスイッチ」を押してみる。案外、身の回りには面白いことが多いのだ。

今日のこの場は、今日しかない。今を楽しむ権利を十分に使い、今日の、この瞬間を楽しむ。

いま、ここ。周りを五感で感じてみること。ぜひ試してみて欲しい。時間がない、なんてことは案外ないのだ。

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