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死の恐怖

グアム旅行でダイビングをした
その日参加したのは私一人
事前に申し込んでおり、当日『免責同意書』にサインした
ダイビングは楽しいけれど
一歩間違えば、死と隣り合わせ


その時、私はブランクダイバー
結婚し3人目の子供が産まれ、暫く潜っていなかった
そして、初心者ではないがベテランの域でもない

何度も言うが、その日の参加者は私一人
つまり、お客が私一人だったのだ

潜る前のブリーフィングで
私の経験を元に、ダイビングスポットが決められた

『ブルーホール』はグアムダイビングの代名詞ここは必ず押さえておかなければと希望した

現地ガイド1人とボート操縦に1人と客が私1人の3人で海に出た

英語がもっと喋れたら…と後悔する

ダイビングでは様々なスポットに潜る
浅瀬で色とりどりの魚たちと戯れる場所もある


私はレック(沈船)も好きだ
『アメリカンタンカー』
船内にも入れた
船内を捜索する気分で
映画『海猿』を思い出しとゾッとした


そして主に、海の中の地形が好き
穴の中に入ったり、『クレバス』の様な割れ目や断崖絶壁のドロップオフを行く

何とか中性浮力を保ちながら
進んで行く

クレバスの中には魚がいなかった

途中、大きなクラゲが1匹 浮遊していた

ガイドがクラゲと戯れ出す
その様子を、しばらく傍で見ていた
クラゲがどんどん底に沈み
崖から離れて行く

ただでさえドロップオフは怖い
暗い暗い海の中の
無機質な断崖絶壁が
死の淵に沈むように深い深い海底に堕ちている…

ガイドが私を置き去りにし
クラゲと共にどんどん崖から離れて行く

『死ぬ!』


と思った
突然、恐怖が襲ってきた

慌ててガイドの元へ行き
ガイドに触れる様にピッタリ傍についた
いつでも掴めるように

この状態が一番危険なのを知っている
冷静に落ち着かなければ
決してガイドにしがみついてはいけない


数年前に
私と夫が通っていた大阪で有名なダイビングショップのオーナーが1人の客と共に亡くなっていた
朝、仕事前のテレビのニュースで目にして
二人で凍り付いた
夫は私よりも常連で仲が良かったので、お葬式にも参列した
海の中でパニックになった客を助けようとして
の事故だったのだろう


冷静になり
周りを見渡した
殆ど光の届かない真っ暗な海の中
断崖絶壁の壁は見えず
一度 頭を回転させると上下左右が分からなくなった
深い深い海の底に
吸い込まれる恐怖
そして、私とガイドの2人きり…

クラゲはどんどん浮遊して暗闇に吸い込まれていく
ガイドがようやくダイコン(ダイビングコンピュータ)を見た
私にジェスチャーで「戻ろう👈👈」と合図する
方向を確認し浮上して行った

断崖がうっすらと見え
上から光が差して来た時は
心底安堵した


わたし客一人、随分と舐められたもんだ…と思った
ボートに戻りしばらく放心状態
ひと言「I was scared.」と訴えた


ショップに戻りダイビング記録を書く(ログ付け)
最大深度40.1m
自己最大潜水深度を更新

当時の感覚は今でも鮮明に思い出す



写真は全て、下記サイトからお借りしました。

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