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[ギターレビュー]Ibanez AZ2402 - PrestigeとPremiumはどの程度違うのか

半年前にワイヤレストランスミッターが挿さるようにジャックを改造して以来、Ibanez AZ224Fを弾く時間が増えた。なんといっても抜群に弾きやすく、個人的にはSuhr ModernやT's Guitars DST-DXよりも弾きやすいとすら感じている。

Ibanez AZ224F

AZ224FはAZシリーズの中でもミドルクラスのPremiumというグレードの機種だが、十分すぎるくらい演奏性もサウンドも良いため、いつかさらにその上のグレードであるPrestigeを試したいと考えていた。最近弾く機会が少ないギターを数本手放してスペースに余裕ができたこともあり、思い切ってPrestigeシリーズのAZ2402を購入してみた。


参考: AZ224Fを使っていて気になる点

AZ2402のレビューを書く前に、今まで弾いてきたAZ224Fを使っていて見えてきた気になる点を書いておこうと思う。

ネックが意外と動く

擦り合わせで解消できるレベルだったので大きな問題はないがハイ起きが発生していた。また、フレットのバリも若干発生した。他のローステッドメイプルネックのギター(T's Guitars DST-DX22やEVH Wolfgang)はネックがかなり強固なので、それに比べると意外とネックが動くのだなという印象を持っている。

ジャックにワイヤレストランスミッターが挿さらない問題

AZ224Fのジャックは独特な形状となっていて、ワイヤレスのトランスミッターが挿さらないという問題があった。(少し改造して挿さるようになった)

クリーントーンの音作りが難しい

ボディの鳴りがあまり豊かな方ではなく、Hyperionピックアップも中低音が割と控えめということもあり、クリーントーンで使える音の幅が狭いように感じる。

AZ224Fは基本的に満足度の高いギターなのだが、"敢えて"気になる点を列挙すると上のようになる。これらの点が上位機種のAZ2402ではどうなのか、みていきたい。

AZ2402のスペック

アルダーボディ

AZ224FをはじめとするPremiumシリーズのボディにバスウッドが使われているのに対して、AZ2402ではアルダーが使われている。派生モデルにはトップにキルトメイプルが使われているAZ2402Qや、コアトップのAZ2402Kなどが存在するが、無印のAZ2402はアルダーのみで構成されている。いくつかカラーバリエーションが用意されていて、今回購入したTri Fade Burst Flatカラーはサテン仕上げになっていてなかなか渋い。AZ224Fに比べるとトップ面のエッジのRが若干緩やかになっている。

ネックジョイント部分は大きめのヒールカット加工がされていて、ハイポジションの演奏性が高められている。

S-Techローステッドメイプルネック

PremiumもPrestigeもネックはローステッドメイプルだが、Prestigeの場合はS-TECH WOODという工法で国内の工場で仕上げられている。購入時点ではネックが若干逆反りを起こしていたのだが、トラスロッド調整で問題ない状態に戻すことができた。写真ではわかりにくいが、少しトラ杢になっている。

ステンレスフレット

フレットはステンレス。Premiumシリーズとの違いはなさそう。AZ224Fは22フレットだがAZ2402は24F仕様。

チタンサドル搭載GOTOH製ブリッジ

Ibanez AZのPrestigeシリーズ用に開発されたGOTOH製のT1802が搭載されている。Premiumシリーズに搭載されているT1502との違いはサドルの材質で、T1802ではチタンが使われている。T1802/T1502はGOTOHの510をベースに開発されたブリッジだが、工具無しでアームの脱着ができるのが便利で良い。

Seymour Duncan製HyperionピックアップとAlterスイッチ

AZ2402は2ハムバッカーモデルで、前後ともにSeymour Duncan製のAZ専用ピックアップであるHyperionが搭載されている。Alterスイッチによって10種類の配線パターンを切り替えることができるようになっている。ここに関してはPrestigeとPremiumで特に違いはないようだ。Alterスイッチによる配線切り替えは出来ることが多い分、迷子にもなりやすい。個人的にはこのAlterスイッチはSSHモデルであるAZ224Fの方が使い勝手が良いと感じる。AZ2402では、フロントシングルとリアハムバッカーを切り替えて使う際にピックアップセレクターとAlterスイッチを両方操作することになり、瞬時に切り替えることができないのが残念だ。

Sure-Grip IIIノブ

地味なところだが実際に使うとPremiumシリーズと大きな違いを感じるのがノブで、AZ2402には表面に滑り止めのゴムベルトが巻かれたSure-Grip IIIノブが使われている。他のIbanezのギターにも搭載されているSure-Gripノブで、非常に使い勝手も感触も良いのだがあまり単体販売されておらず、またカラーバリエーションも限られているのが残念だ。

ワイヤレスが挿さるアウトプットジャック

何度も書いている通り、AZ224Fはそのままではワイヤレスのトランスミッターを挿すことができず長い間困っていたのだが、AZ2402ではそのままトランスミッターを挿すことができた。発売当時からAZ224Fと形状が違ったのか、あるいは年次改良で変更されたのかは不明だが、とりあえず改造しなくても挿さるのは嬉しい。

サウンド

アルダーボディによるところなのか、チタンサドルによるところなのかわからないが、AZ224Fに比べると全体的に音がブライトだと感じる。リアハムバッカーはAZ224FもAZ2402も同じHyperionなので、違いが特にわかりやすい。フロントのハムバッカーも思っていたよりも芯があり、割とキレが良い。ザクザク刻めてフロントリアともに音の粒立ちが良いので、歪ませてロックを弾く分にはAZ224FよりもAZ2402の方がアンサンブルの中でも存在感を出しやすく、使い勝手が良いと感じる。AZ224F同様、中低音が割と控えめなこともあり、クリーントーンの音作りの幅は狭いように感じる。

AZ224F(Premium)との比較

AZ224Fはほとんど不満点のない満足度の高いギターだった。2023年現在PremiumシリーズとPrestigeシリーズでは大体10万円前後程度の価格差があり、その差がどこにあるのかというのがずっと気になっていた。

購入前時点では、価格の違いは生産国やパーツのディテールによるもので、演奏性やサウンドにそこまで差はないのではないかと思っていた。ギターが届いた直後は、前述の通り若干ネックが反っていて調整が必要だったことなどもあり、PremiumとPrestigeで差がないように感じていた。ただ、その後一ヶ月ほど弾き続け録音した音を聴いたりする中で、PremiumとPrestigeの差を感じる箇所もいくつか出てきた。

音がブライトで埋もれにくい

なんといっても大きな違いはサウンドで、AZ2402はAZ224Fに比べて全体的に音がブライトだ。イコライザーで調整しなくてもアンサンブルの中で音が埋もれにくく、それでいて耳に痛かったり中低音がスカスカということもなく、ロックでは特に使いやすい音だと思う。録音した音のミックスもやりやすい。このギターを使い始めたことによって、AZ224Fの音の埋もれやすさが少し気になるようになってしまった。(イコライザーで補正すれば問題ないレベルだが)

クリーントーンは作りにくい

AZ224Fではクリーントーンの音作りのやりにくさを感じていたが、AZ2402でも今の所やはりクリーントーンの音作りは今ひとつ難しいと感じている。2021年は“幅広く使えるクリーン・トーン”をコンセプトとしてピックアップや指板の木材などが変更されたAZ-Nシリーズが登場しており、クリーントーンを重視する場合はそちらを検討した方が良いのかもしれない。いつか試してみたい。

細かい部分が色々快適になっている

ワイヤレストランスミッターがしっかり挿さるジャックだったり、滑り止めラバーグリップがついたボリューム・トーンノブだったり、手入れが楽なサテンフィニッシュだったりと、それぞれは細かい部分だが日常的に使っているとAZ224Fよりも快適だと感じる箇所がいくつかある。ボリュームとトーンノブに使われているSure-Grip IIIは、おそらくかかっているコストの差は数百円程度のものだと思われるが、あまり単体販売されておらず手に入らないのが惜しい。HyperionピックアップやT1802/T1502ブリッジ、Alterスイッチ回路(基盤)もそうだが、AZに使われているパーツは全体的に専用パーツで他では入手できないものが多い。

基本的な演奏性はPremiumと変わらない

演奏性に関しては正直、そこまで大きな差がないように思う。ネックに関してはAZ224Fの方はPLEKですり合わせをしたということもあり、すり合わせ調整をしていないAZ2402よりも現時点ではコンディションが良い。AZ224Fはネックのハイ起きが気になっていたので、S-TECH WOODが使われているAZ2402ではネックの強度が上がっていることを期待していたのだが、この個体に関しては入手時逆反り状態になっていた。元のセットアップによるところが多少あるので判断が難しいところではあるが、過剰な期待はしないほうが良いかもしれない。

まとめ

PremiumシリーズのAZ224Fも十分に良すぎるギターだったが、一ヶ月ほどAZ2402を弾いてみて、Prestigeシリーズにはさらにプラスアルファがあることがよく理解できた。基本的な弾きやすさという点ではAZ224FとAZ2402で違いを感じないが、サウンド面と操作性の良さでは違いを感じる。一方で値段差は結構大きく、Premiumシリーズのコストパフォーマンスの良さも改めて実感することになった。結局、またどのギターを残してどのギターを手放すか、悩ましい状況になってしまった。


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