ロベール・ブレッソンとイザベル・ユペール

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モーツァルトがドイツの音楽に与えた影響、
ドストエフスキーがロシアの文学に与えた影響、
それと同じような影響を、
ロベール・ブレッソンはフランスの映画に与えている。
これはゴダールの名言である。

ブレッソンの作風が特化していったのは、
1950年代以降のことなので、
ヌーベルヴァーグ以降のフランス映画は、
何かの形でブレッソンの影響を受けている、
と言っても過言ではないだろう。

それはつまり、
ヨーロッパの映画はほとんど影響を受けている、
ということに等しく、
世界全体の映画に対しても、
多かれ少なかれ、
何かの影響を与えていることは間違いない。

それにもかかわらず、
ロベール・ブレッソンの名前を知らず、
ロベール・ブレッソンの作品を見たことが無い人は、
映像の仕事に携わっている人の中にも、
数えきれないほどいる。(僕はあちこちで経験している)

2013年頃、TSUTAYAの発掘良品のコーナーに、
ロベール・ブレッソンの
「抵抗」と「スリ」が並んでいた。
初期の代表的な2本である。
ブレッソンは13本くらいしか映画を撮っておらず、
後期の傑作「たぶん悪魔が」と「ラルジャン」は、
セルDVDでも手に入れることは困難だ。

ちなみに写真家のアンリ・カルティエ・ブレッソンは、
ロベール・ブレッソンとは全く関係がない。

そしてふとイザベル・ユペールのことを思い出す、
というか、そういう世界とはもう縁を切って、
イザベル・ユペールなんて彼岸の人のはずなのに、
イザベル・ユペールが「ELLE」に主演、
なんていう記事を読むと少し心が躍るのだ。

1953年生まれのイザベル・ユペールはもう70歳近い、
ミヒャエル・ハネケの
「ピアニスト」に主演した時だって、
50歳くらいだったはずである。

それでもあんな愛の物語を、
心がねじれているとはいえ、
精一杯自分を愛する女性を演じて、
監督の期待と演出意図に答える。

イザベル・ユペールの出演作品は、
ミヒャエル・ハネケの作品だけでも、
「ピアニスト」と
「タイムオブウルフ」と、
「愛、アムール」の三本を見ている。

DVDの特典映像では
「ハネケの作品はブレッソンに似ていると、
よく言われるけど、むしろ私は、
ヒッチコックに近いと思ってるの」
などとインタビューに答えている。

映画は監督一人で作れるものではないので、
イザベル・ユペールのように、
監督の意図を理解して、
それを実現してくれる女優がいなければ、
完成しないし感動も生まれない。

イザベル・ユペールのような存在感というか、
安心感を与えてくれる女優のことを考えると、
嬉しいような気持にもなれるが、
より一層孤独感のような感情も湧き上がってくる。

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