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29-森永さんの話

 ここからの三つの話は、三つとも、当時福岡市内で公立小学校の先生をなさっていた、森永さん(仮名)という女性が体験した話である。

 森永さんは当時おそらく50代くらいの女性で、独身で、お母様と2人で暮らしていた。僕の霊能師匠の山村さんという方のところで顔見知りになった方である。

「その1」 その頃、高校野球で注目された、期待の新人が読売巨人軍に入団して、新聞やテレビで連日話題になっていた。その報道を見た森永さんは、なぜだかわからないけど無性に、その野球選手に会いたくなってしまった。当時森永さんはおそらく40代で、その選手は18歳くらいである。どう考えてもそんな少年に夢中になる年齢ではないし、そもそもそんなに野球が好きというわけでもなかった。

 それで、なんでこんなにその選手のことが気になるのかと、霊能師匠の山村さんに聞いてみたそうである。すると、その選手は前世である新興宗教の教祖をしていて、森永さんはその教団の熱心な信者だったと言われた。結局森永さんは、休みを利用して、宮崎のキャンプ地までその選手を見に行って、金網越しに一目見たら、とても満足できたのだという。その選手というのは後に巨人軍の監督になった高橋由伸選手であった。

「その2」 その頃森永さんは韓流ドラマに夢中だった。それは日本でいうところの「大河ドラマ」のような、歴史上の実在の人物を題材にしたドラマだった。森永さんがテレビ画面を見ていたら、突然、森永さんの頭の中に
「山村さんのところへ連れて行ってください」という声が聞こえてきた。

 森永さんは「えっ、なんだろう」と思ったそうである。森永さんは特に霊感が強いというような方ではなく、オカルト的な体験などもほとんどしたことのない方だった。

 その声は、今放送されている韓流ドラマで扱われている、歴史上の人物の、モデルとなった本人の「意識」の声だった。「意識」とは何かというと、その人の本体、つまり肉体が死んでなくなってしまったあとも、この地球上に存在し続けているもののことで、その人が抱えている問題が解決しない限りは、いつまでも地球上に存在し続けているそうだ。どうも、この「意識」の存在を感じ取れる人が、「あそこに地縛霊がいます」というような発言をしているようなのである。

 ドラマになるくらいの波乱万丈な人生だったので、その歴史上の人物の「意識」には今も葛藤があり、それを解決するために山村さんに会いたいのだと言う。「意識」には肉体がないので、時間や空間を自由に飛び越えて、
瞬時にどこにでも行けるのだが、霊界(意識の世界)には厳格なルールがあって、何の縁もゆかりもない人のところを、勝手に訪ねてはいけないのだそうである。

 山村さんは霊界では有名な存在で、山村さんに会いたがっているが、つながりがないので会えないという「意識」がたくさんいるのだそうである。そこで、その元韓国の歴史上の人物だった「意識」は、ドラマを通じて自分に興味を持ってくれた森永さんに、自分を山村さんのところに連れて行ってくれとお願いしたのである。後日、森永さんが山村さんを訪ねた時、その「意識」がついて来て、山村さんに何かを相談したそうなのだが、その内容については僕は知らない。

「その3」 その2では「テレビが意外な活用のされ方をしている」、ということについて書いたが、実は森永さんには同じような体験がもうひとつある。

 ある年の年末に森永さんがテレビを見ていた時のことである。その番組では京都のお寺を紹介していた。森永さんはそのお寺に行ったことがあったので、「ああ、あのお寺だ」と思って見ていたそうである。

 すると森永さんの頭の中に声が聞こえてきた。それは「山村さんの所へ連れて行ってください」という意味の言葉だったのだが、その言葉使いが、普段は絶対に森永さんは使わないようなとてもていねいな言葉使いだったのだそうである。

 それは、その寺にまつられている、さる、高貴な身分の方の「意識」が言っていたのだった。森永さんはそのお寺に行ったことがあるので、それが誰だか知っていたのだが、日本史の教科書に出てくるくらいの人である。森永さんは、「今は年末なので、年が明けてからお連れします」と答えたそうである。

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