見廻り

「見廻り (1992年頃の話)」

 これは、僕の母の姉の旦那さん、つまり僕の義理の伯父さんが亡くなったときのことである。伯父は最後の一ヵ月程は病院で意識不明の状態が続いていたという。
 亡くなる一週間ほど前、伯母が道で会った人から「お宅の旦那さん、今日畑にいらっしゃいましたねえ」と言われた。しかし、伯父は病院で意識不明状態なのだから、きっと人違いだろうと思った。伯父は自宅の近くに畑を持っており、元気な頃は毎日のように草取りなどに出かけていたそうである。
 伯父の葬式のあと、伯母が畑の様子を見に行ったら、畑のすぐそばの家の人からも「何日か前に御主人様も来てましたよ」と言われた。その人は伯父が亡くなったことを知らなかったのだ。伯父がいつも乗っている自転車で来ていたから、見間違えではないという。「やっぱり畑が気になってたのかねえ」と伯母は言った。

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