社会保険って何?5つの分野について解説
こんにちは。
ファイナンシャルプランナーの道流と申します。
今回は社会保険ってそもそも何?という方へ向けて5つの分野の概要と給付について説明いたします。
毎月ビックリするくらいお給料から保険料を引かれているのですから、きちんと内容を把握していざと言う時に使えるようにしましょう!
日本には社会保障制度がある
日本には社会保障制度というものが確立されています。
病気、介護、失業などにより生活に困っている人を国や自治体が支援することにより、一定の生活水準を保つことができる制度のことです。
社会保障制度は以下の4つの柱により成り立っています。
社会保険
様々なリスクに備えて国民が保険料を出し合うことで生活の安定を図る制度
社会福祉
障がい者や母子家庭などの社会的弱者の人たちの生活をサポートする制度
公的扶助
生活に困窮する低所得者に対して最低限の生活を保障し、自立を支援する制度
公衆衛生
国民が健康的に生活できるように色々な事項について予防や衛生活動を行う制度
この柱により私たちが生活の危機に陥っても支援を受けることで、安定した生活を送ることができます。
社会保険は5つの分野に分けられる
社会保険は「医療保険」「年金保険」「介護保険」「雇用保険」「労災保険」の5つに分けられます。
生活を脅かすリスクは誰にでもありますが、1人の力で全てを賄うのは無理がありますよね。
そのため、「国民みんなでお金を出し合って支え合おう」という考えのもと、保険料を納付する必要があるのです。
では、5つの分野についてそれぞれ見ていきましょう。
医療保険
公的医療保険は大きく分けて「国民健康保険」「健康保険」「後期高齢者医療制度」の3種類があり、すべての国民がいずれかに加入する義務があります。
これを「国民皆保険制度」と言います。
公的医療保険の主な給付内容
・医療費の自己負担額が3割(年齢によって1~2割)になる
・医療費の自己負担額が一定の限度額を超えたときには「高額医療費制度」を使うことで、限度額を超えた分が支給される
・被保険者や被扶養者が出産した際に出産一時金が支給される
・被保険者や被扶養者が死亡した際に埋葬料が支給される
国民健康保険
対象者:75歳未満の自営業者、非正規労働者、未就業者など
被扶養者の概念が無い為、加入者全員が被保険者となります。
保険料は全額自己負担となり、所得額や住んでいる地域などによって異なります。
健康保険
対象者:会社員や公務員、一定の条件を満たす短時間労務者、被扶養者となる家族
短時間労務者(パートやアルバイト)の加入条件
・週の所定労働時間が20時間以上である
・雇用期間が2か月を超えることが見込まれる
・賃金の月額が8.8万円以上である
・学生ではない
・勤め先の従業員数が101名以上である(2024年10月から51人以上)
被扶養者になる条件は、同一生計親族ならば原則として「年収130万円未満」「被保険者の年間収入の2分の1以下」であることが必要です。
健康保険には「協会けんぽ」と「組合健保」の2種類があります。
中小企業が協会けんぽ、大企業が組合健保というイメージです。
保険料:標準報酬月額(4~6月の給料の平均額)×保険料率
賞与が入った場合は標準賞与額としてこちらも保険料の対象となります。
負担割合は協会けんぽが労使折半なのに対し、組合健保は50%以下であることが多いです。
病気や出産などにより仕事ができなくなったときには「傷病手当金」や「出産手当金」を支給してもらうことができます。
これは給与の代わりとして払われるものなので、国民健康保険には無い制度です。
後期高齢者医療制度
対象者:75歳になると全ての人
75歳になると全員が健康保険、国民健康保険の被保険者の資格を喪失し、後期高齢者医療制度の被保険者となります。
医療機関での自己負担額は1割となります(収入によっては2~3割)
保険料は所得額及び住んでいる地域によって異なります。
近年では日本の高齢化が加速している影響で保険料が段階的に引き上げられています。
年金保険
公的年金には「国民年金」と「厚生年金」があり、それぞれ「老齢給付」「障害給付」「遺族給付」の3つの給付があります。
3つの給付はザックリ言うと……。
老齢給付:65歳に達すると受け取れる
障害給付:病気やケガで障がい者になった際に受け取れる
遺族給付:被保険者が亡くなった際に遺族が受け取れる
年金制度は3階建ての建物に例えられることが多いです。
1階:国民年金
2階:厚生年金
3階:企業年金
国民年金
対象者:20歳以上60歳未満の全員
国民年金の被保険者は第1~3号まで区分され、納税義務が課されるのは第1号です。
第1号被保険者とは自営業者や学生など、後述する第2号、第3号に該当しない人が対象となります。
月々の保険料と老齢年金給付額は毎年異なります。
2024年の場合
保険料:1万6,980円
老齢給付(満額の場合):6万8,000円
保険料は増加傾向にあり、2025年は17,510円と2024年と比べ530円も増えています。
厚生年金
1階部分の国民年金に上乗せして払う形になるため、2階と表現されています。
対象者:国民年金第2号(会社員、公務員、一定の条件を満たす短時間労務者など)
勤務先が厚生年金の適用事業所であれば、最長で70歳になるまで加入することができます。
また、健康保険と同じ条件で短時間労務者も加入することができます。
保険料は「標準報酬月額×保険料率(現在は一律18.3%)」で計算され、賞与も対象となります。
負担割合は労使折半です。
年金受給額は「年収の高さ」と「加入年数の長さ」で決まるため満額はありません。
厚生労働省が公表する「令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると平均受給額(老齢基礎年金込み)は、
男性:16万3875円
女性:10万4878円
となっています。
第2号の被扶養者は第3号にあたります。
保険料の負担はありませんが、20歳以上60歳未満の年齢要件があります。
被保険者でいる間は国民年金保険料の納付済期間となります。
企業年金
公的年金(国民年金、厚生年金)と異なり、個人や企業が福利厚生として導入している私的年金制度です。
企業年金は大きく分けて「確定給付企業年金」と「確定拠出年金」の2つがあります。
確定給付企業年金
企業が掛け金を負担して運用し、従業員が受給開始年齢になったときに年金として給付します。
運用の結果にかかわらず受け取る金額はあらかじめ確定しています。
確定拠出年金
掛金はあらかじめ確定していますが、年金額は運用結果によって変わる年金です。
個人が掛金を拠出する個人型(iDeCo)と原則として事業主が拠出する企業型の2つがあります。
確定拠出年金は厚生年金の被扶養者のみならず第1号、第3号も加入することができますが、掛金の限度額は加入資格によって異なります。
介護保険
40歳になると強制的に加入される保険です。
保険料は生涯にわたり払い続けます。
介護保険の被保険者は第1号と第2号に分かます。
要支援・要介護認定された人は原則として費用を1割負担することで、介護サービス(介護予防サービス)を受けられます。
主なサービス内容
・在宅サービス(訪問介護など)
・地域密着型サービス(夜間対応型訪問介護など)
・施設サービス(特別養護老人ホームなど)
介護度は7段階に分かれ、階級により受けられるサービスが異なります。
例えば、特別養護老人ホームへの入所は要介護3以上の人のみが対象となります。
第1号
被保険者:65歳以上
給付を受けられる人:要支援・要介護と認定されている人
保険料:自治体により異なる(原則公的年金より特別徴収)
利用者負担:1割(所得により2~3割)
公的年金が年額18万円に満たない場合は天引きされず、納入書で支払う普通徴収となります。
第2号
被保険者:40歳~64歳
給付を受けられる人:加齢に起因する特別疾病により、要支援・要介護と認定されている人
保険料:健康保険料とまとめて特別徴収
利用者負担:1割
保険料は標準報酬月額及び各健康保険団体の保険料率により異なります。
自営業者・未就業者の場合は国民健康保険料に上乗せれる形で支払います。
雇用保険
労働者が失業したときや休職したときに給付金を支給したり、再就職をサポートするためなどの保険です。
加入条件
・1週間の所定労働時間が20時間以上
・31日以上の雇用見込みがある
・学生ではない(条件によっては加入可)
加入条件は正社員だけでなくパートやアルバイトにも適用されます。
保険料:毎月の給与総額×保険料率
標準報酬月額ではなく1か月ことに計算されるため、雇用保険料は毎月変動します。
保険料率は毎年4月に見直され、令和6年の一般事業の保険料率は6/1,000です。
主な給付内容
・基本手当:条件を満たした求職者へ支給(いわゆる失業手当)
・教育訓練給付者:条件を満たした教育訓練者へ受講費用の一部を支給
・育児休業給付金:条件を満たした育児休業者へ支給
・介護休業給付金:条件を満たした介護休業者へ給付
・高年齢雇用継続給付:60~64歳の労働者の賃金が60歳到達時点の75%未満の場合に支給
雇用保険の給付は他にもたくさんあり、こちらはその中の一部になります。
労災保険
業務災害、通勤災害などにより負傷、疾病、死亡した際に給付を受けられます。
加入条件:正社員、パート、アルバイトなど全てを含む労働者全員
保険料:全額事業主負担
労働者を1人でも雇用している事業所は適用事業所となります。
適用事業所に雇用されている労働者には加入義務があります。
主な給付内容
・療養補償給付:ケガ、病気にかかる治療費を支給
・休業補償給付:ケガや病気で休業した際、休業4日目から給付基礎日額の60%相当額を給付
・障害補償給付:ケガや病気が治った後に障害が残った際、年金か一時金を支給
・介護保障給付:介護が必要な状態かつ実際に介護を受けている際に給付
・遺族補償給付:死亡した際に遺族へ年金か一時金を支給
業務中のみならず通勤中も通勤災害と認められれば、給付を受けることができます。
まとめ:保障は手厚いが保険料上昇の問題もあり
今回は社会保険の5つの分野について説明しました。
医療保険:ケガや病気の治療に必要な費用を補償
年金保険:退職者、障がい者、遺族の生活を支援するために年金を支給
介護保険:高齢者や障がい者へ介護サービスの提供や費用の補助
雇用保険:失業や休業した労働者や再就職へ給付金を支給
労災保険:労働災害や通勤災害によってケガや病気を負った労働者へ給付金を支給
こうして見ると、意外と充実していますよね。
特に健康な人だと手当を受ける機会も少ないので、一方的に支払っている感覚に陥ってしまうのも無理はありません。
一方で保障が手厚いことに加え高齢化が進んでいることで給付の増加が進み、保険料負担の増加が問題となっています。
2024年の65歳以上の人が支払う介護保険料の全国平均は前期から3.5%増加の6,225円となり話題となりました。
進む高齢化と保険料負担の増加は現代社会の大きな問題ですね。
だからこそ、社会保険の保障内容を把握することでより多くの方が支援を受けられるようになれば嬉しいです。
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