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クレスト スタッフ・リレー④ 偏愛キム・ギドク by宣伝スタッフM

これまでの記事はこちら☛連載〈スタッフ・リレー〉

振り返ると私にとって映画は神だったように思います映画をやみくもに信仰しすぎて支配されていたと気づきました

これは韓国の鬼才(天才と呼びたい!)キム・ギドク監督が『嘆きのピエタ』のプロモーションで来日した時の言葉。

デビュー作『鰐』(96)以降、毎年新作を発表し続けてきたキム・ギドクが“失踪”したのは2008年。15作目『悲夢』撮影時の事故がきっかけでした。
現世を捨て山小屋で自給自足をおくっていたギドク氏が再び姿を見せたのは3年後。2011年のカンヌ映画祭で突然発表された『アリラン』が、クレストが配給した初のギドク作品となりました。

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アリラン』は山小屋☝でギドクが自らにカメラを向けたセルフ・ドキュメンタリー。
 製作・監督・脚本・撮影・録音・編集・音楽・美術:キム・ギドク

もちろん出演:キム・ギドクのみ。それも一人3役。一人目が泣きごとを並べると二人目が説教、三人目のギドクが突っ込みをいれ……。と思ったら幻の四人目も登場(?!)。当時、朝日新聞のレビューで映画評論家の柳下毅一郎さんは「ついには「自作」そのものをパロディー化し、思いがけぬフィクションに着地する。いかにもギドクらしいエンターテインメントに」と書いてくれました。『アリラン』制作はギドク復活のためのいわゆる儀式だったのかもしれません。監督自身が山小屋で描いた絵画も素晴らしく、パンフレットにも掲載しました。

そして、キム・ギドク復活を決定的なものにしたのが、18作目の作品『嘆きのピエタ』です!!!
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第69回ベネチア国際映画祭で、ポール・トーマス・アンダーソン監督『ザ・マスター』、北野武監督『アウトレイジ ビヨンド』を抑えて、金獅子賞を受賞! 当時、三大映画祭(カンヌ、ベネチア、ベルリン)の最高賞受賞は韓国映画初の快挙。母国にそっぽを向かれていたギドクの凱旋作となったのでした。

『嘆きのピエタ』ポスター、チラシ(表)JPG

『嘆きのピエタ』の舞台は、ソウルの高層ビル群と背中合わせの工場街。
“ピエタ”は十字架から降ろされたキリストを膝に抱く聖母マリアの図。世界で最も有名なミケランジェロのピエタ像(「サン・ピエトロのピエタ」)は、ミケランジェロが幼い時に他界した母を投影しているという説も。
つまりは母性、、なのですね。
ギドク監督がピエタを作ったのは、“暴力への怒り”がきっかけだったとか。
「世間にあふれる暴力事件を目にするたび、暴力を振るう人には母親がいないのだろうかと思っていた。そこが出発点です――」

これまでにクレストで配給したギドク作品は、『アリラン』『嘆きのピエタ』、そして朝鮮半島の分断問題にダイレクトに切り込んだ『The NET 網に囚われた男』。
めくるめく展開と設定の面白さ、情熱、なによりギドクにしか作り出せないと思わせる強烈な説得力。
映画の激しさに反して、プロモーションでお会いするギドク監督本人は、とても穏やかで聡明で、気遣いの方です。時間に遅れてスタッフをハラハラさせる、なんてことは一度もなくて人は見かけによらないなぁと。

ギドク監督来日写真

世を捨てての山ごもりから、金獅子受賞というド派手なカムバック!
やはり私たちはギドクガールズをやめられないのです。



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