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〜山と人がともにある社会をつくる〜webマガジンNo.2 【前編】 岡山県 英田郡 西粟倉村 株式会社百森代表中井照太郎さんインタビュー

ひとえにまちづくり、地方創生、むらおこしとはいっても様々な関わり方があると思います。それは、一個人であったり、役場であったり、会社であったり…。はたまたその人は、地方創生に貢献しているという認識すらないのかもしれません。何か行動を起こそうと思っても何をしていいのかわからない。横断する分野が広すぎる、この地方創生という分野ではそう感じる人も多いのではないでしょうか。
 しかし私は、「それは発想を変えれば、なにをしても地方創生になるのでは?」そんな気がしてしまったのです。地方創生とは、誰か一人があれやこれやと頑張ってどうにかなるものではなく、いろんな人の関わり合いの中の相互作用、相乗効果で徐々に進んでいくものではないでしょうか。
 なので私は、地域人口の減少に歯止めのかからぬこの時代に、若者やベンチャー企業の数を伸ばしている西粟倉村を地方創生の先進的な事例としてとりあげ、現地で活躍されている方々の活動、そこに至るまでの経緯などをご紹介いたします。
 
今回は「山と人がともにある社会をつくる」という理念を掲げる株式会社百森。百年の森構想という林業を通した、上質な森づくり、田舎作りを村全体の大きなビジョンとして掲げる西粟倉村でまさにその林業の部分を担う会社です。今回は、そんな株式会社百森の代表の一人中井照太郎さんにお話を伺いました。

林業の課題と百森

- 株式会社百森さんは林業に携わる会社とお聞きしました。

はい。林業の課題ってご存知ですか?

- あとつぎが育たないとかですか?

いえ、日本は森林がものすごく多い国なんですよ。昔林業に携わっていた人が引退してそのまま放置していたりするんです。儲からなくなっていて、昔は儲かったんですけど。林業従事者がものすごい減っている。最近ではバイオマスとか木を燃やして発電ができるようになっていたりなかなかそういうことをするのに貸せないというところが多いんです。


- そうなんですね。そもそも百森という会社は何をしている会社なのでしょうか。

村内には4000haくらいの森林があるけれど、そのうちの2500haほどを個人の方から委託していただいて管理しています。

- 他の森林管理会社と違うところというのはどこなのでしょうか。

林業というのは木を切って丸太を製材所などに売る仕事なのですが、僕らは木を切らないんですよ。管理のみをするという珍しい会社なんです。これをやっているのはおそらく日本でここだけで、みなさん大体、木を切る仕事をしてるんです。林業っていうのはそもそも木をきる仕事なのであたり前なんですけどね。(笑)

うちはなぜそれをやっていないのかというと、さっき言ったように今、木がものすごい育ってそれが放置されているって状態があるので。みんな小さくバラバラバラと個別に所有していて、林業って本当はまとめて大きな面積でやらないと、大きな重機を入れてやるので、経済性が悪いんですよ。まとめてやりたいんだけどできなくて。それが今林業を阻害している要因になっているんです。
じゃあどうやるかって言ったら、その細々している人たちを集めて自分で持っている土地を預けてもらって大きな面積にするということをしなくちゃいけなくて、僕はそれを専門にやっていますね。それは全国的な課題なんですけど、今までなかなかそういう仕事ってなかったんです。

森林組合って聞いたことあります?

- そう言えば通りがけに一件見かけました。

そう、あれが全国にはいっぱいあって、そこが本来はそうした仕事をしなければいけないのだけれど、みんな木をきる仕事を始めてしまっていて、ぶっちゃけ大きな面積を持ってる山主さんのところに頼んで木を切らしてもらうのが一番儲かるんですよ。みんなそれしかやってなくて、その結果小さい面積のところが残っちゃっていて、それが今放置されてしまっているという現状につながっているのです。そのような背景から、今僕らは管理することを専門でやっていて、それでまとめて、重機を持っている会社さんにここを切ってくださいという感じでお願いしています。


- ではその森林の元々の持ち主の方というのは何か利益を得ているのでしょうか?

そうですね、もともと山の土地をもっていて、木はもう諦めていたのだけど、ここ昔おじいちゃんが植えてくれた。でも持っていてもしょうがないというケース。あと、そもそも持っていたこと自体を知らなかったとか、おじいちゃんが自分で植えたのをまだ持っていたりだとか。ほんとお小遣い程度ですが、そういった土地をお借りして木を切って出た利益が元々の持ち主に入るような仕組みになっています。

西粟倉村にきたきっかけとその生活

- 日本の村社会は閉鎖的と言われがちですが、移住者としてずっと現地に住んでいたかだがたとわだかまりがあったりする方もいらっしゃるのでしょうか?

あー、あるひともいますね。でもそんなにみんな気にしないかもしれないです。あって当然だとは思います。もちろんない人もいます。

- やはり人それぞれということなのでしょうか。

そうですね。でも比較的この村は外の人に対してあまり壁を持たないって言われていますね。それも、もともとこの辺が、宿場町ということもあり人や物の流通が盛んだったので、歴史的に見てもそういった外の人を受け入れることに対しての違和感だったり、壁を作る感じはないのかもしれないとは言われています。


- 今はもう昔ながらの宿場というのは残っていないのですよね?

隣町には昔の古い町並みも残っていたりするんですけどこの村の中はあまりないと思います。

- この村でこの会社を立てようと思った時のきっかけは何ですか?

東京でサラリーマンをしていたのだけど、何か少し変わったことがしたいなと思ってたまたま見つけたのがローカルベンチャースクール(*1)でした。もともと林業をやろうと思っていて林業の仕事を探していたらローカルベンチャースクールでその分野で課題が出ていて、その中に森林の課題を解決してくれる人を募集している、と出ていたので、じゃあやってみようかなと。


- 自分がこの村を知ったのはまちづくりとか村おこしという観点からだったのですが、中井さんは違うのですね。

はい、全然違いましたね。自分は林業からです。


- ローカルベンチャースクールは金銭面での補助と、メンターによる補助があるときいています。支援の中で一番良かったことはなんでしたか?


あー僕らは、ほとんど役場付だったので、支援は受けていないですね。だからあまり支援はなかったと思います。


- メンターの支援のようなものもなかったですか?

そうですね、なかったです。

- 自分が考えた企画を持っていったというよりは元々あったプロジェクトに乗っかったという感じなんですね。

はい、自分はやはりもともと林業をやりたかったので、そこでたまたま、ローカルベンチャースクールがあったのでそこに乗っかりました。

- 移住して起業している人同士のコミュニティというかネットワークのようなものがあったりするんでしょうか?

あー、この村は人の出入りがとても多いので、人との出会いという意味ではとても面白いと思いますね。エーゼロ(*2)の方でもローカルモーカル研究会(*3)っていうイベントをやってたりもしますし、そこでなくても元湯っていうゲストハウスがあってそこに行くと大体なんか誰かがいて、そこで紹介されるとかもありますしね。そういうパターンが結構多いです。


- 田舎に長く住んでいると都会に戻りたいなという思いは出てきたりしないのでしょうか。

そうですね、でも僕なんかは少なくとも月一では仕事で都会に行っているので、あまりそういうのは感じないかもしれないです。しかも、4月からは東京に戻って、百森東京支部を作る予定でもうそこに移動なので。
それも、この西粟倉のモデルをどんどん他の自治体にも広げていこうとおもっています。

次週は、「日本の林業に一石を投じる中井さんがこの道を選んだわけ」
「西粟倉村と他の村では何が違うのか?」についてお送りします。お楽しみに!

この記事を書いた人・取材した人

桝田 康太(ますだ こうた)東京生まれ東京育ちの江戸っ子。あだ名はマス公。
都立小山台高校を卒業後大学へは行かず、独学でプログラミング、心の健康、日本の地域社会などについて勉強中。
不意に感じた田舎、日本の原風景への憧れをこじらせ、どうしたら都会と田舎の垣根を取り払えるか。お互い地域のいいとこ取りをできないものかと模索中。

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