見出し画像

絵が上手い上手くないなんて価値基準に囚われすぎていたどうしようもない日々よ

かつて、絵を描く前から、描き始めの数年間も数えて私の大部分を占めていた価値観。
「絵が上手いかどうか」
もちろん、これのみを指針として絵を見てきたわけではないし、上手い上手くないを正確に把握する目を持っていたわけでも(現在含め)ない。
絵が上手いとはどういうことかについて考え出すと、一大論争に発展するので、ここでは単に、「綺麗に見せる、技術が優れている」くらいの意味としておく。
それが、少しずつだったが揺らぎ始めてから1年が経つ。

とっても素敵な絵を描かれる人が沢山いる。ネット上だけじゃない。例えば今住んでいる地域にも、例えば同じデスクの、ほんとに身近な場所にもいたときさえある。

少しインターネットを見渡すと、果てない修練の上に聳え立つような、鬼のように上手な絵が、しかしそれこそごろごろ転がっていて、意図せずともはっと息を呑まされる瞬間が多々ある。

その人たちの上手さを否定する気はない。賞賛の声をあげさえしても決して石を投げる気はしない。
絵を描くということの楽しさ、そして大変さは私ですら感じるからだ。

そんな時代の中、我々は絵を描いている。
私が描かなくても、上手い人は山ほどいて。そんな卑屈な気持ちになることも少なくない。嫉妬で狂いそうになる夜もある。
そんな時代の中、我々は絵を描いているのだ。

話が逸れた。
言葉選びが難しいが、そんな鬼のような神のような卓越した技術が、「うまさ」がなくとも、私を感動させてくれる絵に出会ったことがある。
それも何度もだ。
とっても素敵な絵。すごく「良い絵」との出会いはあの頃の未熟な思考の私の心を激しく揺さぶった。
ただがむしゃらに上手さだけを求めていた私の心を強く打った。

何か伝えたいことがあったか。見せたいこだわりがあったか。はたまた私の心を代弁してくれるような。
それから私はいろんな人の絵を見るのが大好きになった。

みんな、絵のことについて少し話しただけでも、本当にたくさんのことを知っていて。真剣にやってますって人も、適当にやってますってスタンスの人でさえ、自分の想像していた倍以上は考え向き合っている。
ちょっとくらい頑張って、ちょっとくらい絵が描けるようになってきて、何かがわかるようになった気がして、少し天狗になっていたらしい。自分が恥ずかしい。

そう、描き手と話すたびに実感する。


世界観、設定、コンセプト、こだわり、見せたいもの。
どう見せるか、何を見せるか。なにをしたいか、伝えたいか。どこを大事にしているのか。
情熱、楽しんでいる空気感、根気強さ、好きの気持ち。
絵を良くする条件は沢山あって、絵が上手いかどうかはその内の評価基準のひとつでしかない。

絵を描いてる人の絵の良いところを汲み取れるようになりたい。
頑張りや積み上げた技術をしっかり見たい。向き合った世界を見れるようになりたい。

でもそうなるには自分の目を鍛えることが必須で、そのために一番の方法は自分が挑戦し、観察し、そしてひとつひとつの絵に真摯に向き合うこと。

上手い絵が飽和しそうな時代の中、私は私の世界をしっかりと見定め、向き合っていきたい。また、人の世界を、少しずつ覗かせていただきたい。
こんな時代に絵を描く大変さも、楽しさも、苦しさも、私も少しくらい気がついている、と思う。
創作者はみな、色々なことと悩み戦っているのだろう。みんな偉いんだ。願わくば楽しく創作してほしい。どうか。


ここまで言っておいて、それでも私には絵が上手くなりたい理由がある。
ひとつは、それでも私が見たい絵を描くには私にはまだ画力が足りていないと思うからだ。
上手い下手は確かに全てではない。けれど、一部であることもまた確かだ。そして、まだまだ克服できる自分の弱点である。
私の見せたいものを表現するには、もう少し画力が必要だという実感はある。
ふたつに、上手くなるということは楽しいし、刺激であるということだ。
新しい挑戦をする。新しい実験を、違う方法を探す。アプローチを考え変えてみる。そんなプロセス面でも、また、単純に過去の絵と比べて技術面での成長は目にわかりやすい。
そんな刺激ひとつひとつが、私を絵に繋ぎ止める要素の一つであることは間違いない。
その部分をバッサリ切る覚悟は私にはない。

私の大切にしたいものに向き合いたい。
みんなの大切にしたいものが知りたい。

上手さなんていいからみんな創作しよ。

見せてよ。

見たいよ。

それで、お話ししたい、聞きたいな。なにを描くのが好きとか、どういうことが好きとか。好きなものの話。

いろんな価値観に触れたい。
傲慢にならないように、天狗にならないように。でも、少しずつ自信を持っていけたらいいな。
自信をもって、これが好き! って表現ができるように。

きっと技術は、後からついてくる。今はそう信じてる。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?