引っ越しあれこれ
いまの家から引っ越したいと思った理由が3つ。
ひとつは周辺の道が平坦でなく、坂が急すぎること。これが理由で特に炎天下の日など、友だちを呼びづらい。
もうひとつは冬が寒すぎること。
家には窓が多いので、明るいし風通しもいいのだけど、冬はその窓を通してひえひえの空気が伝わってきてつらい。寝室にしている部屋は2面が全面ガラス張りで、1面はシャッターを閉め切りにしているけれどそれでも寒い。
断熱シートなど工夫すればあたたかくなるかもと思ったけれど、結露やカビも不安だしそもそもDIYが性に合わないので諦めた。
あともうひとつは、駅が近くて電車の音が若干気になること。
わたしは時が経つにつれて慣れたけれど、夫は始発の時間に目が覚めてしまったりするらしい。
リモートワークメインになり、駅に近いこともさほどメリットではなくなった。
これらが理由で2年ほど前からなんとなく引っ越したいと思っていた。
上記3つの問題を解決できて、夫もわたしもいいなと思う間取りで、できればきれいな川の近くに住みたい。予算内で。
家の価格とは実に巧妙に設定されているもので、今の家と同じ価格帯で今より良いと思える物件はなかなか無い。そして「いいな」と思う物件は皆同じように感じるようで、数日以内に広告が消えるか、問い合わせをしても釣り物件だったりした。
特に希望していた奈良市内は空き家率も3パーセントほどで、前の住人が入居中に次が決まることがほとんどだと言う。実際、いつも広告に出てくる予算内の物件はプロパンガスだったり、築40-50年などが多く、あながちセールストークだけでもないと思う。
そのような状況で半ば家探しを諦めた頃、貴船神社に行く機会があった。
有名な水みくじを引いてみたところ大吉で、「転居 よろし 早くすべし」と書かれていた。
大吉なのに焦らされているような妙な気分になり、「奈良 二人暮らし ○万円」と久々に検索窓にキーワードを打ってみた。
そこで現れた物件の間取りが理想的で、予算を少しだけオーバーするもののインターネット使用料込みだという。早速夫にLINEを送ったところ、「おもしろい」と返信。そのまま不動産会社に連絡し、翌日には引っ越しを決めてしまった。
勢いで即決したもののまだ入居中で家の中が見れない状況だったこと、家の周辺に自然が見当たらなかったことから後日不安になり、夫と二人で改めて家を見に行った。
夫は別の日にも周辺を散歩していたようで、「こっちに川があるはず」と家の前の道をどんどん歩いて行った。すると桜で有名な佐保川がちょろちょろと流れていて、わたしが思い描いていたような緑の木がたくさん川辺に生えていた。生い茂った木の葉が屋根になってくれて、真夏でも少し涼しい。
「ここで間違いなかった。よかった」と一方的に宣言すると、夫が「こっちに図書館があるよ」とまた歩きはじめた。
少し歩くと、奈良で一番充実していてイベントなども盛んに開かれている図書館(SNSでイベントを見かけては「いいな、でもちょっと遠いな」と思っていた)が目の前に現れた。
興奮してしまい、その日は図書館の中でゆっくり座ることはできなかった。
ささっと何があるか確認したところ、英語だけでなくフランス語やドイツ語など世界の新聞があり、書店で見かけないような英文学の専門書なども充実している。
そして大きな窓から見えるのは青々とした若草山。
このあたりの人は、無料でこの施設を利用できるのか…と羨望の気持ちがわいてきた。この場所のためになら住民税を払ってもいいと素直に思えた。
周辺には音楽ホールもあり、中に入ると近所の人がベンチに座って涼んでいたり、学生がダンスの練習をしていたり。
いまの家の周辺でぶらぶらできる場所が少ない、とぼやいていたけれど、この件も解決しそうだ。
まだ内覧をできていないので100%確かではないけれど、引っ越すことで人生がおもしろい方向に転がりそうな気がしている。
家賃は少し上がるが、かならず帳尻が合うような。
夫と話していたのは「開かれた、たくさん人が遊びにくる家にしたい」ということ。そして今より広くなる分、クリエイティブな活動にも力を入れたい。新しい場所と自分という個体のシナジー効果もたのしみにしたい。
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