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はかないふたつぼし

でんちゃんは
なにかをかくしてる

ぼくたちはしんゆうだから
かくすことなんて
なにもないよ

そういってくれたのに

かくしてるんだ
なにかを

さいしょぼくは
かくしごとをされるのが
いやだった

かくさないで

おもっただけじゃ
つたわらないから

かくさないで

あるひおもいきって
そういってみた

なにもかくしてないよ
どうしてそんなこというの
でんちゃんはそういったんだ

とぼけてやがる
こんちくしょう

かくしてるじゃないか

ぼくはこころのなかで
いいかえした

だいじにかくしてる
わからないようにかくしてる

そんなにかくしたいなにか
ぜったいあばいてやる

それからしばらくして
かくしてるばしょと
それをかくしてるものを
みつけた

はいてたんだ
じつははいてかくしてる
くろいさんかくのもので

ぼくはさいしょ
そのくろいさんかくが
とてもいやだった

だってそのくろいさんかくが
でんちゃんからぼくを
とおざけてるきがしたから

いやだいやだと
おもいつづけた

しばらくしたら
ほしくなってきた

そのくろいさんかくが
ほしくなってきた

あるひ
ぼくはついに
そのくろいさんかくを
うばうことにせいこうした

でんちゃんはきづかない

でんちゃんはそういうひとだ

ぼくはとくいになって
くろいさんかくはこっちだよ
うばったことをせんげんした

だけどさすがだな
でんちゃん

まだはいてたんだ
くろいさんかくを

あんしんしてください
もういちまいはいてますから

たしかにあんしんした
ぼくもすこしふあんだったから

でんちゃんのひみつが
みんなにみられてしまう

それがしんゆうである
ぼくによってなされる

それがしんゆうのすることか

こころのなか
ぼくのこころのなかのだれか
おしえてくれた

すこしこうかいしてた

だからこれでよかったんだ

ぼくはくろいさんかくを
どこかにやってしまい
もうぜんぶわすれることにした

ところが
そのすうじつご

ふたたびちゃんすが
いやじつはぴんちなのだが
それがおとずれた

なんとまさかのしずごんが
くろいさんかくを
うばってきたんだ
さいごのいちまいのはずだ

しずごんはぼくがその
くろいさんかくを
ほしがっていたのを
おぼえててくれたんだ

ぼくはびっくりすると
どうじにまたもや
むらむらとしたきもちが
わいてきた

こんどこそ
ひみつをあばいてやる

ぼくはとてもわるいやつだ
そしていじわるだ

だけどなかよくなりたい

ひみつをあばくことは
わるいことじゃない

それでぼくとでんちゃんが
さらになかよくなれるから

そんなずるいいいわけを
ぐるぐるかんがえながら

それはこうきしんだったんだ
ほんのできごころだったんだ

おどろいたことに
でんちゃんはそれでも
あまりきにしてないようだ
あんしんしきっている

だってまさかそんなことが
おこるなんて
おもってもないみたいだ

だけどげんじつはざんこくだ

くろいさんかくは
うばわれてもろみえだ

ぼくはしょうげきをうけた

あんなにみたかったものが
じつはこれだったなんて
こんなすがただったなんて

なんだかかなしくて
せつなくてもうしわけなくて

でんちゃんはふつうにしてる

あんなにこだわっていた
くろいさんかくのにまいめ
なくてもあたりまえみたいだ

でんちゃんはそういうひとだ
そういうところもすきだ

やはりぼくがまちがっていた

ぼくはわるいやつだ
さいていでいじわるなやつだ

さいしょからでんちゃんは
かくしてなんかなかった

むしろぼくのほうが
かくしていたくらいだ
そしてまだかくしている

むだづかいをしちゃだめだよ

でんちゃんはそういった
わらってそういった

でんちゃんはわかっていた
わかっていたんだ

やさしすぎるそのやさしさが
ぼくのこころをかきむしる

そうだそうなんだ

でんちゃんははじめから
わかっていたんだ

ぼくがうたがっていること
ぼくがでんちゃんから
うばおうとしていること

わかったうえで
そうさせてくれたんだ

なぜかってそれは
しんゆうだから

しんゆうだからかくさないし
わざとくれたんだ

ぼくがばかだった
ぼくがおろかだったんだ

ぼくももうかくさない
やっとわかったんだ

これからはぼくも
かくさない

もうなにもはかない

そうしてふたりは
ほしになりました

ひっそりとなかよくかがやく
ふたつならんだほし

ふたりはとうとうつかまって
どこかとおくへ
つれていかれたのでした

そりゃそうです
なにもはいてないのですから

とおくへつれていかれた
そのあとは
だれもしるよしもない

そうしていつしか
ふたりはほしになったのです

ひとはそのふたつのほしを

はかないふたつぼし

そうよぶようになりました

だれかとなかよくなりたい
そのふたつのほしに
つよくねがうとかなう

いつしかそのように
いわれるようになりました

そのふたつのほしをみるとき

ひとはみんな
うまれたままのすがたに
なります

かくすことはなにもないし
かくすひつようがないからです

さぁあなたも
よぞらをみあげてごらんなさい

すべてをさらけだしたなら

うまれたままのすがた
うまれたままのこころ
さらけだしたなら

はかないふたつのほしが
あなたにもみえるかも
しれません

おしまい


※ついき※
るいせんほうかいまちがいなし



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