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哲学の視点から紐解くデザインとリーダー像

こんにちは。

2020年4月より
武蔵野美術大学 大学院 造形構想研究科 造形構想専攻クリエイティブリーダシップコースに通っています。

私の学科では「クリエイティブリーダーシップ持論」という授業があり、
毎週クリエイティブとビジネスを活用して実際に活躍されているゲスト講師をお招きし、お話を伺います。

あくまで講義のレポートではありますが、デザイン思考などを学び、実践している方々との繋がりや、情報の共有が少しでもできれば嬉しいなと思います。

武蔵野美術大学 大学院造形構想研究科 クリエイティブリーダシップコース クリエイティブリーダシップ特論 第6回【講義日】2020年6月22日(月)


九州大学大学院芸術工学研究院にて教授を務めている
古賀徹(こが とおる)さんにお話を伺いました。

九州大学大学院芸術工学研究院教授。専門は哲学。
教育としては、環境倫理学、デザイン論購読、メディア論などを中心とした講義や演習を行い、非常勤講師として古代哲学史、近代哲学史、美学史、倫理学などの講義を行っている。


今回の講義は「ポストインダストリアル時代のデザイン思考とリーダーシップ」と言う題でお話いただきました。

工業化時代において、機械により生産性を上げ、精密な市場調査から、売れるものを効率的に生産するかを追求しました。精密に追求すればするほど無駄がなくなり、それが故に合理主義的な世界では新しいものを生み出せなくなりました。

つまらない物作りの連続となったわけですよね。
これは今の物作りにも通ずる面が大きくあると思います。結果いかに早く作れるか、安く仕上げられるかが重要視される様になってしまいます。


デザインの有機性

合理主義的な世界で新しいものを生み出せなくなった為デザインの思考を変える必要が出てきました。

ここで重要になるが、デザインの有機性です。

有機的】運動の原因が個物の内部にある
【機械的】運動の原因が個物の外部にある

工業化によって陥った状態から抜け出すためには、以前の有機的なデザイン思考に立ち返ることが必要であることが分かりました。


立ち返るために必要なのは「構想する力」とのこと。この構想について古賀さんが2つの言葉からご紹介くださいました。


構想とは

ものごとを具体化する「構想」について2つの言葉から見ることが出来ます。
一つが「design」であり、もう一つが「engineering」です。

design
1500年代にVasari(ヴァサーリ)によって論じられたイタリア語の「ディゼーニョ(designo)」という言葉。デザインの語源です。

「ディゼーニョ」は、
自身の内的自然(魂・概念)→ 身体(手)→外的自然(作品)

の流れで行います。見たままを作品化するのではなく、作品を見ている人の視点を想像し、最も美しい形で表現することによって、実態以上の感動が与えられます。
一方、鑑賞者たちは反対に、
外的自然(作品)→ 身体(目)→ 内的自然(魂・概念)が動くことになります。

つまり、前者の構想という行為は有機的であり、後者の観察という行為は機械的な流れとなります。

 

ingegno
2つ目に、1600年代後半にVico(ヴィーコ)によって論じられた「インジェーニョ(ingegno)」という言葉を紐解きます。ingegneoとは、人間の内発的な創造性と絡んで生み出されるものであると示されていました。
アリストテレスの三段論法を用いて「ソクラテスは死ぬのか?」という命題を提示します。

ソクラテスは(  )である  <小命題>
(    )はみな死ぬ    <大命題>
したがって、ソクラテスは死ぬ <中命題>

ヴィーコによると、ここで(   )に当てはまるものが人間であると答えられることが、「インジェーニョ」だといいます。つまりは、遠く離れた異なる事象の間に、結びつけるなんらかの関係性を見出す力といえます。
身体を動かして、見方を変えて、思いもよらなかった解決操作を見いだします。
手を動かし、議論することの重要性がよく分かります。



ふたつのリーダーシップ

このような有機的・機械的な思考方の変遷はときに、創造する人々自体、指導者のあり方にも変化をもたらすと示されていました。

リーダーのあり方として、CriticaとTopicaという2つの概念をご説明くださりました。
Critica型のリーダーは、知性優位で批評的です。目標へ向かってメンバーや工程を管理することが長けているリーダー像を示します。

一方、Topica型のリーダーとは、状況を全体的に理解した上で、問題を解決しうる鍵を提示するようなリーダー像を指します。状況を全体的に理解して、鍵を探る。それは料理の塩加減みたいなもので、絶対的な正解はありません。リーダーシップというよりも、最適な助力ができる人材とも言えます。

Criticaのリーダーはイライラしているのに対し、Topicaのリーダーは常に機嫌よくしておくことが重要と示されていました。


まとめ

デザインを哲学の視点から考えることは初めての経験でした。物作りへの環境の変化を学ぶことで、漠然と感じていたモヤモヤが整理された様に感じました。
また、Topica型のリーダーはまさに今の時代に求められている人材だと改めて実感しました。トップが全てを決定するという概念ではなく、それぞれが生き生きと仕事に取り組める様な体制づくりをできる人材こそこれから必要だと学びました。




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