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ワガママな睡眠
ベランダの手すりと戸袋を打つ雨音が深い沼の中で響く
抜け出そうにもその術を持たない今はベッドに沈んでいく
まどろみに身を任すことしか出来なかった
薄暗い空間に繰り替えし雨粒が弾ける音だけが転がっていく
夢を見たようなそれともそう思っている今が夢なのか
目覚めと夢の中を何度も行き来したせいでその境界が曖昧になっていた
どのくらいの時間が経ったのかも分からない
ただ欲望を貪りその快感に身を任せている今がただひたすらに愉快だった
日差しで遮ることもない雨空がそれを許しているようで
窓の向こうで荒れている天候が何故だか優しく思えた
それに甘えるように再び堕落のぬかるみへ足を踏み入れる
空間に空いた穴に真っ逆さまに落ちていく意識が
どこまでも深く落ち続けてやっと底に着いた頃に
ベッドに舞い戻った意識は打ちつける雨の合唱が
すでに鳴り止んでいることを捉えていた
カーテンの向こうが明るくなっている
涙を枯らした空はすっきりとしていて
抜けるような晴れ間を見せていた
草木の間からキラキラと煌めく夕日がダイヤのようで
人の手では作り出せないそのオレンジが眩しかった
底なしの沼から抜け出したところで1日の終わりが
もうそこまで迎えに来ていた
それでもそんなことは全く気にならない程に体は軽かった
深く沈んだ暗闇の中で毒を抜き切った身体が吸った雨上がりの空気は
肺の中で生命の香りを充満させていた
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