ありがとうをありがとう。

「ありがとう」と言ったときに
「ありがとうって言ってくれてありがとう」
と返ってくることが苦手だった。

「ご飯ありがとう！美味しかったよ！」と言って
「こちらこそ食べてくれてありがとう」
と返ってくることが苦手だった。

心の底からそう思ってくれて
私のことを真っ直ぐ見つめて満面の笑みで
「ありがとう」と言ってくれるものだから。
綺麗すぎて眩しすぎて
私の「ありがとう」が宙に浮いて迷子に
なってしまうような感覚があった。

好きなんだけど、大好きなんだけど
その心があまりにも綺麗で
自分が劣って見えるから少し苦手だった。

あまりにも真っ直ぐなその「ありがとう」と「大好き」にいつの間にか甘えさせてもらっていた。
大袈裟なくらいに伝えてくれる「ありがとう」にたくさん救われた。

友達になって3年目のお誕生日。
「ありがとう」を伝えたくて、「ありがとう」を返したくて彼女のお誕生日の準備をした。

別に料理が上手なわけじゃないし
手先が器用な訳でもないけど
これまで以上に伝えたくて、伝わってほしかった。

不思議なもので。
お手紙を書いても「ありがとう」以上が出てこない。
普段こんなふうに言葉を綴ることができるのに
「いつもありがとう」「大好き」
「これからもよろしくね」
気付いたらこればっかりなんだ。
それ以上ないの。これ以外ないの。

手紙も料理もケーキもとてもこじんまりしてたから
伝わるのかなあ、なんて思いながら。

部屋に入った瞬間の「わあ…！」って横顔。
「可愛い〜！すごい〜！嬉しい〜！！！」
「なにこれえ？！すごい！！わあああ！！」

1口1口食べるごとに
「おいしい！」「ハートだ！愛感じる〜！」
「これも美味しいよ〜〜〜！」ってニコニコして。

「あ〜幸せだな。生きてて良かったあ」

「本当に嬉しい…」

って噛み締めてくれて。

お手紙読みながら「うんうん」「私もありがとう〜！」「私も大好きだよ〜！！！」って私の気持ちとお話したり。

プレゼントに渡したカバンを肩にかけながら「一生使うね！！！」って笑ってくれる彼女を見て本当に一生使ってくれるんだろうなあって思ったり。

相変わらず真っ直ぐに
私のこと大好きなんだろうなって笑顔で
「ありがとう！」って何度も言う彼女を見て
思わず出た言葉は

「ありがとうって言ってくれてありがとう。」