見出し画像

フィルム写真の何がいいのか

こんにちは。noteを始めて8年のようで、ほとんど記事は書いていないんですが、久々に投稿してみます。

creamu Inc.(株式会社クリーム)という会社を経営していまして、11期目になります。アートディレクター・デザイナー・フォトグラファーとして活動しています。アートディレクションもデザインも、写真が重要な要素になるため、近年では写真に力を入れています。
https://www.creamu.co.jp/

フィルム写真が流行ですよね。デジタルでシャッターを押せば撮れる時代に、あえてアナログを選ぶ。そこには確実に、何かがあるんだろうと思います。

画像2

フィルムは粒子

僕は、フィルム写真の良さは、「フィルム = 粒子」、粒子の集まりが、デジタルには描けない「損なわれた絵」を描き出し、感性を刺激することだと思っています。

フィルム写真は、銀塩写真と言われるように、フィルムに含まれている銀が、薬品である現像液によって化学変化を起こし、ネガの像を浮かび上がらせます。

上の写真は、初めて手に入れたフィルムカメラ、ニコン New FM2で撮った写真。デジタルで撮った写真とは全く違う、鮮やかでない損なわれた色、粒子感、ざらつきに感動したのを覚えています。

粒子は丸い

粒子は、感覚としては丸い。フィルム写真を見ると、小さな点の集まりによって、写真が構成されています。極細の筆で、点描したように、細かい粒子が集まっています。しかも、それが不揃いである。規則性のないランダムな粒子が、色を描いています。

逆にデジタルは、ドットの集合です。解像度はどんどん高くなるので細かくなりますが、感覚としては四角い。デジタル写真を見るのは基本的にモニターなので、モニターの構成単位はピクセルです。1ピクセルの集合がデジタル写真。0と1の集合体、情報があるかないか、どんな色の情報があるかの集合で、デジタル写真ができあがっています。

つまり、アナログ写真とデジタル写真は、感覚的に丸いか四角いか、粒子が不揃いか不揃いでないかという決定的な違いがあります。

ノイズさえ美しい

フィルムは粒子の集まりなので、ピクセルの集まりであるデジタルとは感じ方が違います。そして、不揃いな粒子の集まりであるフィルム写真は、ノイズさえ美しい。点々で描画されたざらつきが、心までざわつかせてきます。mp3のデータで音楽が聞ける今、アナログのレコードの価値にも通じます。

逆に、デジタル写真のノイズは基本的には汚い。というより、最新のデジカメはノイズが出にくい(少ない)。デジカメでもフィルムっぽく撮りたいときにおすすめなのは、各社のデジタルカメラ初代に近いカメラです。僕が使っているライカM8は、ライカ初めてのデジタルカメラ。かなり気合を入れて作られたことを感じるカメラなんですが、ノイズが美しいんですね。ISO640あたりが限度、1250にすると汚いと感じるんですが、ISO640でシャッタースピード1/30でf1.4かf2でギリギリ暗い場所で撮って、Lightroomで露出を上げてみると、すごく綺麗なノイズが出てきます。

画像1

Leica M8 + Summar 50mm f2で撮った写真。ISO640 / f2。フィルムライクな美しいざらついたノイズが出ました。

フィルムのノイズは心地いいカラーノイズ

フィルム時代は、ISO400で高感度と言われ、ISO400のフィルムは高感度フィルムなんですが、暗いところで撮るといいノイズが出てきます。美しい粒子の集まり、心地いいカラーノイズなんですね。デジタルではこうはいかない。色が揃いすぎていて、Lightroomなどで露出を上げると汚く感じる。

フィルムカメラを使えば写真が上達する

フィルムカメラを使えば写真は上達します。写真は、 ISO・絞り・シャッタースピードの3つを設定して撮ります。逆に言うと、その3つを適切に設定しないと本来ちゃんと撮れない。でも今のデジカメは、プログラムオートでシャッターを押せば写真が撮れてしまいます。これは、速写性/一瞬を逃さないという意味ではとても価値があります。しかし、一枚一枚作品性を持って、気持ちを込めて撮る場合、オートではいけない。絞り優先モードでも。その他の2つ、ISOとシャッタースピードはカメラ任せなわけです。撮れるけど、本当に意図したようには撮れない。

フィルムはISOありき

フィルムは、ISO・絞り・シャッタースピードの3つの要素のうち、フィルムを装填した時点でISOが決まっています。ISO100のフィルムを入れるのか、ISO400のフィルムを入れるのかで、100で日中外でなるべく開放で撮りたいのか、室内/あるいは夕方でも撮れるように400にするのか、まずフィルムを装填する時点で意図があります。露出計のついていないカメラの場合、露出計が必要です。セコニックやゴッセンといった、単体の露出計が便利です。iPhoneアプリでもあるし正確ですが、基本的には反射光による計測だし(入射光ではないので正確さに欠ける場合がある)、iPhoneをロック解除してアプリを立ち上げてから計測する手間がある。露出計にISOと絞りを設定し、光を測る。すると、シャッタースピードが出ます。ISOと絞りを設定/決定する時点で、撮影の意図がある。どう撮りたいかという意志がある。そこが重要。絞り開放で撮れば背景はボケる。絞ればくっきり写る。絞るにしてもf8などまで絞ると遠景までくっきり写るけど、カメラ/レンズの良さは出ているのか。f4あたりがレンズと描写の良さを最大限出せるかもしれない。そうしたことを試行錯誤、トライ&エラーしながら自分のものにしていきます。

フィルムがいいのか、スキャナがいいのか、ソフトウェアがいいのか

フィルム写真は、プロラボに頼む以外は、カメラのキタムラなどに現像をお願いし、フジカラーCDにすることが多いと思いますが、フジカラーCDいいですよね。一般的に、フィルム写真と言えばフジカラーCDになった写真が多いと思います。

フジカラーCDは、富士フイルムの専用の現像液で、ミニラボの現像マシンで自動で現像されます。38度でおそらく45秒程度。その時点で、失敗のない完璧なカラーネガが出来上がります。

次に、スキャンです。現在では、富士フイルムのSP-3000というスキャナが一般的に使われ、自動でスキャンされます。SP-3000のすごいのは、Image Intelligenceという機能。

Image Intelligence(イメージインテリジェンス)について

イメージどおりのイメージへ。

FUJIFILMは「人が見たまま、感じたままの世界を、人の視覚や脳に代わって、画像として適正に再現すること」「人が伝えたい世界を、意図を汲み取り、画像として的確に表現すること」を目指し、画像処理技術の開発に取り組んできました。

人にとって、光とは、色とは、写真とは何かを問い、学び、究めてきたFUJIFILM。“Image Intelligence™”は、長年培ってきた銀塩写真システムの画像解析・評価技術と、1970年代からいち早く取り組んできたデジタルイメージング技術を通じて、蓄積してきた画像処理に関する技術資産の集大成です。

いま、画像は、感じたまま、意図したままの1枚へ。

https://www.fujifilm.com/jp/ja/consumer/general/ii

いい感じに、記憶色、しかも心地いい色を出してくれる。これは、Photoshopなどで操作するとわかりますが、フィルムを単純にネガ反転した色ではありません。富士フイルムの長年の研究で究めたソフトウェアにより、気持ちのいい色を出してくれます。

フィルム写真の良さはスキャナの性能

つまり、「フィルム写真がいい」と感じるのは、スキャナの性能です。現像だけなら、DPE店やプロラボに出さなくても、自家現像でもほぼ完璧にできる。でもそれをスキャンするとなると話が違います。コンシューマ用のスキャナでは、いい色や描写が出ない。ノイズもそれほど綺麗じゃない。

フィルム専用スキャナの凄さ

やはり、富士フイルムのSP-3000は素晴らしいです。これだけDPE店で普及していて、失敗のない完璧なクオリティーを出すだけあります。他には、300万円程度するハッセルブラッドのFlextight。これも凄いです。ハイクオリティーの絵を出してくれます。業務用だと、この2つのどちらかになると思います。

長くなってきたので、次はフィルムスキャナについて書いてみます。

参考:デジタルカメラと35mmフィルムの解像度(解像度比較2回目)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?