自分たちの子どもが食べる野菜はどう作られているか、教えてもらいに行ってみた -信州のらくら農場への訪問記-
クレイジータンクには、日々子育てしながら仕事をしているメンバーが大半を占めています。
そのため、
「今日の夕飯は何を作るか」
「おべんとうは何を入れたか」
「こうしたら子どもが食べるようになった」
といった会話が、仕事の合間に頻出します。
そんな私たちですが、縁あって、ある農家さんから野菜を直接取り寄せするようになりました。
それが、長野県の佐久穂町にある「のらくら農場」さん。
https://www.norakuranoujyou.com/aboutus
クレイジータンクメンバーは、普段から、熊本の農家さんから野菜を取り寄せたり、スーパーマーケットでブランド野菜を購入して試してみたりと、日々の家事と育児の延長で「野菜(大きい定義では「食」)」の研究を進めています。
しかし、いくら様々な野菜を購入し消費しようとも、どのように野菜が育てられ、どの野菜がほんとうに身体にいい(子どもにとって良い)野菜なのか、見極める知見や情報が自分たちにないことに気がつきました。
そこで、直接お野菜を取り寄せている「のらくら農場」さんを訪問し、どのように野菜が作られているのか、お話を伺わせていただく機会をいただきました。
1: マイナス10℃を下回る…「のらくら農場」さんへお邪魔しました
私たちが農場を訪れたのは、1月の初め。農場は、八ヶ岳の麓、標高1000mに位置しています。1月のこの時期は、朝夕はマイナス10度を下回ることもある場所。アテンドしてくださった方からは、「とにかくあたたかい格好で来てくださいね」と事前に念押しされていたので、身の危険すら感じ、大量の防寒着をリュックに詰めて新幹線に乗り込みました。
この時、畑が凍ってしまうような寒い時期にも朝早くから仕事をしてくださる方々がいるから、毎週おいしい野菜が手元に届いているのだということが深く身体化された瞬間でもありました。当たり前のように毎週受け取らせていただいているお野菜の向こう側を、恥ずかしながらこの時はじめて意識することができたのです。
のらくら農場を訪れた日は、雪の予報から一転、快晴!それでも気温はマイナス3度…朝8時から農場のスタッフの皆さんはお仕事をスタートされていました。
2: 食の未来の交差点に立っている、と気付くことから
私たちがお邪魔した時に、ちょうど収穫した葉物野菜・広茎水菜(ひろくきみずな)や、収穫後に室(むろ)で熟成されたおどろくほど大きな長芋をカットし、袋詰めされていらっしゃるところでした。広茎水菜(ひろくきみずな)とは、この↓ように茎が広い水菜のこと。「きょうな」とも呼ばれるそうです。
袋詰め作業されていたビニールハウスの中では足元にストーブが焚かれていましたが、それでもスタッフの皆さんは防寒具を何枚も着込んで作業されています。
カットする途中、こぼれてしまった数本の広茎水菜をスタッフの方がおもむろにストーブの上に置いたかと思うと……
「どうぞ、頃合いですよ」
と、瞬時にかる〜く焼き色がついた広茎水菜をおすそ分けいただきました。ありがたく頂戴し、口に入れてみると…。噛めば噛むほど甘味や旨味が出てきて、私たちは「すき焼きを食べているようです(笑)」と表現したほどの味の濃さ!!!とても水菜、とても野菜だとは思えない「出汁感」があります。
なんと、この広茎水菜は、現在は種がなかなか手に入らない貴重な野菜なのだそうです。
のらくら農場さんも今年はなんとしても種の取得を成功させたいと、皆さん真剣に話をされていました。広茎水菜を栽培している農場という情報が各所に伝わると、わざわざ問い合わせがくることもあるほど希少性の高い野菜なのだとか…
これまで家に届く「のらくら野菜」の中に広茎水菜が入っていることは何度もあり、その度に気軽に水菜のように調理して食べていました。しかし、もしかしたらこれから先食べれなくなってしまうかもしれない種の危機に瀕している野菜だということを全く認識していなかったのです。
私たちが当たり前に食べさせていただいている野菜はこれからもずっと食べられるものとは限らないこと、そしてその野菜の価値を未来に残していこうと奮闘されている方々がいることを実感し、まさに私たちは未来の野菜(食)の交差点に立っている感覚になりました。
消費者という立場にある私たちも、この交差点に立っている感覚を持つことが大切だと感じています。その「価値」をしっかり理解していたら、子どもとも広茎水菜を食べながら、さまざまな話ができたのではないかな、と思いました。
3: 代表・萩原さんに伺った「ほんとうに美味しい、安全な野菜」の作り方
「のらくら農場」さんは、1998年、今から24年前、代表の萩原紀行さんと奥さまのお二人ではじめられた農場です。萩原さんも奥さまも農業の経験はない中から、有機栽培での野菜づくりをはじめられたそうです。
当時は、有機栽培は無理だ、趣味の世界だ、と周りから言われていたところから、萩原ご夫妻が何年もかけて畑づくりに取り組んでこられ、今では60種類以上の野菜たちが有機栽培で育てられているそうです。
「ほんとうに、おいしい野菜」
「ほんとうに、身体に安全な野菜」
「ほんとうに、栄養価が高い野菜」
を作るために、どのようなことをしているのか、萩原さんからさまざまなお話を伺うことができました。
それらのお話は、まるで、化学者の話を聞いている?という感覚になるときもあれば、研究者から話を聞いているようだったり、あれ?哲学者の話のよう…と思ったり、待てよ医療の専門家かな?と思ったり…
野菜、という、ヒトの口からからだに入っていくものと深く向き合い、「ほんとうに」良いものを作り続けようと、日々努力や挑戦を惜しまない様子がひしひしと伝わって来ました。
これでもか!といわんばかりに葉っぱからみずみずしさを放つほうれん草たちが植っていた場所の土に、3m近い棒を刺すと、スルスルとその棒が土の中に入っていきました…一同「えーーーーー?」「うそーーーー?」と目を丸くしました。
それだけ畑の土がやわらかく、フワフワしている状態ということ。その状態にすることで、野菜たちの根が自由に張られるようになり、栄養分がしっかり野菜たちへと運ばれていくのだそうです。そして根が深くまで伸びるため、干ばつなど自然災害にも強い野菜が育つと教えてくださいました。
中には、「え!」と耳を疑うようなお話も……
学校の家庭科の授業では、鉄分はこういう食材に入っていると習っていたので驚きの事実が発覚…
鉄分をとろう!と思って、たくさん小松菜を摂取していたとしても、その小松菜が育てられる過程で鉄分を加えられて育てられてなかったら、摂取している“つもり”になっているだけなのですね。
そんなピンポイントな、細い穴に糸を通すようなタイミングを見極めながら、コントロール不可能な自然や気候と共存し、ひとつひとつの野菜が作られているのだと、その繊細さに驚きの連続でした。
そして、お話を伺えば伺うほど、野菜の栄養価は農家さんの知見と判断と行動により、コントロールされているものであることがわかりました。
決して「ほうれん草はもれなく鉄分が豊富!」なのではなく、
「ほうれん草に鉄分が豊富に含まれるように、育てる過程でタイミングを見て鉄分を与え、それがしっかり野菜に入るような環境・土の状態を作り上げて……と、全部やってはじめて鉄分が豊富なほうれん草ができる」
のである、ということなのですね…。
子どもたちに野菜を食べてほしい!と思うのは、その栄養が子どもにとって必要であり、大事だと思うから。ですが、もしそこに入っていると思ってた栄養が入ってなかったとしたら…それだけでなく、食べること自体が安全とはいえない状態で作られていたら…と考えるとゾッとします。
「のらくら農場」さんのお野菜がどう作られているのか、お話を伺い、畑を見せていただいたことで、これまで自分たちがいかに野菜についての知識、野菜がどう育てられてるかの情報が不足していたかということを改めて実感しました。
引き続き「知り、選択できる」消費者になるべく、私たちの「食」研究は続きます。
4: おまけ・「のらくら農場」さんのまかないごはん
なんと私たち、農場のみなさんのお昼ご飯「まかないごはん」までご一緒させていただきました。
11:00くらいになると、その日のまかない担当の方が、キッチンに立ち、トントントントンと心地の良い音が聞こえてきます。
12:00。スタッフ10名程度の皆さんが集まって来て、その日のまかないごはんをみんなで盛り付け、みんなで食べ始めました。
私たちもご一緒させていただくことに。
のらくら農場さんの野菜セットには、いつも野菜の説明とおすすめレシピのシートが入って来ます。そのレシピの中には「まかないごはん」と紹介されているものも含まれています。
まかないごはんはこのキッチンで作られていました。キッチンの窓からは農場の景色が一部望めます。
この景色を見ながら、毎日どなたかが、この場所に立ち、収穫した野菜たちを使って、みんなのごはんを作っていて、そのレシピが私たちにもシェアされているのだと実感すると、この、農場とのらくらさんのキッチンから、私たちのキッチンまでが、野菜を通じてつながっていくような感覚になりました。
これから、届けていただいたお野菜を使って自宅のキッチンで料理するときに、ふと、この窓から見える農場の景色が浮かんでくるかもしれません。その景色を思い浮かべながら、料理をするとき、一つ一つの野菜をもっと大切にいただきたいと改めて思うでしょう。
のらくら農場の萩原代表、スタッフの皆様、本当にありがとうございました!
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