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無職、肉を喰らう

無職はここ数日の引越しで疲弊していた
これを予期して買っておいたものがある
疲れを癒やす為に今日はお肉を食べます

普段は鶏肉で肉食べたい欲を抑えている
しかし今日はコストを度外視していこう
肉を食べたい己を認めて許す必要がある

そして無職は牛と豚を冷蔵庫から出した
どちらも約400gのステーキ肉である
どちらも厚みは2cm程度はありそうだ

肉を常温に戻すとか付け合せを用意とか
今の無職には難しすぎて土台無理な話だ
塩コショウ挽いたら熱したフライパンへ

熱した油が牛肉の侵入でにわかに泡立つ
換気扇の音に油の弾ける音が交ざり合う
あまりの良い音にタイマー起動を忘れる

1分30秒で裏返すと良い焼目が見える
もう今すぐにでもかぶりついてやりたい
我慢して同じ時間タイマーを掛けて待つ

そうして焼けた牛肉を無職は取り出して
アルミホイルで包みこんでトースターへ
豚肉の方が焼けるまで低温で温めておく

豚肉は同じフライパンの同じ火力だけど
片面3分は焼くと無職は固く決めている
生焼けが怖いしカリカリ脂が好きだから

肉残り半面で冷凍ご飯をレンジに入れて
出来上がりのタイミングを合わせていく
ご飯と肉があれば今日はそれでいいのだ

ご飯が温め終わると同時に豚肉も焼けた
今日は面倒だから全部をお箸で食べたい
焼けたステーキたちを包丁でカットする

皿への盛り付けは綺麗じゃなくても良い
どう盛ったって旨いに決まっているのだ
相棒となるご飯もお茶碗によそっていく

かくして無職には贅沢すぎるご飯が完成
右手にお箸を持ち左手にお茶碗を抱えて
腹ぺこの無職は一心不乱に食事を始める

覚えているのは口で溶ける豚の脂の甘み
豚肉の身質がもたらす食感と溢れる旨味
噛むほどに濃厚な肉汁を生み出した牛肉

ご飯は途中で不足したため追加した程で
無職はどれも夢中で食べ尽くしたようだ
こんなことだから写真に残らないのだな

こうして部屋には満腹の無職が残された
これで疲れが癒えるかどうかは知らない
しかし確実に精神的充足だけは得られた

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