他人の不幸は蜜の味?農家が市場と付き合うということ。
今回の台風19号は想像を超えて多くの被害を出したようです。
長野県の千曲川の反乱は衝撃的でしたね。
この他にも関東・東北でも水害・土砂崩れ・停電などの被害が出て、復旧にはかなり時間がかかりそうです。
幸い、僕の住む山口県は雨も風も大したことはなく、通常通りの日々を過ごしています。
こんな時、やはり現地の人たちの暮らしのことや、復旧のことを心配するものですが、農家である僕は他のことも考えてしまいます。
それは、野菜の価格。
災害は野菜の価格を高騰させる。
今回特にニュースになっていた千曲川の流域は住宅地の他に農地も広がっている地域です。
ニュース映像で見る限り、かなり広い地域で畑が水没してしまっているようです。
氾濫を免れた地域にしても大雨の被害は甚大でしょう。
長野市で栽培されていた作物の多くはダメになってしまったと思われます…。
加えて関東圏の農地も、大雨の被害を受けているとすれば、この地域からの野菜の供給が落ち込むことは明白。
近いうちに野菜の価格は高騰する可能性が高いですね。
他人の不幸は蜜の味?
長野や関東圏から出荷される野菜は国内で相当なシェアを占めます。
そこからの供給がストップした場合の値段の高騰の度合いはいかほどか。
予測はできませんが、そうなった時に被害のなかった産地の農家は特をしますね。
僕も今の時期はほうれん草作ってるので、例年以上の売り上げになりそうです。
もちろん、日本のどこかで農家さんが災害の被害にあったことを喜んだりしません。
でも、構造上、他人にアクシンデントがあると「努力量を増やさないまま成果が伸びる」という現象が起きてしまうのです。
市場はシビア。農家が市場と向き合うということ。
市場経済の絶対のルール。
それは「需要と供給」ですね。
「食糧としての野菜」への需要は人間の数次第なので、短期間で大きな増減はありません。
となると価格に関わってくる最大の要因は「供給量」ということになります。
供給量が増えれば価格(単価)は下がり、供給量が減れば価格は上がる。
これは構造上の現象であってとっても無機質。
とてもシビアです。
どこか大きな産地からの出荷が激減すれば得するかもしれませんが、各地豊作なら売り上げは下がります。
単価が下がっても豊作なら出荷量が増えるのでバランスをとっているだけなのですが、その分作業には追われるし、自分でコントロールすることもできません。
豊作貧乏とはよく言ったものですが、農家が市場と付き合っていくというのはそういうこと。
常に他産地の状況や天候を気にして、青果市場の価格をチェックしていく。
難易度と引き換えに主導権を失う。
以前からブログの方でも言ってますが、農家が農協を通じて市場へ出荷する最大のメリットは難易度が低いことです。
農家はとにかく作物を一生懸命作る。
販売は全て農協〜青果市場へお任せ。
確かに難易度は低いですよね。
その代わり、
どこで、誰に、いくらで売るのか?
これらは一切自分で決めることはできません。
自分で作った野菜の行く末を自分で決めることができない。
そこを割り切らないと、農家として市場と付き合っていくことはできません。
僕の場合、夏はスイカを作り、スイカのオフシーズンにほうれん草を作っています。
スイカの方は県指定のブランド品でもあるので、単価を決めて自売りにも取り組んでいます。
おかげで複数の販売パターンを見てこれたわけですが、個人的に市場への全量出荷は向いてないですね。
自分の努力量と成果が釣り合わないのは性に合いません。
自分が作ったものの価値は自分たちで決めたいですし、何より「他人の不幸は蜜の味」な構造の中に身を置くのは健全じゃありません。
農家だけじゃないですね。
自分がどういう構造・仕組みの中でお金を得ているのか。
それは自分の理想にかなっているか。
考える機会を持つことも大事かと思います。
繰り返しますが、
誰かが災害の被害を受けたことを喜ぶなんてことはありません。
今回の台風被害に遭われた方々の日常が1日も早く回復することを願っています。
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