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目先の利益を追いかけて情熱が目減りする。

スイカ農家の僕にとっては梅雨の季節=スイカが割れる季節。

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大雨の後にスイカの根が水を吸って、その水分が一気にスイカの玉に送られちゃうと割れてしまう。

割れたスイカを放置するとグズグズに腐って、大変なことになるのでせっせと運び出して廃棄。

この時間は気が狂いそうなほど辛く、一銭にもならないのですが、農家の仕事の本質でもある…みたいな話は以前にも記事にしたのでそちらもぜひ。

毎年、スイカが割れて運び出すたびにツイートしている。

ネタ的な要素もあるけど、出来るだけリアルをお伝えしたいので。

こうして割れたスイカの写真を投稿すると、よくこういう声をもらう。

「割れたスイカは何か活用できないんですか?」

せっかくここまで大きくなったんだし、このまま捨てるのって確かにもったいない。

もちろん、活用する方法はある。

収穫が近いものは少し甘みを加えてジュースにしたり、ピューレにしたりはできると思う。まだ未熟なものでも、皮を切り分ければ漬物にできる。

捨ててしまえばそれまでだけど、その気になれば活用方法はあると思う。

問題は、それを本腰入れてやるのかどうか。

時間と労力の問題。

まず、割れたスイカを食品として加工するには、最低でも割れたその日のうちには回収して冷蔵庫にでも入れておかなければならない。真夏の日差しに晒されたらたちまち傷み、腐っていく。
となれば、毎日割れたスイカがないかチェックすることになる。その結果、割れたスイカが10玉の日もあれば、1つもない日もあるだろう。

そして回収したスイカを丁寧に加工し、販売までの段取りもつけなければならない。とにかく時間と労力がかかってしょうがない。


はっきり言ってしまうと、僕ら生産者は、「割れてしまったスイカの活用」に割けるだけの時間と労力がない。全くない。

栽培に全身全霊を注いでいるので、割れたスイカの加工になんて時間を割けるわけがない。

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じゃあ、誰がやるのか?

僕らに「活用できないんですか?」と言ってくる人たち、あなたたちが僕らの代わりに割れたスイカを回収して、加工して、販売して…に必要な時間と労力を提供してくれるんですか?
…というのはイジワルがすぎましたね。そんなこと出来ないのはわかってるし、そこまで考えてないのもわかってます。


まあともかく、一口に活用といってもかなりの時間と労力がかかるわけで、それをするために誰かを雇い、施設を用意し、販路の準備をしないことには不可能ということ。

目先の利益を追いかけて情熱が目減りする。

仮に、諸々の課題がクリアできて、割れたスイカの活用が可能になったとしても。

僕が生産者として引っかかるのは、本来のスイカを作るために全力を注いでるわけだけど、割れたスイカの活用を本気で考え始めると、どうしてもそっちにも意識を振り分けないといけなくなるということ。

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いくら人を雇っても、割れたスイカの活用を知らぬ存ぜぬでいるわけにはいかない。どうしても気を配らなければならない。

今の僕には、きっとそれが我慢ならない。

全身全霊、みんなを感動させるために命を削ってスイカを作っている。
その全力のほんの一部であっても「割れたスイカ」のためになんて到底使えるわけがない。

もちろんうまくやれば利益も出せると思う。本来のスイカの収益と、割れたスイカの活用で生み出せた収益を合わせればもっと稼げると思う。

でも、目先の利益のために、スイカ1玉に注ぎ込む全力が目減りするのは勘弁ならない。

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利益を追いかけて情熱が削られるようでは、なんのためにスイカ作ってるのかわからなくなってしまう。そんなことをしたら、もう二度と誰にもスイカを食べてもらうわけにはいかなくなってしまう。

「今まで廃棄してたスイカを活用して利益がアップした!やったね!」なんて、そんなレベルのスイカ作ってないんだよなあこっちは。
あくまでも真正面からの直球勝負にしか興味ない。圧倒的なクオリティで感動させることしか考えてない。


「やりたいこと」と「お金をいただくポイント」が食い違ってないか、誰しもが今一度チェックしてみるべきことかもしれないね。



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