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小売で本当に大事なことは経営やマーケティングではない。しかし・・・

私は小売の購買データを分析して、経営やマーケティングに役立てる仕事をしています。

ただ、タイトルで全否定しているように、本当に自分たちの仕事は小売に貢献できているのだろうかと思うことはよくあります。
一方で、経営やマーケティングをやってます。とか、データサイエンスをやってます。とか言うと、なんか格好良い気がして、ついつい現場の人たちよりも上等な仕事をやっていると勘違いしてしまうこともあります。

そんな矛盾した思いを受け止めて、止揚してくれたのがこの本です。

「お客さまがまた来たくなる ブーメランの法則」(ファーガル・クイン)

著者はアイルランドのSuperquinnという20~30店舗前後のスーパーを経営していました。
この本が言っていることは、超シンプル。

「お客さまに戻ってもらうことを最大の任務と考えよう」
これが「ブーメランの法則」です。

当たり前のことと言われれば、当たり前のことです。
しかし、そのために行っていることがすごい。
お客さまの声を聴く、様々な仕掛けを持っており、経営者自らが店頭に立ってお客さまに話しかけている。

お客さまに何度も来店してもらうことは、お客さまを理解する感性を育む能力にかかっています。
その感性は、市場調査のような間接的な方法では決して養うことはできません。売上をもたらすお客さまと自分で直接接触することを通してのみ、その感性を得ることができるのです。

この言葉は、本当に耳が痛いです。

勿論この本に対して、「そりゃ小さい規模ならできるけど、規模が大きくなって何十店舗も運用していくと無理だよ」という否定の声があることは想像に難くありません。
私も最初はそう思いました。(今でも完全に否定はできません)

ただ、それを大規模でも実現できるようにするために、自分たちがいるんだと言うようにしています。

この「ブーメランの法則」を実現するための3つのステップを示しています。

〇第1ステップ
時間や資源が必要とされるビジネス上の決断をしなくてはいけない局面では、「この決断でお客様が再び戻ってくることになるだろうか」と自問する習慣をつけましょう。

〇第2ステップ
リピート客やクチコミがどれだけあるかを測定する方法を構築しましょう

〇第3ステップ
時として短期と長期の利益のどちらかを選ばねばならない事実を受け入れましょう

第1ステップは、どうしても現場が強いです。
しかし、2, 3ステップには、経営に近い自分たちができること(例えば、データからリピートの測定や、長期利益への影響分析など)が沢山あります。逆に、第1ステップを現場の人が誰でもできるようにするためには、自分たちの仕事が必須となる。
そこを意識しながら、自分たちの仕事の目的を明確にしていっています。

ちなみに、オチではないですが、この本の作者が経営していたSuperquinnは、2011年に倒産しMusgrave Group傘下となり、2014年にはSuperquinnという名前もすべて置き換えられたそうです。

不動産投資の悪影響(負債が4億ユーロとも)らしいですが、不動産バブルに踊らされて投資に入ってしまったというのは、「ブーメランの法則」で言っていた素晴らしい経営方針を忘れてしまったのかもしれません。

盛者必衰の理かもしれませんが、この経営方針が生きているうちに、1度お店に行ってみたかったものです。

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