#おうちで読もう 参加作品『大体合ってる赤ずきん(朗読劇)』

昔YouTube用に書いた作品を、
#おうちで読もう
という活動で、少しでもお役に立てないかと書き直してみました。
ちょっとだけ現代風?に改変してありますので、それでもよろしければ。

*****

《登場人物》   

赤ずきん   

おかあさん   

おばあさん   

オオカミ   

猟師   

ナレーション(N)  

*  

N 「昔むかし、ある所に、とても可愛らしい女の子がいました。その子のおばあさんが、 赤い布で、その子がかぶる頭巾を作ってくれました。頭巾がとても似合っていたので、 みんなは女の子のことを『赤ずきんちゃん』と呼ぶようになりました。 ある日のこと、おばあさんが病気になったというしらせが届きました。おかあさんはお見舞いに行きたいと思いましたが、もうすぐ赤ちゃんが生まれるので行けそうにありません。そこで、おかあさんは赤ずきんを呼んで言いました。」  

おかあさん 「赤ずきんや、おばあさんの所へお見舞いに行ってちょうだい。おばあさんはお前をとっても可愛がってくださってるのだから、きっと喜んでくれるよ。」  

赤ずきん 「お母さんは行かないの?」  

おかあさん 「私は、ほら、お腹が大きいでしょう? もうすぐおまえの弟か妹が生まれるから、森まで歩いて行けないの。だから、代わりに行ってきてちょうだい。」  

赤ずきん 「はーい。」  

おかあさん 「それじゃ、このケーキと、元気になるドリンクを持って行ってね。」  

N 「と、おかあさんは赤ずきんにバスケットを渡しました。」  

赤ずきん 「ケーキは私も食べていい?」  

おかあさん 「おばあさんちに着いたらね。でもドリンクは大人になるまではダメよ。」  

赤ずきん 「わかった、じゃあ、行ってきます。」  

N 「かわいい赤ずきんちゃんがおばあさんの所へ一人で行くのは初めてことなので、お母さんは 心配でたまりません。」
   
おかあさん 「ちょっと待って。いい? 途中で道草をしてはいけませんよ。それから、オオカミに用心しなさいね。」  

赤ずきん 「オオカミって何?」  

おかあさん 「悪くて怖い動物よ。耳が大きくて、目が光ってて、口が耳まで裂けているの。
お前みたいな子どもを食べようとするんだから、話しかけられても知らん顔をしてるの ですよ。」  

赤ずきん 「大丈夫よ、おかあさん。おばあさんちまではまっすぐ道草しないから。」  

N 「赤ずきんは、おかあさんを安心させるように元気良く言いました。」  

赤ずきん 「じゃあ今度こそ、いってきまーす!」  

N 「おばあさんの家は、歩いて三十分くらいかかる、森の中の一軒家でした。その日はとてもお天気が良く、赤ずきんは歌を歌いながら歩いていました。と、そこへオオカミ が現れました。オオカミは、とても爽やかにニコニコと笑って挨拶してきました。」  

オオカミ 「こんにちは、お嬢さん。」  

赤ずきん 「こんにちは。私赤ずきんよ。あなたはだれ?」  

オオカミ 「わたくし、オオカミというものです。」  

赤ずきん 「えっ、オオカミ?」  

N 「赤ずきんは驚きながらもオオカミをよく見てみました。」  

赤ずきん 「お母さんが言ってたオオカミとなんか違うなあ。目は光ってないし、口もおちょぼ口でニコニコしてる。あんまり怖くないし、悪い動物には見えないわ。」  

N 「一方、オオカミは、赤ずきんが返事をしてくれたので、いっそうニコニコしながら 尋ねました。」  

オオカミ 「赤ずきんちゃんは楽しそうに歌っていたけれど、お散歩中なの?  それともこれから どこかに行くところなの?」  

赤ずきん 「ええと…、おばあさんが病気だから、お見舞いに行くの。」  

オオカミ 「そうかい。一人でお見舞いに行くなんて、えらいんだねえ!  じゃあ、そのバスケットの中には、お見舞いの品が入ってるんだね。なんだかいい匂いがするよ。」  

赤ずきん 「ケーキとドリンクが入っているの。ドリンクはおばあさんにだけど、ケーキは私も食べていいんだって! 」  

オオカミ 「なるほど。それで、おばあさんのうちはどこだい? なんならわたくし、送って行ってあげましょうか? 」

赤ずきん 「ううん、大丈夫。もうあとちょっとのところだから。」  

N 「オオカミは、少し考えました。」  

オオカミ 「そうかい、じゃあ赤ずきんちゃん、この道の先にきれいなお花畑があるんだよ。せっかくだから、おばあさんにお花をつんで、持って行ってあげたらどうかな。おばあさんも喜ぶと思うよ。」  

赤ずきん 「本当? そうね、オオカミさん。あなたの言う通りだわ。ありがとう。じゃあ、そうすることにするわ。」  

N  「赤ずきんはオオカミにお礼を言って、お花畑まで行きました。」  

赤ずきん 「わあ、ほんとにきれいなお花がたくさん咲いてる! おかあさんはあんなこと言ってたけど、オオカミさん、ちっとも怖くなかったし親切だったわ。おばあさんにも話してあげようっと。」  

N 「ところが、オオカミにはある恐ろしい考えがあったのです。赤ずきんと別れてから、オオカミ はそのまままっすぐおばあさんの家へ行きました。戸をトントンと叩くと、 おばあさんが答えました。」  

おばあさん 「はいはい、どなた?」  

N 「オオカミは赤ずきんの真似をしました。」  

オオカミ 「おばあさん、あたし、赤ずきんよ。お見舞いにきたの。開けてちょうだい。」  

おばあさん 「まあ、赤ずきんかい。一人で来たの? おかあさんはどうしたの?」  

オオカミ  「え? ええっと…。(小声)しまった、そんなとこまで聞いてなかったぜ。」  

おばあさん 「ああそうか、赤ちゃんが今月生まれると言っていたね。だから一人で来たのかい。鍵は開いてるよ。私は体が弱っていて起きられないから、どうぞお入り。」  

オオカミ 「あ、そう? 助かった…。じゃあ入ります。そしていただきます。」  

おばあさん  「え?」  

N 「オオカミは戸を開けて入るなり、ベッドに寝ていたおばあさんに飛びかかり、丸飲みにしてしまいました。本当は、とても腹ぺこだったのです。」  

オオカミ 「さてさて、メインディッシュが来る前に、一眠りしようかね。」  

N 「オオカミはたんすからおばあさんの服とナイトキャップを探しだすと、それを着てベッドにもぐりこみました。 その頃、両手いっぱいになった花束を持った赤ずきんが、おばあさんの家に向かっていました。」  

赤ずきん 「ふう。お花に夢中になっちゃって、お見舞いに行くのを忘れるところだったわ。」

N 「おばあさんの家に着くと、いつもは閉まっている入り口の戸が、開いたままになって いました。 

オオカミ 「(いびき)ぐおーっ、ぐおーっ」

赤ずきん  「どうしたんだろう? すごい音が聞こえる。こんにちは、おばあさん。赤ずきんです。お見舞いに来たよ。」  

N 「赤ずきんは大きな声で呼びかけてみました。すると、家の中からはしわがれた声が聞こえました。」  

オオカミ 「…はっ、寝ちまった。あ、赤ずきんかい? どうぞお入り。」  

N  「赤ずきんが家の中に入ると、いつもと違ったヘンな匂いがしました。でも それが、オオカミの匂いだとは気がつきません。赤ずきんはおばあさんのベッドに 近づきました。」  

赤ずきん 「あら、おばあさんの様子がヘンだわ。病気でこうなってしまったのかしら? おばあさん、おばあさんの耳は、ずいぶんと大きいね。」  

N  「赤ずきんちゃんが思い切ってたずねると、おばあさん…に化けたオオカミが答えました。」  

オオカミ 「そうとも、お前の言うことが、よく聞こえるようにね。」  

赤ずきん 「それに、目が大きくて、光ってるわ。なんだか怖い。」  

オオカミ 「怖がることはないよ、可愛いお前の顔をよく見るためさ。」  

赤ずきん 「それに、おばあさんの手。こんなに大きかったかしら? 」  

オオカミ  「そうだよ。大きくなくちゃ、お前をつかまえる…おっと、抱きしめることができないもの。」  

赤ずきん  「それから何といっても、その大きなお口。耳まで割けてるような…。え?」  

オオカミ  「それはね、お前を…。」  

赤ずきん  「もしかして…。」  

オオカミ  「食べるためさ! 」  

N  「こうして、オオカミは赤ずきんちゃんまでも頭からパクリと一飲みにしてしまいました。」  

オオカミ  「ああ、食った食った。二人も食って満腹だ。では食休み…。」  

N  「オオカミは、そのままベットで寝てしまい、やがて大きないびきをかき始めました。 

オオカミ  「ぐぉーっ、ぐぉーっ…」

N    「その頃オオカミのお腹の中では…。」  

赤ずきん  「どうしよう、大変なことになったわ。お母さんとの約束を破って、オオカミと話をしたり、 道草をしたりしちゃったから、オオカミに食べられちゃった! しかも、オオカミは おばあさんに化けていたわ。ということは、おばあさんはどこ? 」

おばあさん  「うう、赤ずきんや…。」  

赤ずきん  「おばあさん! おばあさんも、オオカミに食べられていたのね。大丈夫? 」  

おばあさん 「私は、もうだめだよ…。」  

N  「先にオオカミに食べられてしまったおばあさんは、もう虫の息でした。」  

赤ずきん  「大変! わたし、おかあさんからお見舞いに元気が出るドリンクを預かってきたのよ。 これを早く飲んで! 」

N  「赤ずきんちゃんはおばあさんにぶどう酒を飲ませました。すると…。」  

おばあさん  「これは、私の好きな赤マムシドリンクじゃないか!  んんんん…、パワーアップ!」  

N  「おばあさんはみるみるうちに元気になりました。」

赤ずきん  「そ、そうなんだ…。」

N   「元気になったおばあさんは、赤ずきんちゃんに言いました。」  

おばあさん 「こうなると、やるべきことはただ一つ。オオカミの中から脱出するよ。」  

赤ずきん  「えー、どうやって?」  

おばあさん  「オオカミの体の中で暴れるのさ。オオカミが苦しくなれば、私たちを吐き出すかもしれない。」  

N  「おばあさんはそう言うと、オオカミのお腹の中でダンスを踊り始めました。」

赤ずきん  「お、おばあさん…さっきまでの病気は?!」

おばあさん  「ふふふ、若い頃はダンスコンテストでも優勝したものさ」

N    「すると、体の中をおばあさんに踏みならされて、オオカミはうなされ始めました。」  

オオカミ  「ぐぉーっ、う、うう…。」  

おばあさん 「お前もやってごらん、赤ずきん。」  

赤ずきん  「うん。」  

N  「赤ずきんは自分が入ってきたオオカミのお腹の上の方をくすぐり始めました。するとオオカミはしゃっくりを始めました。」  

オオカミ  「ぐぉーっ、うう? ヒック、ヒック・・・ヒック・・・うう、ぐぉーっ、うう・・・。」  

N  「ちょうどその時、いつもこの森で狩りをしている猟師さんが通りかかりました。」  

猟師  「おや? あの家からヘンな音が聞こえるぞ。いびきかと思ったら…やや、うなっている。うん? 今度はしゃっくりにも聞こえるな。確かあの家にはおばあさんが一人 で住んでいたはず。もしかしたら、病気で苦しんでるのかもしれない。助けに行こう! 」  

N  「猟師さんが家に入ってみると、なんとベッドに寝ているのはオオカミではありませんか。」  

猟師  「なんということだ。こいつが、おばあさんを食べてしまったんだな。よし!」

N  「猟師は鉄砲を構えましたが、よく見ると、オオカミのお腹がもごもごと動いています。」  

猟師  「ん? もしかしたら、まだお腹の中で生きているのかもしれない! 」  

N  「そこで、猟師さんはおばあさんの家にあった大きなたちばさみで、寝ているオオカミのお腹を、ジョキ、ジョキと切り始めました。 
すると、まず出てきたのは赤ずきんちゃんでした。 」  

猟師  「わあ! おばあさんが女の子に! 」  

赤ずきん  「違うわ、私、孫の赤ずきんです。助けてくれてありがとう。」  

N  「次に、おばあさんも、 」  

おばあさん  「やれやれ、よっこらしょ、ひどい目にあったもんだわ。まあ、猟師さん、お世話になりました。」  

N  「すっかり元気になって出てきました。」  

猟師  「これで全員ですね? ではオオカミを退治するとしましょう。」  

おばあさん  「いえ、ちょっと待ってください。私にいい考えがあります。外から石をたくさん持ってきてくださいな。 」  

N  「そこで、赤ずきんちゃんと猟師さんが石を拾い集めてくると、おばあさんはそれを寝ているオオカミのお腹の中に詰め込んで、針と糸で縫い合わせてしまいました。」  

おばあさん  「これで、オオカミが起きるまで、私たちは隣の部屋に隠れていましょう。」  

N  「三人が隠れていると、オオカミがやがて目を覚ましました。」  

オオカミ  「うーん、なんだか悪い夢を見たような。(あくび)食うだけ食って寝るだけ寝たら、今度は喉が乾いたなあ。」  

N  「オオカミは起き上がると、近くの川に水を飲みに出て行きました。三人はこっそりとあとをつけてみました。オオカミが歩くと、その度にお腹の中で石がゴロゴロと 言いました。」  

オオカミ  「おかしいな。腹が重たいぞ。それに、ばあさんと女の子を食べたはずなのに、固い物が ぶつかってるような音がする。」  

N  「その重たい石のせいで、川の水を飲もうと屈んだ途端にオオカミは川の中に転げ落ち、浮かび上がれずに沈んでしまいました。 
オオカミがいなくなったことに三人は大喜び。」  

赤ずきん  「ああ怖かった。」  

N   「それから赤ずきんは、元気になったおばあさんに夕ご飯を作ってもらって、猟師さんとみんなで食べました。」  

赤ずきん  「おばあさんのごはん、美味しいわ。オオカミも、おばあさんが元気になるまで待ってたら良かったのにね!」
 
猟師  「おいおい、そこかよ!」  

N  「めでたしめでたし。」   (了)

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