クエスト攻略型日常系ファンタジー 物語られない冒険譚


 今更説明するまでも無い事だろうが、ダンジョンとは危険な魔物の巣窟である。神話によれば、天地の神々に背いた邪神が地上にかけた呪いのせいで自然発生する様になったと言う。あっても人間にとって基本的に迷惑な存在なので、大抵は発見次第攻め込んでとっとと潰してしまう事が多い。

 しかしてこのニビイロ鉱山は、人間が管理するダンジョンであった。

「どこがだ!」

 鉱山内に荒っぽい女性の声が響いた。薄暗くも仄かに光る鉱石に照らされる坑道にて、狼じみた小鬼の集団に追われつ戦う六人組がいる。叫んだのはその一人だ。

「全ッ然管理しきれてないじゃんか! 責任者出てこい!」

 大声で文句垂れる女剣士に対し、女僧侶が冒険者的正論を返した。

「管理しきれなくなったから、その責任者の依頼でここに来たんじゃないですか、私たち」

 ダンジョン管理の目的は、ダンジョン環境でのみ得られる特異な資源の獲得にある。だがダンジョン環境の維持には魔物の存在が不可欠。その個体数、種類、或いは強度の調整はしばしば冒険者向けクエストとして発注され、主に駆け出しの訓練用に回される。

 だが偶に、本当に偶の事だと管理する者は口を揃えて言うが、駆け出しでは手の負えない事態になるのもよくある話だ。そう言う時は中堅どころで暇そうな連中、例えばこの女性六人組パーティなんかが駆り出されるのであった。

「そもそもダンジョンなんて人間が管理できるものではないんです、私に言わせれば」

「お前達、呑気に依頼人批判してる場合か!」

 最後尾から騎士が二人を窘めた。彼女は一番敵の攻撃を受ける役回りにいる為、誰よりも余裕がなかった。

「我々には回復役がいないんだ、余計なダメージは食らってられん! 気を抜くな!」

「え、この人僧侶なのに?」

 疑問を呈した魔術師は、今回初めてパーティに同行した新入りだ。

「私の神は戦神ですので、治癒は出来ませんよ」

「えぇー……」

 僧侶がヒーラーとは限らない。気をつけよう。

【続く】

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