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出来るだけ「無駄(ゴミ)」にしない!生産者と共に考える(その2-2)

染色実験スタート・タンパク質と向き合う

果たして、大根の葉っぱから、商品になりうるような「色素」は取り出せるのだろうか??
商品としては使わない大根の葉の分を大量に頂き、私たちの「大根染め実験」がスタートいたしました。

いわゆる「草木染」のテキストやネットの情報を探してみても、
「大根の草木染」についての情報はそんなに多く出てきません。
思うに、「食べられる」物である大根をわざわざ染色の材料にはしなかったのでしょう。
それこそ「もったいない」という考え方が、そこには存在していたのかもしれません。

・・ということで、実験のためにいただいた大根の「葉」の部分を使って、果たして色が出てくるのか?をあれやこれやと試してみることにしました。

「染色」とは、とても簡単に言うと、素材がもつ「タンパク質」に色素を吸着させることで発色させるという技です。
染色を施す素材に「タンパク質」が多くあればあるほど発色しやすいということになります。

糸や布の中で、タンパク質を多く含んでいるのは、生き物から作られる「絹」「羊毛」などの動物性繊維。
植物性繊維と言われる「綿」「麻」には、色素が定着するためのたんぱく質の量が多くありません。
そこで、きれいに色を入れるための準備として、タンパク質自体を布に定着させるための下処理が必要となります。

今回、大根染めについては、天然繊維の中でも吸水・吸湿性が高い「綿」に染まるかどうかの1点のみにこだわって実験してみることにしました。

草木染では、色素を吸着させるという工程の前後に「媒染」という工程が必須となります。
これは、金属イオンと色素を結合させるということで色を布に定着させるという工程です。
どんな金属成分で「媒染」するかにより、同じ植物から異なる色を獲得することが可能となります。
今回の実験では、2種類の媒染剤でチャレンジしてみることにしました。

機械で染めるわけではないので、大根の葉の状態、葉を煮出して染料液を抽出する時間、染色する日の天候、下処理に使う原料の種類、媒染剤の濃度・・・・。
すべて同じ条件の下で同じ色を出していくことはほぼ「不可能」です。
たとえ、まったく同じ条件がそろったとしても、同じ色にはならないでしょう。
それが「草木染」の醍醐味でもあり難しさでもあり・・・。
そこに一期一会の色との出会いが存在しています。

お隣に植わっている農作物だとしても、まったく同じものが出来ないのと同じように、自然素材での染色も、同じものを2つ作るということが一番難しいこと(…というか不可能)でもあります。

機械生産が得意としている「規格」どおりの製品や商品づくり。
それとは、正反対の世界ですが、一つ一つを愛でながら、染色トライアルを続けていきたいと思います!

タイ国から「足るを知る」を学ぶ

話は変わりますが、私が20年ほど前に語学留学していた「タイ」は、
ラーマ9世・プミポン国王の時代。
国王は、これからどんどん近代化をしてゆくんだとエネルギーに満ちあふれていた当時、農業国でもある自国の中で「足るを知る経済」という考え方を、特に農村部の国民に伝えていたというお話がありました。

南国であるタイは、手間暇かけなくても1年に3回も4回もお米が収穫できる豊かな国です。ただお米を作りすぎても、結局、消費されなければ古米になっていってしまう。
だったら、お米の生産回数を減らして、空いた期間で、お米じゃない別な作物を生産したりしながら、自分たちの生活の「足る」を考えて行こう!
しっかりと頭を使って、計画的に生きていこうね!という教育的な側面もあったのだと思います。

タイは、急成長著しい新興国の一つとされていますが、都会と田舎の2極化は、ますます大きくなっており、田舎の生活はまだまだ貨幣社会ではなく自給自足による部分も多いです。
何も手間をかけなくても、庭に植えておけば勝手にパパイヤやバナナ、マンゴーが豊富に収穫できる「南国ならではの贅沢な環境」であるからこそ、作りすぎないこと、ということが大切なの考え方かもしれません。
しかしその根底には、せっかくの実りを「無駄」にしてはいけないという、仏教的な考え方も見え隠れするような気がしています。

一方で「商品力」ということを考えると、見た目が綺麗、規格化されているから安心できるなど、消費者が買いたい・欲しいと思えるブランディングの力もとても重要な部分でもあります。
食品に限って言えば、行くたびに味が異なる食堂、表面が汚い野菜や果物などは、消費者にとって「不安材料」以外の何物でもありません。
でも、「今日は当たりだった」「今日は外れだった」など、同じお店に通っていれば、そういう違いも楽しみの一つだったりします。
人間が関わるからこそのちょっとした味わいも楽しめたら、生活はもっと楽しいですね。。

身近にある「SDGs」を考える

昨今、世界的に「持続可能な社会づくり(SDGs)」が声高に叫ばれるようになりました。
供給・消費過多な現代の生き方そのものを見直していこうという一つの指針なのだと思います。
足元にある身近なところをしっかり見つめてみるという時間や機会を持つことこそが大切な事じゃないかと思う今日この頃。

出来るだけ無駄にしないように「技術」を使って別な何かの形にする。
その技術として、今まで20年近く取り組んできた「染め」の技術や経験が活かせるというのはとても嬉しいことなのかもしれません。
そして、今回をきっかけにしてその技術を色々な形にアレンジして行けたら最高ですね。そのためにも丁寧な準備をしてゆきたいと思います!

大根の葉っぱは、千葉県市原市のブランド大根「姉崎だいこん」を生産している「たねや泉水農園」さんより、おすそ分けしていただいています!


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