詩15『小さいもの』

この蟻は、小さいのだろうか
ほんとにぼくより、小さいのだろうか

腹が減って、眠れぬ夜は何度ありましたか
背中について剥がれない塵芥に、押しつぶされそうになった夜は

そんなとき、あなたは一体どうやって
どんな息をして、朝を待ちましたか

夜色の体、白昼の土を駆けていく

その小さな肉体に
太陽はジリジリ、子供らはドスンドスン

「ああ、やはり、ぼくの方が」と言うこの痩せこけた巨人を
御蟻様は、「今さらどうした」と、お見上げなさります。

夜色の体、白昼の土を駆けていく


[今日のおはなし]
芥川龍之介『蜘蛛の糸』を読んで。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?