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50歳のノート「お腹いっぱい食べさせたい 韓国バラエティ「三食ごはん」」



韓国バラエティ「三食ごはん」シリーズを楽しみにしている。新シリーズが公開されるたびにU-NEXTに加入する。ABEMAで「三食ごはん」過去回の無料TV放送を流し見して再度楽しむほど。

「三食ごはん」は韓国ドラマでおなじみの俳優陣が田舎の一軒家に同居して三食自分たちで自炊するバラエティ番組である。しかも男3人の組み合わせが多い。
毎シーズンごとに制限がある。「食材はその土地でとれたもの(魚、家庭菜園の野菜)のみ」「地元の農家を手伝い、いただいた報酬のみでまかなう」など。ガスや電子レンジは無く、料理のたびにかまどで火をおこして調理する。

制限があるため当然、食卓はつましい。
大の男3人分の3食を少ない食材の中やりくりすることになる。
冬の離島でロケが行われた漁村編は過酷だった。魚が獲れないと食べるものが無い。わずかの野菜と米だけで食卓をなんとかしなくてはならない。

映画俳優ユ・ヘジンが真冬の雨が吹き付ける中、釣りに行く。粘っても何も釣れない。あちこちにしかけた場所をのぞく。祈るような気持ちでしかけを引き上げても何も無い。
食材を待つのはドラマでおなじみのチャ・スンウォン。ユ・ヘジンとは長年の親交があり、まるで夫婦のような空気感だ。

手ぶらで戻ってきたヘジンをあたたかく迎え、チャ・スンウォンは手元にある材料で手早く料理を始める。
驚いたことにチャ・スンウォンは料理が手早く上手である。
料理に慣れてない男性が料理をしようとすると一種類ずつ丁寧にやるので時間がかかりがちだ。
けれど彼は手早く平行で作業する。さらに料理しながら片付けをしているので食べ終わった後の洗い物が少ない。
しかも一日中どこか掃除したり作り置きを料理していたりと動き続けている。彼の料理はどれも美味しそう。まるで主婦の鑑である。

チャ・スンウォンとユ・ヘジンの長年の夫婦の空気感のなかで居心地悪そうにウロウロするのが俳優ソン・ホジュン。
内気な彼は初対面の二人に話しかけたり手伝ったりができず、もじもじうろうろしている。

そんな中彼の緊張をほぐすようにゆったりと大人のユーモアをみせるユ・ヘジン。
美味しい料理を少ない食材から作り出して食べさせてくれるスンウォン。
2人のおかげでホジュンが次第に打ち解けていくさまが微笑ましい。

ホジュンの居心地悪さに共感しつつ彼の目線でスンウォンの料理に毎回驚く。
少ない材料、かつ化学調味料を持ち込み禁止なので、シンプルな韓国の家庭料理のレシピを学べる。これにこれを入れて、、と自然に頭に入ってくる。

韓国のみならず日本でもシェアハウス共同生活バラエティコンテンツは豊富。
自分が見ていてハラハラするのは人間関係にあらず。
「食事が足りるかどうか」である。

「見た目は洒落てても大の男にあの量は足りないんじゃ…」とか「えっ一品だけ…」などと食卓を見て焦燥感にかられる。
自分が食べたいのではなく、十分に食べさせたいという気持ちが湧いてくるのだ。
実家も祖母の家も人が来るとイヤというほどの品数の料理を並べていた。
とにかくいっぱい食べさせたいとの本能が刷り込まれている。
なので「足りないんじゃ…」と思うとハラハラするのだ。

「三食ごはん」で少ない食材をやりくりして品数とお腹を満たす料理をあつらえるチャ・スンウォンに毎回拍手の気持ちである。

「三食ごはん」シリーズの「コチャン編」は舞台を農村に移し韓国の地方の農村暮らしを見せてくれた。おなじみの3人に加え、俳優のナム・ジュヒョクが仲間入りする。
夏の美しい田園風景も見どころだ。

今度は生活費が渡されてその中でやりくりする。少ない予算の中でスーパーで計算しながら買い物をしているのがリアルだ。
良かれと思って少ない予算からホジュンが缶コーヒーをコーヒー好きなスンウォンに買っていくと「無駄遣いするな」と叱られてしゅんとしたりする。

少ない生活費のなか、4人で思い切って外食するもスンウォンは生活費が頭をよぎる。自分はそっと安いのを選んでホジュンとジュヒョクに好きなものを食べろという。
二人が気を遣いながら注文するさまがまるで子供二人のようで微笑ましい。
カリカリするスンウォンをまあまあ、とゆったり包みこむユ・ヘジンがまるでお父さんだ。

大の男4人の共同生活なのに、いつのまに夫婦と子供2人に見えてくる。
農家で収穫の手伝いをして汗を流し、いただいた報酬からつましく、けれど豊かな食事を作って一緒に食べる。

スンウォンはジュヒョクが「肉が好き」とちらっと言った言葉を何気なく覚えていて「肉が好きだから食べさせてやりたい」と早速少ない予算からタットリタンを作ってやる。
美味しい美味しいと大喜びで食べるジュヒョクとホジュンをそっと目を伏せて聞いているスンウォンからまるでお母さんの気持ちが伝わってくる。

余談だが、スンウォンレシピでタットリタンを作ってみたら美味しくできた。あの大喜びのシーンを思い出すと余計に幸せの味である。

丁寧に暮らす4人を見ていると癒される。
最終回のラストシーンでは不思議と涙が出た。
小さなひと家族の夏休みが終わってしまった。

夏休みの余韻に心地よく酔える作品。

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