50歳のノート「コーヒーの物語に癒される」
韓国漫画の好みの作品を掘り当てると嬉しい。
好みに当たるまでLINEマンガとピッコマを毎日回遊している。
LINEマンガでふと思い出しては読み返すのが「鶏龍仙女物語」である。
ソウルの大学で教鞭をとる2人の男性が田舎に向かう旅の途中、コーヒーを求めてとあるカフェに立ち寄ることから物語は始まる。
「仙女喫茶」と小さな看板のあるカフェに昔ながらの韓服を着たおばあさんが胸に「バリスタ」と書かれたバッジをつけて注文を待っていた。
ヒビの入った大きいどんぶりになみなみとコーヒーが注がれて出てくる。
二人組のうちジン・ヒョンはヒステリックな性格ですぐキレる。もうひとりのキンキンはのんびりと優しい。
キレるジン・ヒョンはバリスタのおばあさんの淹れたコーヒーを飲んで以来不思議と眠れるようになる。
2人が田舎からソウルに帰ることになり、ふと見ると道にバリスタのおばあさんが立っている。
車を止めで声をかけると何も言わずに車に乗り込んできた。ソウル行くので乗せていってくれという。
ソウルでコーヒースタンドを始めたバリスタのおばあさんの店は不思議と癒された気持ちになると大繁盛する。
そのバリスタのおばあさんは実は天界から地上に降りてきた仙女ナムである。
彼女は人間の木こりと恋に落ちて人間界で暮らすようになった。
夫の木こりが亡くなると彼の生まれ変わりを待って人間界で長く暮らすようになった。
仙女と人間の木こりとの間に生まれた2人の子供も転生し、仙女と共に暮らしてお父さんとの再会を数百年も待っている。
バリスタのおばあさん姿はかりそめの姿で普段は愛らしい仙女姿になる。
おばあさんのはずがキンキンにはときおり可愛い娘姿に見え…というところでもしかして?と思わせる。
キレるジン・ヒョンと優しいキンキンのうち、
どちらが夫なのか、なぜジン・ヒョンは荒ぶるのか? ゆっくり謎が解けていく。
面白いのは他の天界の住人たちのカメオ出演である。
人間界にいるのは仙女ナムだけではなく、他の天界の住人たちも現代のソウルで街にいそうな普通の人の姿で暮らしている。
天界の住人たちは仙女ナムのコーヒーを楽しみにしていたり、ナムの様子を気遣ったりしている。彼女の淹れたコーヒーが美味しいのは生き物を慈しむ仙女の力に加えて、コーヒーの神様カルディ様に教わったからだという。
(真っ黒いコーヒー豆カラーのカルディ様もチラリ登場する)。
天界のさまざまな面々がスポット出演すると本当に人間界にいるかもしれないと、可愛らしくてクスリと笑ってしまう。
全体が素朴な優しいクレヨン風の色味で描かれている。
やはりそこは韓国作品、後半は不意に物語が深くなるが、優しい心持ちで丁寧に暮らす登場人物たちがしっかりと物語の明るさを保っている。
(この作品、実写ドラマ化されたが、原作のイメージが壊れたらアレだと思い見ていない。それほど、漫画であの色彩ならでは作れる世界なのだ)。
私にとってこの作品は絵本のようなもの。
ふと本棚のお気に入りの絵本を手に取って物語の世界に触れ、少し読んだら戻す。
最後まで読み切らずにコーヒー一杯を飲む時間だけで良い。
仙女ナムの淹れたコーヒーを飲んだ気分で少し元気になる物語である。
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