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リーディングカンパニーと本気で仕掛ける、食の未来への挑戦

ホシザキ株式会社 代表取締役社長 小林靖浩氏
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也

「環境が戻るのを待つのではなくて、自ら変化を引き起こしていく必要がある」。ホシザキ株式会社 代表取締役社長 小林靖浩氏はそう話します。

2022年10月、創業75年になるフードサービス機器メーカー・ホシザキ株式会社(以下ホシザキ)と、飲食店向けのロボットや食品工場向けの惣菜盛付ロボットなどを展開するコネクテッドロボティクス株式会社(以下CR)は「資本業務提携」を発表しました。
ホシザキがスタートアップと資本提携するのは今回が初めてだといいます。なぜ、フードサービス機器メーカーのリーディングカンパニーであるホシザキが、食産業のロボティクスを牽引するCRと力を合わせることになったのでしょうか。ホシザキ株式会社 代表取締役社長・小林靖浩氏(以下 ホシザキ・小林氏)と、コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登哲也(以下CR・沢登)の対談を通じてその背景、今後の展望を伺っていきます。
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食産業の未来を共につくる挑戦

―ホシザキさんは日本を代表するフードサービス機器メーカーとして、様々な製品を展開されていらっしゃいますね。

 
ホシザキ・小林氏:我々は、フードサービス機器を国内外で開発から製造・販売までを行っている企業です。「オリジナル製品を持たない企業に飛躍はない」をモットーに、モノづくりの「極限への挑戦」を続け、様々な製品を世に送り出してきました。そんな中で、製氷機、冷蔵庫、食器洗浄機で国内市場のシェアNo1、グローバルにおいても製氷機はシェアNo1です。国内売上高の約7割強が直販ですので、お客様の困りごとやニーズをダイレクトに吸い上げ、製造開発に生かせるという強みもあります。
 
今後は飲食市場に加え、飲食外市場も積極的に開拓していきたいと考えていますので、CRさんとご一緒することで、飲食市場はもちろん、食品流通・食品加工という領域においても、様々な展開ができるのではと、期待しています。また、国内をマザーカンパニーとして海外でも成長を目指し、将来的には売り上げの50%まで引き上げたいと思っています。

ホシザキ株式会社 代表取締役社長 小林靖浩氏(こばやし・やすひろ)氏 1993年日本石油(現ENEOS)入社。その後、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、アルペンを経て、2008年、ホシザキ電機(現ホシザキ)へ。経営企画室室長などを経て2012年に取締役に就任。2017年より現職。

―― CRさんのお取り組みも教えていただけますか。
 
CR・沢登:当社は「食産業をロボティクスで革新すること」を目指しています。日本で最初に食産業に特化したロボットシステムを開発している会社として、これまで様々なプロダクトを開発してきました。今後も、食産業においてより良いエコシステムを作っていくために、ロボット技術を用いて「自動化・省人化・効率化」を進めていこうと考えています。
 
実は、ホシザキさんとはこれまでも食器洗浄機のロボットによる自動化などを一緒に取り組ませていただきました。今回、資本提携をさせていただくことで、お互いの得意分野を生かしながら、第三次産業の飲食業、第二次産業である食品加工業、将来的には第一次産業も含めて、より良い「食産業のエコシステム」の構築を、一緒に取り組んでいきたいと考えています。

コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也(さわのぼり・てつや) 東京大学 工学部計数工学科卒業、京都大学大学院 情報学研究科修了。MIT発ベンチャー企業でロボットコントローラ開発責任者を経て、2011年に独立。 2014年にコネクテッドロボティクス株式会社を創業。 2017年4月より食産業をロボティクスで革新する研究開発事業をスタート。

―― 既に協業されてきたということですが、今回、「資本業務提携」まで踏み込んだ狙いや意義をもう少し詳しく教えていただけますか。
 
ホシザキ・小林氏:そうですね。今までCRさんと一緒に仕事をさせていただく中で、関わってきたメンバーから「CRさんと組んで、一緒に食の世界を変えていきたい」という強い要望がありました。CRさんはロボットの会社というイメージが強いかもしれませんが、ソフトウェア・センシングという部分においても圧倒的に強い会社です。
 
我々としては、ハードウェアの部分はやっていくけれども、ソフトウェアやセンシングにおいては強いパートナーと組まないと、フードサービス機器においてエコシステムまで昇華していくのは非常に難しいだろうなと感じています。ですから我々が持っていないリソース・強みをお持ちであるCRさんとご一緒したいと考え、このような経営判断をさせていただきました。
 
CR・沢登:ありがとうございます。

ホシザキ・小林氏:当社は今年75周年なのですが、このような形でスタートアップと資本業務提携を結ぶのは、実は初めてです。本来は、もっと確立したビジネスに投資をしていくのがハードウェアメーカーの真髄なのかもしれませんが、世の中の変化の速さを考えると、そのスタンスではついていけない。それに、CRさんのように食の世界の未来を見通したような発想は、我々からは生まれにくい状況にあると思います。ですので、社員の意識改革という意味でも、将来を見通した取り組みに力を入れていくことが大事だと考え、このような形で資本を出させていただきました。出資以外のリソースもどんどん使っていただいて、一緒に頑張っていきたいですね。
 
CR・沢登:小林社長からの嬉しいお言葉をいただいて、我々もこの資本業務提携について、心から嬉しく、光栄に思っています。これまで「食器洗浄システム」の開発をご一緒したり、「たこ焼きロボット」を出す時にもお店のレイアウトから調達までホシザキさんにお世話になっていました。
 
ホシザキさんは川上から川下まで強固な組織を持っていらっしゃるので、そこに我々の技術を組み合わせることで、今まで難易度の高かった食産業の自動化・省人化ができるようになると考えています。こういった取り組みは技術だけあっても実現できません。お客様が欲しいのは単なる技術でもなければ、単なる製品でもないわけです。エコシステムのように機能し続けるサービスを構築するために、ホシザキさんは心強いパートナーだと、我々も手応えを感じています。

ホシザキ・CRがコラボレーションした展示会(2019年HCJ)


展示会で披露した、食洗機ロボット(2019年HCJ)

現場で働く人々に、もっと付加価値の高い業務を
 
――互いの強みを掛け合わせるからこそ、実現できることがあるということですね。ここからは未来のお話を伺っていきたいと思いますが、提携の先に、どのような目標を掲げていらっしゃいますか。
 
ホシザキ・小林氏:長期的には「食のバリューチェーンの中で、どれだけエコシステムを一緒に作り上げていけるか」ということが肝になりますが、短期的には、調理機器や食器洗浄機などにおいて、お客様に省人化・省力化という価値提供をしていきたいと考えています。既にお客様から様々なニーズが上がってきています。
 
そのためにも、CRさんからアドバイスを受けて、新しいハードを開発していきながら、食の業界でデファクト・スタンダードになるような仕組みを一緒に作れればいいなと考えています。やはり我々も“ホシザキ流”のやり方に慣れてしまっているので、CRさんの柔軟な発想力から刺激をいただきたいですし、実は人材育成というところにも期待しています。我々の若いエンジニアたちにも半年くらいCRさんで働かせてもらって、いい空気を持って帰ってきてもらえると嬉しいなと思いますね。

―まずは「食産業の自動化」が目下のお取り組みだということですが、人手が足りていない、という理由も大きいのでしょうか。
 
CR・沢登:そうですね。当然、日本だと少子高齢化によって人手が減っていくという問題もあるのですが、社会全体の動きとして、食の業界で働く人がだんだんと減ってきているというのが真実だと思います。つまり「現場で人が働かなくてもできるであろう」と思われているわけです。そこでロボットが注目されているのですが、ロボットである理由は「機械」ではなく、色々なことをやってくれる存在が必要だからです。知能化させるAIを搭載したロボットができることで、初めて、多岐に渡る飲食業の自動化ができるようになると考えています。ですので、仕事を効率化するだけでなく、質も上げて、人が現場で働かなくても生きていけるようなエコシステムを作ることを目指していけたらと思います。

――それが実現したら間違いなく食産業が変わりますね。
おふたりは、社会にどのようなインパクトを起こしたいと考えていらっしゃいますか。
 
ホシザキ・小林氏:沢登さんがお話しされたように、今後は機械から様々な情報が取れるようになっていくでしょう。スタンドアローンだった機械が遠隔からも繋がるようになっていく。そうすることで間違いなくお客様に新しい価値を提供できるでしょうし、これまで現場で働いてこられた方々が、もっと付加価値の高い業務を担えるようになると考えています。
 
CR・沢登:人がやるべき仕事は、創造性のある部分や、人と人とのタッチポイントになるところだと思います。飲食店でいうとレシピを作るとか、お客さんと意味のある会話・サービスをするというところ。それ以外はどんどん自動化できると思います。
 
それに、ロボットといっても現在提供しているロボットアームだけじゃなくて、AIやコントロール、コネクテッドな環境を作って、単品ではなく、全体に貢献していきたいですね。1次、2次、3次産業、あらゆる可能性を排除せず、ホシザキさんと一緒に自動化を推進していけたらと思います。
 
ホシザキ・小林氏:我々はCRさんについていきます(笑)。現状の踏襲を望む人たちもいますから、今回の提携が、その意識を変えるきっかけになると良いなと思います。CRさんにはどんどん突き進んでいただいて、我々もお手伝いできることを最大限、ご一緒していきたいですね。


食産業を元気づけていく役割を担いたい
 
――これまでのお話を伺っていると、ホシザキさんは、今回のお取り組みで、社会だけではなく、社内へのインパクトも期待されているということですね。CRさんはいかがでしょうか。
 
CR・沢登:そもそもホシザキさんのような大企業が、今回のような提携に本気で取り組まれるケースは、これまでなかなか無かったことだと思います。新しい時代に向けて動き出されている姿に、我々も刺激を受けています。それに、日本のフード機器メーカーさんで、ここまでグローバルに展開されている会社はありません。日本の食というのは、食材だけじゃなくて料理やコンテンツ、製造も含めて非常にユニークです。我々も、日本の食を通じて世界に貢献していきたいと考えていますが、それは、ホシザキさんとご一緒するからこそ、実現し得ることです。
 
――確かに、なぜ大企業であるホシザキさんがこのような革新的なことにチャレンジされようとしているのか、お伺いしたいです。
 
ホシザキ・小林氏:やはり新型コロナの影響が大きかったように思います。コロナによって我々の事業基盤が完全に揺らぎました。お客様の方がどんどん変わっていくのに対して、我々は後からついていくような状態。テイクアウトやデリバリーを始められたり、居酒屋が唐揚げ屋さんになるなど業態を変えたり、宅配だけのキッチンが出てきたりなど、お客様サイドがどんどん変わっていきました。我々はお客様が「買いたい」といった時に必要なハードはご用意できたのですが、お客様のために先読みをして価値提供していく力が弱いのではないかと、痛感しました。
今でもフードサービス関連の経営者に会うと、「いつになったら元に戻るのだろうか」などという話が出ます。食の世界はコロナの影響も残っていて、前途洋々な状況ではありません。しかし、環境が戻るのを待つのではなくて、自ら変化を起こしていく発想が必要です。
 
その中でもCRさんは「食産業をロボティクスで革新する」を掲げ、そこに向かっで皆さんが一致団結で取り組まれている。このエネルギーは、日本のフードサービス業界に必要だと確信しています。そこにリーディングカンパニーである我々が関わることで、業界を元気づけていく役割を担いたいなという思いがありますね。
 
CR・沢登:そう言っていただけて嬉しいです。ホシザキさんと一緒にイノベーティブなことをやって、日本と世界の食産業を盛り上げていきたいですね。

 ―ありがとうございました。これから食産業にどのような変化が起こるのが、とても楽しみです。
 
クレジット)
協力:ホシザキ株式会社:https://www.hoshizaki.co.jp/
提供:コネクテッドロボティクス株式会社:https://connected-robotics.com/
 
※    本記事は2022年10月5日の取材をもとにしています。