見出し画像

食産業の自動化を推進し、共に新しいマーケットを創造する

株式会社寺岡精工 代表取締役会長 寺岡和治氏 ×
コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也 

日本の食産業がいま、ロボットのチカラで大きく変わろうとしています。 
仕掛けるのは、株式会社寺岡精工とコネクテッドロボティクス株式会社。 
 
日本初の「寺岡式敏感自動バネばかり」や、世界初のセミセルフレジ※をはじめとする数々のソリューションを展開し、もうすぐ創業100年を迎える精密機械メーカー・寺岡精工と、最先端の食産業向けロボティクスを開発するコネクテッドロボティクスが「資本業務提携」し、食品加工品の生産工程の一貫した自動化を目指します。 
 
「自動化を促進して人の働き方を変えたい」と願う両社の取り組みによって、食産業はどのように変わるのでしょうか。食に関わる人々にどのようなインパクトがあるのでしょうか。株式会社寺岡精工 代表取締役会長 寺岡和治氏(以下 寺岡精工・寺岡氏)と、コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー・沢登哲也(以下CR・沢登)の対談を通じて、伺っていきます。 
⇨ プレスリリースはこちら 

食品加工の上流から変えていく 

―寺岡精工さんといえば、日本初・世界初のソリューションを数多く世に送り出されていますね。今後はどのような領域での展開を考えていらっしゃるのでしょうか。 
 
寺岡精工・寺岡氏:当社は「新しい常識を創造する」ことをモットーとしています。今までにも世の中にない新しい概念のプロダクトやソリューションを開発して、“マーケットの新しい常識”にしようと挑戦してきました。 
たとえば2010年に開発したセミセルフレジは、最初は「自分でレジの支払いなんてしないだろう」と言われ、なかなか受け入れてもらえませんでしたが、今では導入店舗が1万店を超えて、新しい常識になっています。結果的に、お客様の時間もレジの人件費も半減してWin Winのソリューションになりました。 これが我々のいう「新しい常識の創造」ですね。 
 
このようにスーパーマーケットをはじめとするリテイルソリューション分野ではマーケットを確立してきたのですが、その上流であるフードインダストリー(食品加工)の領域は、重要でありながらまだ未開拓なことも多く、ここをCRさんとガッチリ組んで新しいマーケットを創っていきたいと考えています。 

株式会社寺岡精工 代表取締役会長 兼 チーフテクノロジーアーキテクト 寺岡和治(てらおかかずはる)氏  日本大学理工学部精密機械科卒業。1971年株式会社寺岡精工に入社。取締役営業部長、常務取締役営業部長、専務取締役海外営業本部長等を経て、1985年代表取締役社長に就任。2015年から現職。

―CRさんのお取り組みも聞かせていただけますか。 
CR・沢登:これまで飲食・外食の領域で様々なロボットシステムをつくってきましたが、それを徐々に上流の方にシフトさせようと思っているところです。 というのも、飲食業のお客様にロボットによる自動化を提案している中で、上流からの影響が非常に大きいということがわかりました。上流の食料生産・食品加工のところで原価の関係などで扱える食品が決まってきたり、あるいは食品の加工の仕方によっての現場での調理が変わってくるということを目の当たりにしてきました。私自身も社会人1年目の時に飲食店で働くという経験をしています。 
 
その時の実感からも上流の生産性や環境を底上げしていくことで、食に関わるより広い方々に良い影響を与えたいなと思っています。だからこそまずは食品加工・食品工場のところに力を入れて自動化を推進していければ。。寺岡精工さんとご一緒することで、食に関わる第二次産業を革新していけるのではないかと考えています。 

コネクテッドロボティクス株式会社 代表取締役ファウンダー 沢登哲也(さわのぼりてつや)
  東京大学 工学部計数工学科卒業、京都大学大学院 情報学研究科修了。MIT発ベンチャー企業でロボットコントローラ開発責任者を経て、2011年に独立。 2014年にコネクテッドロボティクス株式会社を創業。 2017年4月より食産業をロボティクスで革新する研究開発事業をスタート。  

 一気通貫したシステムで“働くを変える” 

―両社の出会いは展示会だったと伺っておりますが、そこからどのように繋がったのでしょうか。 

寺岡精工・寺岡氏:ある展示会でブースが隣り同士でした。そこにソフトクリームロボットがあったんですよ。それを興味深く見させてもらっていました。ソフトクリーム目当てのお客さんもたくさん集まって、本当に魅力的だと思いましたね。一方で、これだけをビジネスにするのは難しいんじゃないかなと思ったんですね。そんな会話をしたことがありましたね。 
 
CR・沢登:我々もちょうどソフトクリームやそばロボットなどの調理ロボットと、寺岡さんがお持ちの券売機やレジを連携させたいと思っていて、ぜひ寺岡精工さんと連携できないかと思っていました。そこからご一緒させていただきました。

展示会にて展示されたソフトクリームロボット

―今回の提携は食品加工領域だと思いますが、外食の調理ロボットの連携からどのように発展したのでしょうか。 
 
CR・沢登:当時我々は外食メインで、主にレストラン向けに展開していたのですが、昨年から、食品工場の分野に製品を導入しようと機会を伺っていました。その中でいくつか自分たちの技術が活かせそうなことが見つかったんですね。たとえば、AIをつかった検品ですとか、惣菜の自動盛り付けといったところですね。 
実際、経済産業省の補助事業で、一般社団法人日本惣菜協会と惣菜盛付ロボットを作りました。日本には何百種類という惣菜がありますが、今までは多種類の惣菜をロボットが対応することが難しかった。それを解決するために生まれたのが今回の惣菜盛付ロボット「Delibot」で、惣菜業界初となる製造工場へのロボット導入を実現しました。導入効果も評価いただいて、おかげさまで多くの引き合いをいただいています。 
 
実は惣菜の盛り付けにおいて寺岡精工さんの技術が必要でしたし、事業を拡大するためには資金も導入後のフォロー体制も必要だと考えました。そこで寺岡精工さんにお話させていただいて、2022年の春から資本業務提携に向けて動き始めて、スタートを切ったところです。 

―寺岡精工さんが、CRさんとの資本業務提携に至った決め手は何だったのでしょうか。 
 
寺岡精工・寺岡氏:「食産業をロボティクスで革新する」というCRさんの考え方に、非常に共感しましたね。それに、食産業の現場は大変な人手不足もあって、過酷な労働なんです。CRさんは、そこを楽にしようという思いもお持ちで、素晴らしいと思いましたね。是非このような思いのある会社と一緒にやっていきたいと。それが最初のきっかけです。 
 
もう一つは、我々の立場からするとロボティクスとの連携はなくてはならないもの。お互いがドッキングすることによって、一気通貫したシステムを提供できるわけです。それによって現場が楽になって、過酷な労働も減らせる。お客様も喜んでくれる。そうしたことが実現できるのではないかという期待がありました。 

―寺岡会長も、現場の過酷な労働に対しては以前から課題に感じていらっしゃったと。 
 
寺岡精工・寺岡氏:我々もお客様の現場を見させていただく機会が多いですが、本当に涙が出るくらい大変な仕事をしていることがありました。これはなんとしても解決しなきゃいけないんじゃないかって意識が当然ありましたね。「つらい労働をなくそう」って沢登さんがよく話していますが、心から共感します。 

志を同じくする仲間と共に挑戦したい 

―両社のお取り組みが加速すると、食品産業に大きなインパクトがありそうですね。 
 
CR・沢登:「つらい仕事をなくす」でいうと、ロボットの導入によって、人がもっと楽しい仕事・生産性のある仕事をやれるようになるので、この部分をまずはしっかりやるというのが我々にとっての最重要事項です。 
そのためには、いろいろなことができるロボットが必要。いろいろなことというのは、今は「多様な食材を扱えること」だと考えていただければと思います。日本の食品産業は多品種少量生産で成り立っています。多様性があることは日本の強みでもあり豊かなことでもありますが、その分、地道で大変な仕事が多くなります。24時間ずっと稼働している工場もあって過酷ですよね。 そこで、いろいろな現場で動かせるロボットをしっかりつくることがまずは大事じゃないかと。更に、計量・包装・検品なども含めて一元化かつ、自動化することによって食品工場の大変な仕事をゼロにしていきたいと考えています。 
 
寺岡精工さんと一緒に、マシンツーマシン※でコネクテッドの世界を作っていきたいですね。自動運転の車のように進化して、もっと早くなる、もっと上手になる、いろいろなことができるという未来。そのために我々は開発研究に力を入れて、食品産業を革新していきたいと思っています。 

―あらゆるものが繋がる未来が想像できます。寺岡精工さんの思いも聞かせていただけますか。 
 
寺岡精工・寺岡氏:ロボットはこれまで専用マシン・単体の機械が常識だったんですね。それをCRさんは、RaaS(ラース・Robotics As a Serviceの略)という考え方を持って、クラウドサービスで提供したいと、素晴らしい発想ですよね。 
 
我々としてもコールセンターやダイレクトサイトデリバリーシステムなど、これまで構築してきた当社独自の仕組みを活かすことで現場に普及する速度を上げられるのではないかと考えています。互いの強みを活かすことで新しいマーケットの創造に挑戦する。ここを追求していきたいですね。 
 
それから、生産性向上もそうですが、定貫パックの商品を不定貫パック※へ切り替えるなど、フードロスの削減も実現して、業界だけでなく、社会全体に良い影響を与えていけたらと考えています。 

―最後に。
共に実現していく仲間の存在も大切だと思いますが、どんな仲間と挑戦していきたいのか、教えていただけますか。
 
 
寺岡精工・寺岡氏:新しいことに挑戦していくには、やはりダイバーシティが重要なキーワードになってきます。個人の特性を受容しながら、個性を発揮して新しいことにチャレンジしてもらえたらと。新しいことはやってみなければわかりません。私たちも「とっとと失敗しよう」ということを一つの行動の基準にしていますので、一緒に挑戦をしてもらえたら嬉しいです。 
我々の企業はもうすぐ創業100年になります。今回のような提携によって、社内に新しい風を吹き込むような効果も期待したいですね。 
 
CR・沢登:寺岡会長がおっしゃったように、我々もダイバーシティを非常に重視しています。そもそも食産業やロボティクスそのものが非常に多様性を内包していますので。 
常識にとらわれないで新しいことにどんどんチャレンジして、失敗から学べるような方に、ぜひ仲間になってほしいですね。寺岡さんとの連携の中で人的交流にも期待をしています。国籍も年齢も性別も関係なく、同じ思いを持った方々を巻き込んでいきたいと思っています。 

―仲間の力を得て、さらなる新しい風が吹きそうですね。ありがとうございました。 
 
 ※セミセルフレジ:店員が商品バーコードを読み取り、顧客が精算機で会計を行うレジ
※マシンツーマシン:人を介さない技術
※不定貫パック:重量が異なる商品
 
クレジット) 
協力:株式会社寺岡精工:https:// teraokaseiko.com/
提供:コネクテッドロボティクス株式会社:https://connected-robotics.com/ 
 
· 本記事は2022年12月の取材をもとにしています。