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小嶋直さん〜インタビュー

小嶋直(こじま なお)

一級建築士。建築事務所勤務後に独立し、2012年に建築事務所「コーデザインスタジオ」を設立。2018年に松村と共に「シェアアトリエつなぐば」、2022年に「さいかちどブンコ」をオープン。

ーーつなぐば設立までの道のりを教えてください。

僕はもともと、川口市で建築家として住宅の建築やリノベーションなどを行っていました。 2016年に、「草加リノベーションまちづくり事業」のイベント『リノベーションスクール』の第1回目に草加市からお声がけいただき、そこでみのりん(松村美乃里さん)と同じチームになりました。このイベントでは、8人程のチームで市内にある空き物件などを利用したリノベーション事業提案を行い、実際にその事業を実行に移していきます。
草加市はベッドタウンということもあってか、結婚や出産を機に仕事を離れてしまったものの、子育てや結婚生活がひと段落したタイミングでご自身で何かビジネスや活動を始めたいというお母さんや女性が多いようです。みのりんも含めてチームメンバーにも小さなお子さん連れのお母さんが結構いらっしゃったんですね。しかし、そういった活動を始めるにあたっては、事務所設立の金銭的な問題や、子供の面倒を見てもらえる場所がないといった課題が多く、一人で始めるにはハードルが高い。
また、同時期に草加市主催で『わたしたちの月3万円ビジネス』という、これからビジネスを始めたいと考えている女性向けの講座が開かれていました。それもあって、これらの課題を解決できるようなみんなで集まってビジネスや活動の場にでき、かつ子連れでも働くことができる場所を作りたい、というところから「シェアアトリエつなぐば」づくりが始まりました。

ーーつなぐばは、お母さんや女性のニーズに応えるために始まったのですね。小嶋さんはつなぐばのどういった点に魅力を感じて一緒に活動をされているんでしょうか?

僕は川口市に事務所を構えていたのですが、元は植木屋さんだった場所に残る倉庫の一つを借りています。そこは植木屋さんの息子でカフェを営む僕の友人が中心になり、僕と同じように倉庫や住宅を借りている人たちで自分たちが欲しいものを作ったり、したい暮らしができる小さな村のような形になっていました。結婚し子供たちが生まれると、その場所に子供連れで来るようになり、手が空いてる人で子供たちの面倒を見たりしていて。僕はその時まだ子供がいませんでしたが、無理がなく、みんなで見守って暮らしていく生活を心地よく感じていたんですよね。
その後 、『リノベーションスクール』でみなさんと話して、自分たちが持っている空間の良さに改めて気づき、みのりんのようなお母さんたちのためにもそういう場所を作れたらいいなと思うようになりました。川口市の方は利用者という立場でしたし、建築家としてもこういった場所を作ってみたいと思い、このような自分の経験が活かせるのではないかと感じたので、一緒にやってみることにしました。ちょうどその頃に僕にも子供ができたので、自分の子供を連れてこられる場所づくりをと思ったら、より面白い場所にしたいと思うようになりましたね。

ーーまるで「大人の秘密基地」に人が集まって、自分自身がいいなと思える空間になっていった体験が原点になっているんですね。

僕の感覚としては、大きなプラモデルというかおもちゃで遊んでいるような感じなんですよね。大人が何か作ったり、絵を描いていると子供たちが寄ってきて、じゃあ一緒にやってみようか!と。まず大人が常に楽しくやっていることで、子供たちもそれを見て自分のやりたいことを楽しくやれる。テーブルやベンチなどを作っていると、そういう自分たちが作ったものを地域の人や子供たちに喜んでもらえる、喜んでくれる姿を見れるのが自分も嬉しいです。なので、作って終わり、ではなくお互いの顔が見えるような関わりを持つことが大切だと考えています。

ーー利用者の方に関わってもらうために雰囲気づくりなど、心がけていることはありますか?

つなぐばの利用者の方はさまざまな目的を持っていますし、利用頻度もバラバラです。そのため、面と向かって会話をしてコミュニケーションをしっかりとることを意識し、メールやLINEなどのやり取りで終わらないように月一回ほどつなぐばに集まってミーティングを行っています。最近では、困ったことや問題解決の場としてだけではなく、日常の話で盛り上がったりもしますし、みんなで「シェアアトリエつなぐば」を作ろうという雰囲気になっていると思います。

ーー利用者の方と良い関係が築けているんですね。でも、かつては色々な人とつながる上で、いいことばかりではなかったのではないでしょうか?

つながることで、というだけではありませんが、日々たくさんの利用者の方がいらっしゃるので、うまくいかないことも多々あります。実はつなぐばにはマニュアルがほぼありません。複数のアトリエがありますし、僕は場所を作ることを仕事にしていますが、利用する人がその場所でどんなことをするのか細かいところまではわからず、やってみて色々なことが問題として出てきます。
ルールを決めた時に、「なんでこの金額なのか?」「なんでこういう使い方しかできないのか?」などの疑問がたくさん出てきて。元々ほかの施設を視察に行ったり参考にして決めたルールだったので、草加のお母さんたちが必要とするつなぐばとしてその細かい需要に応えられていなかったんです。
そのため、使いたい人が使いたいと思える使い方ができるよう利用者の方にも考えてもらい、それを元に現在の形へ変わっていきました。今でも今までにはなかった視点や考え方が出てくることもありますし、決めすぎてしまうとかなり限定的になってしまうので、3時間でいくら、終日でいくら、くらいしか決めていません。
また、それぞれのニーズに対応できないこともたくさんあります。実際に利用者さんの中にもさまざまな理由で離れていく方もいますし、人の合う合わないもあります。でも僕だけじゃなく色々な人がいるので、うまくコミュニケーションを取っていくことはできると思いますし、まずつなぐばを利用してもらうにあたって僕たちが掲げる考え方と合っているか、シェアアトリエとしてほかの人を不快にしないか、などを考えていただくように伝えています。それでも何か起きてしまうこともあると思うので、そういった時にはみんなで対応するようにしていますし、最近は特に大きいトラブルもないです。

ーー今後のつなぐばとしての展望はありますか?

今はつなぐばに加えて「さいかちどブンコ」とそれに並ぶ建物の管理で手一杯なので、 私たちだけじゃなく、自分で運営したいという仲間がもっと増えればいいな、と思っています。また5年続けていると、同じように自分で作りたいと思ってくれる人が出てきているので、その人たちが一歩踏み出すお手 伝いができればいいなと考えています。

ーー次に、建築について教えてください。建築で小嶋さんが大事にしているものはなんですか?

僕は住宅を作るのが好きで、この仕事を始めました。そこに住む人一人一人の暮らしがどういう暮らしをするのか、が住宅になると考えています。なので、住宅に限らずつなぐばのような空間も、このスペースはどんな人がどのように使うのかを考え、お話を伺って作り、その上で全体の統 一感、まとまりを失わないように意識しています。
ただ、つなぐばはDIY、そしてみんなで作っているので、図面を引いてもほとんど予定通りにはならないです(笑)また作り手のほとんどがお母さんや子供たち、という中でどのように進めると完成まで作っていけるかな、という考え方になります。作業を細かく分解することで、みんなで楽しく作業ができるようにして。慣れていくと工具も使えるようになったし、中にはそういった専門職に就いた人もいました(笑)普段から建築とは、自分一人で決めて自分一人で作るのでははなく、使う人、作る人、設計する人の三者が一体となって作っていくものだと考えているので、独りよがりのデザインにならないように心掛けています。

ーーつなぐばと同じような場を作りたいと考えている人へアドバイスをお願いします。

場所や人が変わると、全く同じものって作りたくても作れないんですよね。それに自分たちも前例がない状 態で始めましたが、ルールや決まり事を作るのがかなり大変。もし同じような場を作るのであれば、お互いに顔の見える関係性を作ること、覚悟を持って取り組む核となる人が必要になると思います。

ーー最後に、メッセージをお願いします。

僕は男性ですが、つなぐばに関わる人は女性の方が多いです。でも最近は利用者の旦那さん、男性が来てくれることも増えてきました。そこでお父さん同士のつながりを作ろうと「オヤジ の会」を作りました。一緒にお酒を飲んだり焚き火しながら話を聞くと、案外奥さんからちゃんと活動の内容とか考えを聞けていない方がいて、僕からお話しをしてみることで手伝いにきてもらえるようにもなったんですよね。僕たちは少し変わったことをやっているように見えるかもしれないですが、今の時代仕事も子育ても男性女性関係なくみんなで一緒にやるものに変わってきていると思うんです。だからこれからは、僕らがやっているようなことが特別なことではなく当たり前になっていったらいいなと思います。

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