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“正しい”で人は動かない。ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」の運営会社の代表が語る「人が集まる課題解決アイデア」の生み出し方

「社会課題解決の敷居を極限まで下げる。」をミッションに掲げ、ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」、Instagramメディア「エシカルな暮らし」を運営する株式会社Gab。

代表を務めるのは、シリコンバレーでの経験を経て、現在は国内で環境課題の解決に向けて躍進する若き起業家・山内萌斗さんです。

環境課題を解決できるような習慣を日常に取り入れてみたい気持ちはあっても、難しそうだし、お金もかかりそう…。

そんな消極的な姿勢に対して、山内さんが語ってくださったのは「楽しい」を起点にした課題解決のあり方でした。

日々の生活が豊かになり、環境にも貢献できる。そんな最高な選択肢って…?

山内 萌斗(やまうち・もえと)
静岡県浜松市出身。株式会社Gab代表取締役社長。「日本をエシカル消費先進国にする。」をビジョンに掲げ、Instagramメディア「エシカルな暮らし」とオンラインセレクトショップ「エシカルな暮らしオンラインストア」、有楽町マルイ6階の常設店舗「エシカルな暮らしLAB」などを運営。その他にも、ゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」などの運営を通して、「楽しさ」を起点に社会問題解決に取り組む人口を増やす取り組みを多数仕掛けている。

理想のゴールは「無意識の行動で社会課題解決に貢献できること」

ーー「環境課題を解決する」ってすごくスケールが大きいことですよね。山内さんにとって「環境課題が解決された」と言えるゴールとはどんな状態ですか?

「無意識の行動が課題解決に繋がるのが当たり前」の状態ですね。

意識的に環境について考えることも大切ですが、現状ではふつうに買い物をするだけでも、環境破壊に加担してしまう。

これは買う側の意識だけでは変えられない状況なので、社会の仕組みや販売される商品を変えていく必要があります。

「ただ買い物をするだけでも環境に貢献できる状態」が作れたら、地球にやさしいことができているというポジティブな気持ちによって、さらに行動が促進されていくと思うんです。

そのためには利益だけの競争ではなく、「社会をより良くできているか」で競争が行われていくことが必要だと思います。最近では、社会貢献度で企業の価値を決めるという評価の仕方も広まってきました。

それが当たり前になったら、消費することが課題解決に繋がる世界を実現できると考えています。

ーーとはいえ、今はまだ仕組みが整っていない状況ですよね。私たちが常に環境を意識して日常生活を送るのは、すごく難しそうな気が。

僕もできるだけ環境を意識して生活するようにしていますが、環境課題の解決を目指す会社を経営する僕ですら、毎日環境について考えていると疲れてしまいます。

マイバックを持つとか、ペットボトルを買わないとか、環境に優しい行動は明確にあるけれど、毎日完璧にはできませんよね。

たしかに…。

だからといって、行動しないと状況は変わっていかない。だからこそ、最初の行動を起こしてもらうために必要なのは、完璧を求めず、ハードルを下げていくことだと考えています

僕たちが運営するInstagramメディア「エシカルな暮らし」では、環境課題に興味のある方により幅広く学んでもらうために発信を続けてきました。

Instagramメディア「エシカルな暮らし」

でも、ただ学んでいただくだけでは、実際の行動に繋がるまでの道のりは長い。そこで、行動人口を増やすために、エシカル商品を販売する「エシカルな暮らしオンラインストア」を開設しました。

「環境にいいから使う」ではなく、「感動体験があるから使いたくなる」が理想

ーーまずは行動することが大切だと。でも、環境にいい商品って探すのも大変だし、値段が高いイメージがあります。

たしかに、そういうイメージを持っている人は多いです。だからこそ、「エシカルな暮らし」が取り扱う商品は、使うことで得られる「感動体験」を大事にしています。

たとえば、僕自身も愛用している米ぬか酵素を使用した洗顔料は洗い上がりが優しく、肌がきめ細かくなることが実感できるうえに、洗い流した排水は微生物が分解してくれるので地球に優しいんです。

洗ったあとの保湿には、ワイン用ぶどうの枝葉をアップサイクルして作られた美容乳液を使っていて、自然由来のポリフェノールによって肌を若々しく保ち、保湿力がありながらもべたつかず、すぐにスベスベになるんです。

ーーそれは、ちょっと使ってみたいかも…!

ただ環境にいいものだから使うのではなく、製品自体がおしゃれだったり、感動体験があるから使いたくなる。その結果、環境に貢献できるという消費行動のあり方を目指すほうが、ずっと楽しいと思いませんか?

商品の値段が高く感じても、ただ環境にいいから高いのではなく、感動体験があるから高いと感じることができれば、納得感のある買い物ができると思います。

ーーたしかに、それだったら行動に変えていけそうです。

ハードルを下げるためには、直感的に商品を選べることも大切だと思うんです。無理をしたり、深く考えないと商品を購入できない状態では続きません。

エシカルな暮らしオンラインストア

だからこそ、「エシカルな暮らし」のショップは「ここで買い物をしたら、環境に貢献できて、しかも良質なものが買える」と保証できる場を目指しています。

購入したものを生活に取り入れてもらうことで、改めて環境について考えるきっかけになったり、地球にやさしい買い物をする習慣に繋がる可能性もあります。

エシカルな商品をプレゼントとして誰かに贈ってもらえれば、環境課題についてコミュニケーションを取るきっかけになるかもしれません。一つひとつは小さな行動でも、着実にその輪は広がっていくと思います。

課題解決のアイデアこそ、“楽しい”を起点に生み出す

ーーゲーム感覚ゴミ拾いイベント「清走中」など、おもしろい事業を実現しつづける山内さんですが、どうすればそんなアイデアを生み出せるのでしょうか?

僕は「人は”正しさ”ではなく、”楽しさ”で動く」という言葉を大切にしているんです。環境課題と聞くと難しくて、つまらなそうなイメージがあるからこそ、そのイメージを打開できるような楽しさが必要なんですよ。

でも、実際に課題を解決するためのアイデアやイベントを生み出そうとすると、「1人あたりのCO2排出量の削減」や「ゴミ拾いボランティアの増加」など倫理的で真面目なゴールが現れて、最終的な企画内容も堅苦しいものになるケースを多いんです。

それもそのはずで、日常生活で身近だと感じられない環境課題に関するアイデアが、堅苦しいものになるのは仕方がないことなんですよね。

だから、アイデアが出たら「この企画は誰かが本当に参加したくなるものだろうか?」と一旦立ち返って考えてみる。

たとえば、街で歩いている大学生に「今週の土曜日、このイベントに来ませんか?」と誘って、来てもらえるような企画じゃないなら、まだハードルが高すぎる証拠です。

企画について少し話を聞いただけで参加したくなる内容で、参加者に楽しい時間を提供することができ、そして課題解決という最終目的もしっかり達成できる。この3つを実現できる企画になるまでアイデアを練るようにしています。

ーー日本が環境課題を解決できるおもしろいアイデアで溢れれば、環境について考える人ももっと増えそうですね!

世界的に見れば、日本はまだまだエシカル後進国です。

でも、「エシカルな暮らし」や「清走中」のように、アイデア次第では、自分ごと化しにくい社会課題を身近に感じてもらい、解決に向かって取り組む方法はあると思っています。

僕は日本でそんな成功事例を1つでも作り、この国をエシカル先進国のロールモデルとして世界に発信していくことで、日本と同じように環境課題に悩む国の力になることを目指しています。

(取材・執筆=目次ほたる(@kosyo0821)/編集=いしかわゆき(@milkprincess17)/(撮影=深谷亮介(@nrmshr))

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