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(生きているときは)ありがとう。

こんにちは。LINEのオープンチャット「コピーライティング戦略会議室」室長の夏目かをるです。
このたびオープンチャット参加者と一緒に、「今日一日元気になる言葉」という新しいコンテンツを作って、noteで共有することになりました。https://line.me/ti/g2/IwG29SxFcZmS6ucWGJAJNg

これまでの人生の中で、「あなたに影響を与えた元気になる言葉」と、その言葉にまつわるエピソードをnoteで紹介します。
オープンチャットの参加者から募った言葉とそのエピソードを、私が編集してnoteで紹介するこの企画は、賛同してくださったnoteの読者も参加できる仕組みも作りました。(今日一日元気になる言葉をオープンチャットから投稿のNさんのエッセイに続いてにインフォメーションしております)。この企画に応援したい方、ぜひ一緒に作っていきましょう。
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今日一日元気になる言葉 vol4 

「(生きているときは)ありがとう」

今回は、私の乳がんの友達、いわゆる“がん友”のみっちゃんさんです。

みっちゃんさんは、2012年9月のバースデーの日に、右乳房に乳がんの羅漢を医師から伝えられます。「最悪な誕生日だった」と悲しみにくれますが、4歳の息子さんのためにも、がんを克服する!と決めました。

私もそうですが、がんを患うと、どんな人でも必ず「死」について考えてしまいます。コロナ感染拡大によって、世界中の人に死が身近になり、そのため死生観が変わった人も多いでしょう。ですから、がんを患ったことのない方も、がん患者の「死がそこにある」という感覚を分かってくれるのではないかと思っています。

「(生きているときは)ありがとう」という言葉は、みっちゃんさんが乳がんを羅漢する9年前に、亡き祖母からもらった言葉でした。少しスピリチャル的なニュアンスがありますが、「死を意識するほどの病」になったあとで、この言葉がみっちゃんさんにとって、「今日一日を生きる言葉」となっていることに、深く頷いてくれる人が多いと信じています。(夏目かをる)

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祖母は早くに(50代)夫に先立たれ、「私は男になるから!」と一人で商売(自動車修理工場)を続けていました。ユーモアがあって肝っ玉母さん的存在だったため、「おばちゃんの顔を見にきたよ~」と言って来て下さるお客様も数多くいらっしゃいました。
姉と私、特に初孫の姉には甘く、休みの日に一緒に買い物に行っては何か買ってもらっていました。
心配性で、勤めに出ても私達の帰りが遅いと寝ずに待っていた事もしばしば。
和服に割烹着が似合う祖母でした。

私が結婚した年に、祖母が認知症と診断されました。周囲は祖母を施設に入所する事を勧めましたが、母は断り自宅でみていました。
実家近くに住んでいたため、私は毎日のように介護の手伝いに出かけることに。
実家は商売もしていたので、仕事と介護を両方手伝うことになったのです。それはとても重く果てしない6年もの日々でした。
あんなに仕事が大好きで我の強かった祖母でしたが、最後は赤ちゃんのようになって、小雪が舞う朝に90歳で旅立っていったのです。

永眠した祖母が、病院から実家に戻ってきました。私は祖母の横で、夜中お線香を絶やさないようにしていたのです。
どのくらいの時間が流れたのでしょう。いつのまにか眠っていた私は目が覚めると、ふっと周りが見た事もない風景になり、暖かい光に包まれるような感覚でした。すると祖母の声が耳元で聞こえたのです。

「ありがとう」

あの感覚は今でも忘れられません。
我に返った私は、永眠している祖母に「こちらこそありがとう」と伝えました。

認知症だったけれど、いつもみんなを守ろうとしてきた祖母に「ありがとう」という言葉で、祖母の魂に触れたような気がしました。深い感慨が体中に広がっていったのです。

「生きているときはありがとう」と言ってくれた祖母。きっとあちらから私たちを見守ってくれていると思っています。祖母からもらったたくさんの愛を思い出すたびに、涙が出てきます。

乳がん羅漢から8年が経ち、経過も順調です。「私は元気ですよ」と祖母に改めて感謝したいです。              (みっちゃんさん)

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みっちゃんさんとは、同じ病室の患者同士でした。彼女の乳がんのまつわる出来事は、今でも忘れらえません。

本当はステージⅡだったのに、手術前に主治医からでステージⅣだったといわれていたみっちゃんさん。同じ病室の患者(女医)さんからのちに教えられてショックでした。「明らかに主治医の診断ミス。本当は全摘しなくてもよかったかもしれないのに。部分摘出ですんでいたかもしれないのに」と悔しそうに語る患者(女医)の言葉は、教えてくれた患者が医療従事者であることも加えて、とても重いものでした。

さらに私を驚愕させたのは、みっちゃんさんの乳がんの原因が、「不妊治療によって、大量のホルモン(エストロゲン)が体内に入ったため、乳がんを羅漢した」というみっちゃんさんの主治医の見解。

私がもしみっちゃんさんだったら、「証明するデータを見せてください。論文を読ませてください」と医師に問います。でもみっちゃんさんは、医師の言葉を信じ、息子さんも「僕のせいだ」と思い込んでいるそうです。

私はみっちゃんさんに、「いつか息子さんに、『それはその医師の見解であって、不妊治療が原因だという証拠はないよ』と伝えてあげてね」と話しています。

永眠した祖母の魂に触れられるような優しさをみっちゃんさんは持っています。その医師との間には、他の人が知らない信頼関係があるのでしょう。

それにしても、なんと罪深い医師なのだろうと私は憤慨しました。不妊治療が原因かもしれないという見解は、間違いなく家族を傷つけます。そのため「ひょっとしたら」という言い方があるはず。

難病や乳がんを克服した私は、医者に期待過ぎないことが、大事だと思っています。ショックを受けるような言葉を医者の口から出るかもしれません。その時はいったんその言葉を受け取って、根拠となるものを医者から出すのです。こちらから働きかけなければ、何もしてくれない医者は、実はたくさんいるのです。

コロナ禍で世界中の人たちが医療従事者に感謝の気持ちを伝えています。もちろん、私も感謝しています。ただ患者を経験した私から見ると、コロナ禍での医療は、救急医療の現場そのものです。一刻を争う救急の患者に、全力を注いでいる姿は感動的ですが、ではコロナが収束していったのちの、一般の医療は果たして変わるのでしょうか。元患者として、様々な医療者を見てきた私は、素直に首を縦に振ることができません。

みっちゃんさんのような優しい患者に、傷ついてもらいたくない。そんな気持ちもあって、昨年「医者とのコミュニケーション本」を出版の予定でした。ところが残念ながら、版元の社長兼編集者が急死したため、版元探しが振り出しに戻りました。ポストコロナの時代も、医者とのコミュニケーションの方法はきっと役に立ちます。そう信じる私は今、行動することの大切さを思い出しています。                 (夏目かをる)

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夏目かをる プロフィール
コラムニスト、小説家、ライター。秋田県出身。立教大学文学部日本文学科卒。2万人以上のワーキングウーマンの仕事、恋愛、婚活、結婚を取材。女性目線のコラム「”賞味期限”が女を不機や嫌にする」(現代ビジネス)、「女が嫌いな女の現在地」(日刊ゲンダイ)などやWOWOW映画コラムも。ルポ「同窓会恋愛」(婦人公論)、「高学歴女性の貧困」(サンデー毎日)は毎日新聞日曜版の読書欄で紹介される。「戦略的に離婚しない女たち」(週刊朝日)などで夫婦問題にも言及。「33歳女の壁その後」(朝日新聞社telling)では40万以上のPVを獲得。2020年4月日刊SPAの記事でYahoo!ランキング総合第一位に。小説「ボディ・クラッシュ」(河出書房新書)、「季節はずれの恋」(講談社ムック本)、連載小説「眠れない夜」(WOMe)ランキング第一位。書籍「英語でリッチ!」(アーク出版)で第12回ライターズネットワーク大賞受賞。2007年10万人に一人の難病・ギランバレー症候群を後遺症なしに完治。
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