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Die, No Ties, Fly「THE FLY」関連作品

日本の三人組ヒップホップグループ、Die, No Ties, FlyがリリースしたEP「THE FLY」のプレスリリース文章を担当しました。各種配信サイトで聴ける・ダウンロードできます。

三人組ヒップホップユニットのDie, No Ties, Flyは9月18日(土)、4曲入りEP「THE FLY」をリリースする。
Die, No Ties, Flyは、VOLOJZAと88Lexuzの二人のラッパー、ビートメイカーのPoivreからなるユニット。VOLOJZAは千葉、88Lexuzは東京、Poivreは長崎と異なる拠点で活動している。それぞれソロ作やグループなどでの活動を経て2020年に結成し、同年には初のEP「Die, No Ties, Fly」をリリース。その後も88Lexuzによる別ユニットのOGGYWESTのアルバム「sulfur」やVOLOJZAのシングル「AAAA-4」のリミックスなどでメンバー同士の共作を重ねてきた。
全4曲入りの今回のEPは、「コロナ禍での内省と外省」、「現実と理想」、「フィクションとノンフィクション」、「オンラインとオフライン」、「現場とネット」などの様々な要素が行き来し、対となりながら共存していることをテーマに据えた作品。収録曲「moon」と「pluto」のビートの仮タイトルが「インナースペース」、「アウタースペース」というタイトルだったことからテーマが設定された。
前作に引き続きビートはPoivreが全曲のビートを制作し、ミックス・マスタリングは88Lexuz、アートワークはVOLOJZAが担当。エレクトロニカやレゲエ、ジャズなどの多彩な音楽を吸収したエッジーかつポップなビートに、メロディアスなフロウも巧みに用いる二人のラップが絡むカラフルな楽曲が楽しめる。客演には愛知を拠点に活動するラッパーのYNG JOE$、Dos Monosの没 aka NGSが参加している。


1. Moon Feat. YNG JOE$
2. 透明
3. 建前
4. Pluto Feat. 没 a.k.a NGS


Die, No Ties Flyの三人はそれぞれソロや別ユニットでも活動しており、全員が今年作品をリリースしています。どれも良作です。


poivre「Diversity」

「THE FLY」で全曲のビートを担当したpoirvreのインスト集。「THE FLY」でも多彩なジャンルを結合させたハイブリッドなビートを作っていましたが、この「Diversity」でもその越境的なセンスがたっぷりと味わえます。冒頭を飾る「Kanon」から、ジュークを取り入れたドラムと千切りにされた声ネタが印象的なユニークなビートが登場。その後もアジアの匂いがする弦楽器のループにヘヴィなキックを合わせた「Unknown Beats」、不穏なシンセとストリングスの陰でベースがジャジーに動く「Pay」など一筋縄では行かないビートが次々と飛び出します。一方、落ち着いたサックスを巧みに用いた「2222」のようなビートもあり、タイトル通りの「Diversity」が感じられる作品です。


VOLOJZA「BLACKSUMMER」

「THE FLY」ではpoivreが全曲のビートを制作していましたが、実はメンバー全員ビートメイクも行います。「BLACKSUMMER」はVOLOJZAがビートメイカーとしての側面を見せた、自身のラップも客演も入れないインストヒップホップ作品です。この作品はブーンバップ系譜のチルめなサウンドが中心で、一聴するとDie, No Ties, Flyとは全く別物のように思えます。しかし、脱力感という点でそのラップと同じ魅力がビートにも流れています。また、時折入る奇妙なシンセやファンキーな声ネタなどが良いアクセントになっており、ただのチルいインストには留まらない作品になっています。トラック分けされておらず、一曲に繋がっているのも特徴。曲間に入るVOLOJZAのタイトルコールも印象に残ります。


OGGYWEST「sulfur」

ラッパーのヤング・キュンと88Lexuzによるデュオの2ndアルバム。1stアルバムについては以前レビューも書いています。2曲を除いて88Lexuzがビートを制作。「1997」はpoivre、「Melty Kiss」はYanceyのビートです。トラップやインディロック、トリップホップなど多彩な要素を含む88Lexuzのビートはpoivreにも通じるハイブリッドな魅力を放っています。しかし、そこに乗るラップの表情はDie, No Ties, Flyとはまた違った性質があります。のらりくらりとパンチラインを繰り出すヤング・キュンと、メロディアスなフロウとそうでないフロウを巧みに織り交ぜる88Lexuzのコンビネーションはほかでは聴けない良さ。客演には「THE FLY」にも参加していた没 a.k.a NGS、shipbuilders、田島ハルコが参加。

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