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2023年おすすめ新譜アルバムVol. 69: Dinner Party「Enigmatic Society」

新譜アルバム紹介Vol. 69です。

今回紹介するのは、Terrace MartinとRobert Glasperを中心としたグループのDinner Partyがリリースした「Enigmatic Society」です。

Dinner Partyは西海岸のサックス・キーボード奏者兼プロデューサーのTerrace Martin、テキサスのピアニストのRobert Glasper、西海岸のサックス奏者のKamasi Washington、ノースカロライナのプロデューサーの9th Wonderの4人によるグループです。

それぞれ1990年代後半から2000年代前半頃に登場。Terrace Martinの2013年作「3ChordFold」へのRobert Glasperと9th Wonderの参加、別グループのR+R=Nowでの活動などでメンバー同士の共演を重ねてきました。Dinner Partyとしての活動は2019年頃からスタートし、2020年にはEP「Dinner Party」をリリース。同年にはそのリミックス集的な「Dinner Party: Dessert」をリリースしています。

Terrace Martinについては以前書いたこちら、Kamasi Washingtonについてはこちらを。Robert Glasperはヒップホップ以降の感覚を持ったピアニストで、9th Wonderはソウルの丁寧なサンプリングや生演奏の導入によってブーンバップを作るプロデューサーです。Dinner Partyとしてはジャズやファンクの要素をベースとしつつも、9th Wonderがメンバーにいることもありヒップホップ色の強いサウンドを聴かせます。

今作は9th Wonderの関わり方が少し変わり、外部プロデューサーも多く迎えた作品です。メンバーの中ではTerrace Martinのカラーが最も強い、メロウなサウンドが堪能できる好作に仕上がっています。


2. Breathe (feat. Arin Ray)

Gファンクを思わせるブリブリのベースを用いた曲。

9th Wonder印の軽めながらタイトなドラム、柔らかな鍵盤やサックスが心地良い佳曲です。Arin Rayのスウィートな歌声にも悶絶必至。


3. Insane (feat. Ant Clemons)

SounwaveとTerrace Martinの共作。

大ネタ使いの軽快なドラムに、どことなく不穏なベースやシンセを絡めた曲です。美しいピアノや寂しげなサックス、Ant Clemonsのナヨ声の歌もばっちり。


5. For Granted (feat. Arin Ray)

9th Wonder参加曲。

タイトなドラムにサンプリングっぽいフレーズを差し込んだ、ヒップホップ色の強い曲です。そんな中でミュージシャンの演奏もはっきりとした存在感を示しています。


6. Secure (feat. Phoelix & Tank)

Terrace Martin単独プロデュース。

歌声をノスタルジックな質感でループした、ドラムレスながらヒップホップ的な要素が目立つ曲です。ヴォコーダーも聴けます。


7. Can't Go (feat. Phoelix)

9th Wonderのカラーが出た曲。

Hall & Oates「I Can't Go for That (No Can Do)」から歌声ごとサンプリングしたビートで、Phoelixが柔らかな歌を添えた好曲です。ヒップホップ好きの方も是非。


8. The Lower East Side

Dr. Dre関連作で知られるTrevor Lawrence Jr.とTerrace Martinの共作。

弾力のあるベースが効いたファンキーなインストです。緊張感のあるスペイシーなものへのビートスイッチもあり。どことなくAftermath作品っぽいムードがあります。


9. Love Love (feat. Arin Ray)

Kamasi Washington以外の3人によるプロデュース。

穏やかなウワモノに少し違う場所で鳴っているようなドラムを合わせたビートで、Arin Rayが優しい歌声を聴かせる良曲です。音数少なめの締め方が見事。

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